「週刊GetNavi」Vol.35-3
店頭で販売する商品の欠点は、「必然的に量産しなければならない」ことにある。例えば、日本に3000の店があり、その半分に在庫してもらうとすれば、最低で1500個が必要になる。実際には、店舗に複数個ずつ在庫してもらう必要があるし、流通にも在庫が必要だ。潤沢に市場に供給し、確実に購入してもらえる状況にするには、数千・数万の単位で作る必要が出てくる。
そうやって店舗へと流通させることで、人々は気軽に商品を買える。一方で、そういう体制がうまく回るには、商品に確実な需要があり、売れなければならない。不人気な商品を量産して在庫を作ると、そこからは損失が生まれる。流通がコンパクト化し、過去に比べれば在庫リスクは減ってきているものの、「商品化したものにニーズがあるのか」という観点は、重要な課題である。
ソニーが自社でクラウドファンディングサイトを作り、社内のスタートアッププロジェクトがその仕組みを使うのは、「ニーズがあるかないか」を検証する、という目的が大きい。
クラウドファンディングが行われるような製品は、製品ジャンルとしてまだ新しく、評価が定まっていないものがほとんどだ。ヒットしやすいものを考えるのは当然だが、考えることが常に正しいとは限らない。クラウドファンディングにかけ、出資者が集まるということは、少なくとも、出資者の分はニーズがあることを示している。そのあと、さらに量産して市販するのか、クラウドファンディング分で終えるのかはともかく、「ニーズのないものを作ってしまう」ことは避けられる。
だが、一般的には最近はそれも「二番目の理由」になりつつある。クラウドファンディングに成功する=その分の数は売れるのは当然のこととして、クラウドファンディングをすることをプロモーションとして活用するようになっているのである。クラウドファンディングを行う場合、単に製品を発売するよりもネットでは話題になりやすい。クラウドファンディングに成功するかどうか、成功した場合どれだけ上積みできるか、ということに、ある種のゲーム性が生まれるからだ。ソーシャルメディアで「バズを作る」にはもっとも向いた方法の一つと言える。
クラウドファンディングによる製品生産は、規模として大きなものではないし、メーカーもマスメディアを使った告知をする予算はないので、バズがプロモーションになればスタートアップにはありがたい話だ。
そしてもう一つ、ソニーのクラウドファンディングには特徴がある。それがなにかは、次回VOl.35-4にて。
●「Vol.35-4」は10/15(木)ごろ更新予定です。
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