Vol.125-4
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマはマイクロソフトが発表した検索エンジン「Bing」の進化。ライバルとなるGoogle Bardの性質や、今後マイクロソフトとGoogleはどこで戦うかを解説する。
Googleの開発した「Bard」は、同社の大規模言語モデル「LaMDA」をベースにしている。ただし、マイクロソフトがOpenAIの「GPT-4」を大胆に検索技術へと導入したのに対し、Googleのアプローチは違う。それは、本連載で解説したように、“検索に対しての責任”を重く鑑みてのものだ。
だからBardは、あくまで検索サービスではなく、「ジェネレーティブAIを生活の助けとするためのサポート」、それも、試験的な存在と位置付けられている。
機能としては、ChatGPTを少し検索寄りにしたような印象だ。聞いてみた内容の回答には複数の「ドラフト」が用意され、利用者が適切と思う答えを選びやすくなっている。またドラフトによっては、答えの根拠となったWebサイトのリンクも表示される。
さらに「Google it」というボタンがあるのもユニークだ。要は、あくまでAIの回答は「検索結果」ではないので、関連する情報をネット検索したければこのボタンを押してくださいね……ということなのだ。
回答の質や内容が、ChatGPTやBingのネット検索とどう違うのか、どちらが上なのかを評価するのは難しい。回答にキャラクター性が薄いような気もするが、それは筆者の英語読解力によるものかもしれず、なんとも言えない。
ただひとつだけ言えるのは、Webサービスとして見たときのデザインや作りが、Bardの方が簡素である、ということだ。言葉を選ばずに言えば“試作品”っぽい。マイクロソフトはBingやその他、OpenAIの技術を使ったサービスについて、デザイン面でもかなり凝った、いかにも「いまどきのサービスっぽい」体裁を整えている。それに比べると、Googleのものはいかにも簡素だ。
これは突貫工事による影響なのか、それとも、“まだ試験中である”ことを示すためにわざと選ばれたデザインなのか。そこはなんとも断言できないが、“マイクロソフトと違う”ことだけは間違いない。
この記事が掲載される頃には、Bardも日本語対応し、機能追加やデザイン変更も進んでいるかもしれない。だが、Googleはまだ「検索への導入」に慎重な部分があり、ジェネレーティブAIは別のところから全面展開を考えているのだろう、と筆者は認識している。
その領域とは「ツール」だ。GmailやGoogle ドキュメントが含まれる「Google Workspace」に、同社はジェネレーティブAIを組み込む。そうやって、面倒な作業をチャットでAIに指示するやり方から、AIの価値を一般に広げていく作戦なのだ。
とはいえ、マイクロソフトもまったく同じ戦略を持っており、こちらも「Microsoft 365 Copilot」として展開する。実装時期・サービス開始時期はどちらも未公表だが、近いうちに、両社が直接対決することは避けられない。そのときが“第二ラウンド”になりそうだ。
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