有名アニメなどのキャラクターとコラボしたスマートフォンはこれまで日本でもいくつか登場しています。ちょっと古いですがジョジョスマホ「JOJO L-02K」や、さらに古くなるとドラクエスマホ「SH-01F DRAGON QUEST」などが販売されました。しかし最近はあまりこの手のコラボ製品は出てきていません。日本のスマートフォンの売り方はまだまだキャリア売りが主流のため、「キャラクタースマホ」をメーカーが自由に販売しにくいのもその一因でしょう。
ところが海外では日本のアニメとコラボしたスマートフォンが今も続々と登場しています。特に中国では年に数機種が発売されています。中国と聞くと著作権を無視した違法なものと思われるかもしれませんが、大手メーカーがしっかりと版権を取って大々的に販売しているのです。日本のアニメは中国でもMZ世代を中心に人気であり、キャラクタースマートフォンは発売されるやすぐに完売するほどです。
こんなスマホのパッケージは見たことがない!
しかもその出来栄えは「キャラクターをスマホの背面に印刷した」なんてレベルではありません。たとえばこのスマートフォンの「箱」を見てください。普通はスマートフォンを買うと小さな箱に入っていますよね。ところがこちらは大きな段ボール箱がお店から出てきて、その中からこんなものが現われるのです。
これはOPPOが2021年7月に発売した名探偵コナンのコラボモデル「OPPO Reno6 Pro+ 5G 名探偵コナン限定版」。名探偵コナンに出てくる毛利小五郎探偵事務所そのものがスマートフォンのパッケージになっているのです。屋根を開けると中にはおせち料理のお重箱が重なっているような構造になっており、スマートフォン本体の箱とアクセサリが入った箱、続いてアクセサリの箱も出てきます。アクセサリはコナンを知っている人なら「なるほどな」と思えるデザインのものばかり。
そしてスマートフォン本体には背面に江戸川コナンと毛利蘭のイラストが入っているのですが、このスマートフォンに中国語で「真実はいつもひとつ」と語りかけると背面の色が変わるという機能まで搭載。マニアが喜びそうな作り込みがされています。
ここまで凝った製品を出すとは中国メーカーもなかなかのものですよね。しかしメーカーに力があるだけではなく、中国はメーカーが自由にスマートフォンを開発し販売できる環境にあります。つまり通信キャリアの都合に合わせて新製品を投入する必要がありません。もちろん開発した製品が売れ残ればメーカーだけの責任になります。しかし各メーカーの「中の人」には確実にマニアがおり、確実に売れるモデルを出すために人気の日本のキャラクターモデルを出しているわけです。中国メーカーのスマートフォン新製品発表会を取材しても、メーカー側で対応してくれるスタッフはほぼ20代の若い人たち。日本のアニメを見て育った社員が多くいます。
Z世代の「中の人」が開発する日本のアニメキャラのスマホ
名探偵コナンスマートフォンはOPPOのキャラクターモデルの中でも行くところまで行ってしまったと思えるほどの製品でした。ここまで箱が大きいと輸送も大変ですよね。こんな製品を出せたのは、その前にも凝ったマニアックなコラボモデルを出したからできたのでした。OPPOの目立ったコラボスマートフォンとして有名なのは2019年の「OPPO Reno Ace GUNDAM Limited Edition」。そう、ガンダムとのコラボモデルです。このモデルは2019年がガンダム放送開始40周年ということを記念して発売されました。日本ではなく中国のガンダムファン向けというのが面白いところですね。白、赤、青のトリコロールカラーを纏い、モビルスーツのデザインはRX-78-2を忠実に再現しています。
この「ガンダムスマホ」は好評版でそれに気をよくしたOPPOは2020年に今度はエヴァンゲリオンとコラボした「OPPO Ace2 EVA Limited Edition」を発売。そのパッケージは誰もが「まさか?」と思わせるもの。エヴァンゲリオンに出てくる円筒状のエントリープラグをそのままスマートフォンのパッケージにしてしまいました。
もはやスマートフォン本体だけではなくパッケージも含めたすべてが製品の世界観を表しており、マニア心を大きくくすぐる製品になっていると言えます。版権を取るだけでもかなり大変だと思いますが、メーカー側の熱心な働きかけが日本側を動かしたのでしょう。また中国メーカーの社内も意思疎通が早く、このような製品を迅速に出せるのかもしれません。しかしここまで完成度が高ければ日本で出しても売れそうな気がしますね。
セーラームーンも中国では大人気
OPPOほどパッケージにこだわらなくとも、付属のアクセサリでキャラクターの世界観を明確にアピールしたスマートフォンも過去には出ていました。「自撮りスマホ」としてアジアで人気だったMeituが2017年に発売した「M8 セーラームーン限定版」です。パッケージはピンク色でセーラームーンのシルエットがゴールドで入っています。これを見るだけでもわくわくできる仕上げです。
パッケージを開けて出てくるのはピンク色のM8。背面は同様にシルエット入りです。付属の透明カバーをつけてもハートのエンブレム状の飾りはそのシルエットを隠しません。カバーも含めてしっかりとデザインを設計しているというわけです。
さらに自撮りスマホらしく自撮り棒が付属するのですが、これが「スパイラルハートムーンロッド」そのものなのです。セーラームーンがいざという時に取り出すこのスティックを握りながら自撮りができる、これはもうセーラームーンファンにとって至福のひとときでしょう。ここまで凝ったアクセサリが出てきたのは、おそらくこのM8 セーラームーン限定版が最初だと思います。
実はMeituは以前からハローキティやドラえもんとコラボしたスマートフォンを出していましたが、パッケージや本体や壁紙にキャラクターを配置する程度のものでした。自撮りスマートフォンメーカーであったMeituは「次は自撮り棒を付属させたモデルを出したい」と考え、最適な自撮り棒とキャラクターの組み合わせとしてセーラームーンとのコラボを実現させたのでしょう。もちろん社内にセーラームーンファンがいたことは想像に難くありません。
Meituはその後も「セーラームーンスマホ第二弾」や「ドラゴンボールZ」「カードキャプターさくら」「ちびまる子ちゃん」など次々と日本のコラボモデルを投入。しかしスマートフォンメーカーとしての体力が続かずシャオミに買収されてしまい、歴史に終止符を打ちます。ただしMeituは元々美顔アプリ「BeautyPlus」を開発していた企業であり、今でもアプリメーカーとして残っています。
こんなアニメキャラもスマホになった
キャラクタースマートフォンに熱心だったのはこの2社だけではありません。たとえばシャオミは2018年に「Mi 6X 初音ミクモデル」を投入。初音ミクと言えば2013年にドコモから「Xperia feat.HATSUNE MIKU SO-04E」が発売になりましたが、それから5年後にシャオミからも同じキャラクターのモデルが出てきたわけです。シャオミは2021年にブルース・リーのコラボモデルなども出しており、2022年5月には鉄腕アトムをモチーフにした「Redmi Note 11T Astro Boy Edition」を発売。まさか鉄腕アトムまでも中国でスマートフォンになるだなんて、日本のアニメは古い作品も人気なのです。
日本のキャラクター以外でも各メーカーは様々なコラボを行っています。ZTE傘下のNubiaはゲーミングスマートフォンでトランスフォーマーとコラボ。一方OPPOから分離したRealmeは無印良品などのデザイナー、深澤直人氏コラボ製品を出して「おしゃれなスマホメーカー」を演出しています。しかし2022年5月にナルトとコラボした「Realme GT Neo 3 Naruto Edition」を発売するなど、やはり日本のキャラクターにも注目しているようです。Realmeは日本でスマートウォッチやモバイルバッテリーなどIoT製品を出していますが、まだあまり知られた存在になっていません。「ナルトスマホ」などを出せば一気に知名度が上がると思いますがどうでしょうか。
日本に参入する中国メーカーの数もここ数年でかなり増えました。コスパに優れた製品が目立ちますが、実は日本人の知らない間に海外でキャラクタースマートフォンを次々と出しているのです。もしかすると海外から逆輸入の形で日本人のよく知っているキャラクターのスマートフォンがそのうち出てくるかもしれません。日本での販売に期待したいものですね。
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