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2023/6/10 18:30

PC選びの根本が変わりそう……ASUS「新モバイルノート」で起こっていること

モバイルノートPCを選ぶうえでチェックするポイントは、軽さやディスプレイサイズ、バッテリーなどに加えて、やはりスペックが一般的でしょう。ですが、いま挙げたところ以外で、気にすべき点が出てきています。

 

ASUSの13.3型「Zenbook S 13 OLED」は、モバイルノートPCを見たときに目が行きがちなスペックはもちろん、ほかにも見どころを備えた製品です。今回は、発売からしばらく経った本モデルの魅力を、改めて探っていきます。

↑Zenbook S 13 OLED

 

スペックと同じくらいサステナブルを重要視

Zenbook S 13 OLEDの見どころは、“サステナブル”であるところです。いまや企業にとって環境に配慮して事業を展開するのは当たり前。PCも例外ではありません。ほかのメーカーを見ても、環境に優しい取り組みをしながら製品を作っています。

 

ただ、PCはやはりスペックや機能、デザインなどがまずありきで、それらと同列でサステナブルであることが強調されることは多くありません。ですが、Zenbook S 13 OLEDは、同シリーズ史上初のサステナブルモデルをうたっており、スペックと同列に強調されているところに目新しさがあります。

 

本体キーボードのキーキャップには「PCR」プラスチックを50%採用。スピーカー部分には海洋プラスチックを5%と、PCRプラスチックを45%使用しています。また、ディスプレイのカバーには製造工程で発生した廃棄物を再利用した「PIR」アルミニウムを50%、キーボード周囲のトップカバーにはPIRマグネシウムおよびPIRアルミニウムを90%使用。こうした具体的な数字をともなって、製品にリサイクル素材が使われているのをうたうのは珍しいことです。

↑製品のあらゆる部分に、リサイクル材が使われています

 

↑梱包材も100%リサイクル可能なパッケージ

 

さらに、天板には独自の「プラズマ電解酸化処理」によるコーティングを施しています。この処理では、有機物や強酸、あるいは重金属などの有害性のある物質ではなく、純粋な水を使用したうえに、環境負荷の少ない方法を採用して、アルミニウムをコーティングしているそうです。

↑コーティングによって、キズや温度変化に強い耐久性も備えたといいます。なお、触り心地は滑らかな石に近く、触り続けても飽きのこない質感。環境に配慮して質感に手を抜くようなことはしていないとすぐにわかります

 

細部まで行き届いた配慮によって製造されていることがよくわかり、サステナブルモデルを冠する理由も納得できます。しかし、こうした環境配慮を全面に押し出した製品がまったくないわけではありません。たとえば日本エイサーは、2022年にサステナブルな製品シリーズとして「Aspire Vero」を出しています。

 

また、製品を選ぶ側にとって、サステナブルを全面に押し出すのは、ノートPCの本分であるスペックが控えめなのではないかと、うがって見てしまうところでもあります。

 

ですが、Zenbook S 13 OLEDはハイエンドに位置付けられるモデル。当然、スペックにも抜かりがなく、そこが本モデルの独自性にあたるのです。

 

ビジネス利用でまったく不満のない性能

今回試用したZenbook S 13 OLEDのスペックを見ていきましょう。

 

CPU:インテル Core i7-1355U

メモリー:16GB

ストレージ:512GB SSD

ディスプレイ:13.3型(2880×1800ドット)、有機ELパネル

OS:Windows 11 Home

ネットワーク:Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.1

バッテリー駆動時間:約14.1時間

本体サイズ:幅296.2×奥行き216.3×高さ10.9~12.3mm

重さ:約1.0kg

 

価格はMicrosoft Office Home and Business 2021搭載モデルが25万9800円(税込)、WPS Office 2搭載モデルが22万9800円(税込)です。また、下位モデルとして、CPUにインテル Core i5-1335Uを搭載したモデルもラインナップしており、直販サイトで13万9800円(税込)から販売されています。

↑左側面にはHDMI出力、Thunderbolt 4×2

 

↑右側面はUSB 3.2、ヘッドホン/マイクジャックをそろえています

 

スペックを見たときに、モバイルノートPCのユースケースとして多い、文書や資料作成などのビジネス利用で不満を感じることはなさそうです。すでに多くのレビューも掲載されているので、詳細は省きますが、実際にPhotoshopで簡単な写真編集はもちろんスムーズに処理できたほか、Webブラウザーを立ち上げながらWordでテキスト作成などしても、動作は快適でした。

↑重さは約1.0kgなので、片手で持ってもまったく難はありません。また薄さは約1cm。ビジネスバッグに荷物を多く詰め込んでも、すき間に入れられそうです

 

有機ELパネルを採用したディスプレイはさすがの映像表現

また、ハードウェアで最も見どころなのは有機ELパネルの採用。モバイルノートPCとしてはなかなか見かけることはありませんが、Zenbook Sシリーズとしては2022年から有機ELパネルのモデルを出しており、特徴的な部分です。

↑有機EL採用のディスプレイは、最大輝度550nitと明るさも十分。またDCI-P3規格の色域を100%カバーしています。アスペクト比はモバイルノートPCらしく縦に長い16:10を採用

 

↑ベゼルもいまのモバイルノートPCらしく細くなっています。これにより、画面占有率は85%を実現しています

 

映像の表示はさすがの一言。夜の市街地を映したシーンでは、暗い部分はしっかり暗く、反対に煌々としたネオンは明るく表現されます。高輝度なディスプレイを搭載したノートPCだと全体的に明るく表示されがちですが、明暗がちゃんと分かれているため、その違いを楽しめます。

 

Zenbook S 13 OLEDの登場で、ノートPCの見る目が変わる

これまで、サステナブルを訴求した製品を見ると、「企業として当然だから言わないといけないよね」「あんまりサステナブルを推しているところを見ると、製品としては微妙なのでは?」などと思ってしまいがちでした。

 

ですが、Zenbook S 13 OLEDはサステナブルとスペックを高いレベルで両立させています。見た目からしても、リサイクル材を使用しているとは思えない、ハイエンドにふさわしい質感です。また、たとえばキーボードの打ち心地は快適だったり、ディスプレイを開くとキーボードに傾斜がついて操作しやすくなっていたりと、細部の作り込みも隙がありません。

↑キーボードの打鍵感は適度な反発があって心地がよいほか、タイピング音はあまりうるさくありません。ただ、Enterキーがやや小さいため打ちにくく、今回試用した中では気になるところでした

 

↑タッチパッドは大きめに取られているため、作業しやすいです

 

↑ディスプレイを開くとキーボードに傾斜がつく仕組み。モバイルノートPCとしてはよくありますが、細部もしっかり作りこんでいる証左です

 

こうした製品が出てくるのであれば選ぶ方も、製品を見る目をアップデートする必要があるでしょう。以前から言われていることではありますが、スペックだけで見るべきではない時代が来ているのかもしれません。そのなかで、どれだけ環境に配慮されているかは今後、より注目が集まる点です。

 

その視点で見たときに、Zenbook S 13 OLEDはいまのところ最も有力な候補といえるでしょう。

↑梱包材はノートPCスタンドにもなります。ただし、傾斜がつきすぎて個人的には使いづらいと感じました。とはいえ、もとは梱包材なので、そこまでうるさく言う必要はないかもしれません

 

↑ACアダプターは小型サイズ。本体と一緒に持ち歩いてもスペースは取らないでしょう

 

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撮影:中田 悟