「週刊GetNavi」Vol.36-2
ビデオカメラといえば、一時は日本の家電の代表選手だった。1980年代に登場すると一気に「一家に一台」になり、子供が生まれると絶対に買う家電のひとつになった。コンパクトであること、画質が向上したことなどから、業務用に使われることも増え、結果、映像表現は格段に幅を広げた。
だが現在、ビデオカメラの市場は急速にしぼんでいる。市場調査会社BCNの調べによれば、2015年の国内デジタルビデオカメラ市場は、3年前の半分にまで落ち込んだという。2000年頃までは様々な企業が参入していたが、いまや市場で存在感を出せているのは、ソニー・キヤノン・パナソニックの3社のみ。特に今年に入ってからは、ほぼ2社のみで市場が構成されている。
こうなった理由を、多くの人は「スマートフォンの普及」と考えるはずだ。確かにそれは間違いない。デジタルカメラがスマートフォンに食われて売れなくなったことと同じ、と考えていい。
だが、ビデオカメラの場合には、より事情が深刻である。
現在のデジタルカメラは、100%動画撮影機能を持っている。一眼レフならば、それで劇場作品やCMの撮影まで行われるほどクオリティも高い。デジタルカメラとビデオカメラの間で、動画を撮る際の機能差はもはやない。デジタルカメラでは29分を超える動画を一度に撮影できない機種が多く、そこが差別化点ではあるが、これも技術的な理由ではない。ヨーロッパの税制度上の問題から、ビデオカメラは高い関税を課せられている一方、デジタルカメラには関税がない。両者を区別する方法として、29分以上の連続録画ができるかどうか、ということなので、デジタルカメラでは29分までしか動画が撮影できないのだ。ただし、2016年7月には規制が撤廃される見込みなので、制限はなくなるだろう。
そもそもビデオカメラは、ライバルが多すぎるのだ。
一方、映像を撮るニーズは、写真ほどは多くない。子どもの成長記録は、そのなかで最も成功したものだ。
だが、ビデオカメラを日常的に持ち歩く人は少ない。旅行などのイベントでは活躍しても、他の日には自宅に置きっぱなしだ。動画を撮りたいチャンスはいくらでもある。それをカバーしてくれるのは、より持ち歩きやすいデジタルカメラであり、日々携帯しているスマートフォン。ビデオカメラで撮影した映像は「撮りっぱなし」で放置されることも多く、購入した人が継続的に買い替える率が減っていた。
一方、市場で急速に存在感を増しているのが、GoProのHEROシリーズに代表される「アクションカメラ」だ。アクションカメラのニーズ拡大は、ビデオカメラのニーズ縮小とかがみあわせのようになっている。その中身については、次回Vol.36-3で解説したい。
●「Vol.36-3」は11/9(月)ごろ更新予定です。
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