ドラマ『こんばんは。朝山家です』原作となった“5年分の家族日記”の舞台裏──足立紳・晃子夫妻インタビュー

ink_pen 2025/7/11
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ドラマ『こんばんは。朝山家です』原作となった“5年分の家族日記”の舞台裏──足立紳・晃子夫妻インタビュー
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2020年から約5年にわたり連載された、映画監督・足立紳さんによる家族日記「後ろ向きで進む」。反抗期の娘や不登校の息子、仕事に追われる夫と、限界寸前の妻。そんな“むき出しの家族”の日々を描いたこの連載が、7月6日よりドラマ『こんばんは。朝山家です』として放送スタート。そして7月11日には、この日記をまとめた書籍『ポジティブに疲れたら俺たちを見ろ!!』として刊行されます。
今回は、原作者である足立紳さんと、連載の“もう一人の主役”である妻・晃子さんに、5年間を振り返っていただきました。

●足立紳(あだち・しん)
1972 年鳥取県生まれ。脚本家、作家、映画監督。日本映画学校卒。2012 年、シナリオ「百円の恋」が松田優作賞を受賞。同作は2014 年に映画化され、日本アカデミー賞の最優秀脚本賞を受賞。2016 年『14 の夜』で映画監督としてもデビュー。<脚本代表作>映画『百円の恋』、連続テレビ小説『ブギウギ』、配信ドラマ『拾われた男』/<監督代表作>映画『喜劇 愛妻物語』、『雑魚どもよ、大志を抱け!』『Good Luck』(2025年公開)
●足立晃子(あだち・あきこ)
1976 年東京都生まれ。成城大学映画研究部時代に足立紳と出会う。映画配給会社、某プロレス団体勤務後、2003 年に足立紳と結婚。夫と2 人の子供との暮らしを経済と精神の両面で支え続ける。映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』(2023年公開)『Good Luck』(2025年公開)にプロデューサーとして入る。

キツくて、キャパオーバーな5年間

ーーまずは、5年間の連載を振り返ってみていかがですか?

足立紳(以下、紳)「日記が始まったばっかりの時は、子供たちが小学校6年生と1年生で、かわいい盛りみたいな感じだったんです。ただ、その後、娘の想像を絶する反抗期だとか、息子の自閉スペクトラム症にまつわる不登校とかが始まって、そういった悩みが想像以上にキツかったですね」

足立晃子(以下、晃子)「私は本来、落ち着いたというか、日々変わらない生活が好きなんです。でもこの5年は、息子のことだけでなく、娘も思春期を迎えたし、足立も仕事が忙しくなってきて、毎日の変化にとても疲弊してた気がします。本にまとめるために日記を読み返しましたけど、当時は明らかにキャパオーバーだったと思いましたね」

ーーそんなに大変だったとは……。読者からすると、大変ながらも明るく楽しい足立家という印象だったのですが

「それは、やっぱり人に読んでもらう日記だから。深刻な気分で深刻なことを書いてもあれなんで、おもしろ要素を交えながらエンタメを意識してはいました」

晃子「でも、やっぱりすごいなと思うのは、人間って変わってくというか、日々成長してくんだなと。今も無事とは言えないけど生きていけるようになりましたし、娘、息子も5年間を日記によって客観視できるのはありがたいかな。深刻でしたけどおもしろいので、みなさんに読んでほしいですね」

ーー「足立家、激動の5年」だったと思います。お二人が特に印象に残っているエピソードはありますか?

「俺はやっぱり、2021年12月のキャンプ。何日も前から息子が参加できるように調子を整えていたのに、いざ、バスに乗る間際になって、息子が行かないって言った時の妻の絶望感っていうのは、今でもすごくよく覚えてて、あそこは何度か読み返しちゃいますね。あと、娘の野球

晃子「あぁ、引退試合で一人だけ出られなかった時ね」

「その2つは、できれば味わいたくない感覚ですけど、よく覚えてますね」

晃子「私は、息子のことで疲れ切っていた私を娘が労ってくれた時ですかね。この苦労ってなかなか伝わらないと思ってたんですけど、いつも家で暴言ばかりの娘が『ママ大変だわ』って言ってくれたことに驚いちゃって。わかってくれる人が一人でもいたことがうれしかったんですよね」

ほぼ、実話。でも奥さんのキャラだけは……

ーー2025年7月6日から、この日記を原作にした「こんばんは。朝山家です」が放映中ですが、どんな作品になっていますか?

「特に大きなストーリーとか事件があるわけじゃないんです。いわゆる“次どうなるの!?”みたいな、ハラハラドキドキする展開は少ないかもしれない。でも、その分、登場人物一人ひとりの生活だったり、ある家族のあり方みたいなものは、しっかり描かれてると思います。部屋のありさまとか、日常のちょっとしたことも含めて、“生活”をちゃんと映そうとしてる。そういうところもテーマになっているかと。
原作の日記を読みながらドラマを見れば10倍どころか100倍くらい楽しめると思います」

ーーちなみに日記をドラマに落とし込むにあたって苦労などはありましたか?

「全然ないです。ただ、創作という意味では、ドラマでは奥さんができる人になっています。赤裸々に書いたらいちばん放送禁止になっちゃう人なのに。娘が第1話を見た時に『自分たちのことはよく書いてるよね、特にママはあんなに優しくないでしょ』って」

晃子「放送禁止ですからね。そのまんまやっても、誰が見たいんだって話になりますから」

「俺的にはなんていうか、今回のドラマでも、『喜劇 愛妻物語』にしても、奥さんのことをよく書いてると思うんですよね。その姿を見て、言動とかを反省してほしいなと思ってるんですけどね」

晃子「映画を観て妻に反省してほしいとか、外ですごい言うんですけど、それすごいつまんないからやめろっていつも言ってて」

「いや、妻に反省してほしいって思いながらも、いちばんおもしろいと思ってるから、彼女を主人公にした物語やキャラクターを作っているわけで……」

晃子「じゃあ、反省してほしいなんて言わなくていいんだよ。そんな毎回毎回」

ーー……。それでは、最後に、この日記をどんな方に読んでもらいたいかを教えてください

「わかりやすく言うと、家族のことで色々抱えてる人がこの本を読んで『うちだけじゃないな』とか、『どこの家も似たようなもんだな』と思って、ちょっと気が楽になってくれたらいちばんうれしいですね」

晃子「できれば全ての人に読んでほしいですけど、家族とうまくいってない人とか、何かにつまずいてる人、がんばるのがしんどいなって思ってる人にこそ読んでもらいたいです。
たぶん、家族ってそんなに『みんな大好き!』みたいな関係ばっかりじゃないと思うんですよ。むしろ、ケンカしながら、ぶつかりながらやってるのが普通じゃないかなって。だから、そういう“むき出し”の姿を見て、『ああ、こんな家族もいるんだな』って思ってもらえたらうれしいです」

5年間の連載を通して描かれたのは、ただの日常ではなく、悩みや葛藤、ぶつかり合いを含めた“むき出し”の家族の姿でした。ドラマ『こんばんは。朝山家です』はそんな日記を原作に、静かで濃密な“生活”の手触りを丁寧に描いています。

書籍『ポジティブに疲れたら俺たちを見ろ!!』は7月11日発売。ドラマとともに読むことで、家族の風景がより深く、鮮やかに立ち上がるはずです。GetNavi webの連載も、今からでも全話読めます。家族に悩んでいる人も、そうでない人も、ぜひ、このエッセイに触れてみてください!

【書籍情報】

『ポジティブに疲れたら俺たちを見ろ!!〜ままならない人生を後ろ向きに進む』
「愛妻家アピールと育メン気取りに虫唾が走る」と妻に言われた映画監督の、承認欲求を満たしまくりたい日記。
キレる妻と残念な夫によるリアル版『それでも俺は、妻としたい』。妻には罵られ、ふたりの子どもたちに翻弄され、他人の成功に嫉妬する日々。
「GetNaviweb」で2020 年3 月から毎月連載されてきた脚本家・映画監督の足立紳夫妻の日記風エッセイ「後ろ向きで進む」から厳選した抱腹絶倒& 衝撃の家族の記録。

撮影/鈴木謙介

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