デジタル
2015/11/16 9:00

【西田宗千佳連載】ビデオカメラで培われた技術の未来

「週刊GetNavi」Vol.36-4

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古典的なビデオカメラの市場は縮小の一途をたどっており、新たなニーズに合わせ、スマートフォン/デジタルカメラの動画機能/アクションカメラといった製品が、個人にとっての動画撮影機器になっている。

 

おそらく、この傾向はもはや変化しないだろう。時代が巻き戻り、ビデオカメラ全盛の時代にはならない。だが、ビデオカメラの高画質化のために開発されたテクノロジーは多く形を変えて、新世代の動画撮影機器に入っていくことになる。

 

例えば半導体。センサーから取得したデータは、処理しないと美しい映像にならないし、静止画と動画の同居にも処理がいる。そのため、ニコンにしろキヤノンにしろソニーにしろ、専用のLSIを開発し、差別化要因としている。以前はビデオカメラと静止画用のカメラでは別々のLSIが使われていたが、ビデオカメラ市場の縮小に伴い、LSIの統合が進んでいる。動画のために開発したノウハウは、現在は「カメラ」という存在で普遍的に使われるものになっている。

 

手ブレ補正も同様だ。そもそも、手ブレ補正機能はビデオカメラで生まれたものだが、この10年で当たり前のものになってきた。ソフトで行う「電子式」も、光軸を動かして行う「光学式」も、ビデオカメラ由来の技術が使われている。ビデオカメラの場合、他の撮影機器より倍率の高いズーム機能を備えているものが多いため、いまだに手ブレ補正の必要性と精度については、他の撮影機器よりずっと進んでおり、10万円程度の機種でも、驚くほど精度の高い手ブレ補正機能が搭載されている。高倍率ズームは、レンズのサイズに依存する部分があり、小さなボディに搭載しにくい、という欠点はあるものの、今後はおそらく、コンパクトデジカメとスマートフォンの両方で、ニーズが高まるはずだ。

 

手ブレ補正の技術については、今後はDJIのOsmo(写真)も使っているジンバル系の技術と、ビデオカメラ由来の補正技術が補いあう時代になる。ジンバル系は「カメラを揺らさない」方法で、ビデオカメラの手ブレ補正は「揺れてしまったカメラの光軸を補正する」技術である。組み合わせれば、よりブレのない映像になるのは間違いない。

 

一方、古典的なビデオカメラにはなかったのが「ネットとの連携」という要素だ。撮影した映像をカットし、複数のビデオと組み合わせてひとつの作品にする、といった要素は、昔なら、プロかビデオマニアでなければ難しいことだった。しかし現在は、ある程度形式は限定されるものの、クラウド側に機能を用意することで、ビデオ編集の知識がない人でも実現できる、というサービスが生まれ始めている。動画の中のコマから演算することで、背景にボケ感がない写真にボケを与えたり、ピントを補正したりする技術もある。そうした手法を応用し、三次元の写真や動画を、長時間撮影した動画の解析から生み出す、といった研究も進んでいる。

 

動画と静止画の技術が曖昧になることで、ようやく、「いままでにない映像処理の技術」があたりまえに使われる時代になろうとしている。

 

●Vol.37-1は「ゲットナビ」1月号(11月24日発売)に掲載予定です。

 

 

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