いまや日本といえば、クールジャパン。アニメやコミックの舞台となった土地を巡る通称“聖地巡礼”も一般的に行われるようになってきました。ここでは、アニメ情報誌の編集長が成田空港からほど近い千葉の“聖地巡礼”を紹介します。
※本記事は航空会社・バニラエアの機内誌「バニラプレス 2017年4-6月号(創刊号)」に掲載された内容の完全版となります
筆者がバニラエアを利用するのは、主にプライベート。古参のJリーグのクラブのもうすぐ8年目にもなろうというJ2生活に付き合わなければならないため。もうひとつは、自分の趣味である全国のカプセルホテル、サウナ(特に天然温泉付き)巡りをするためです。そんなつましいアニメ誌のいち編集長がサッカーやグルメの話をしても需要がないので、身のほどをわきまえ、ほんのちょっとだけスケール感がある〝聖地巡礼〟を紹介しましょう。
京成佐倉駅前は、『弱虫ペダル』の聖地
累計発行部数が1600万部を突破し、2013年10月よりTVアニメが放送され、ロードバイク・自転車市場に新たなユーザーを呼び込んだマンガ『弱虫ペダル』(渡辺 航著、秋田書店)。世界各国でも注目を集める本作の主人公・小野田坂道は小学生時代より、自分が大好きなアニメ・マンガグッズを買うために千葉県の自宅から秋葉原駅付近まで、なんとママチャリで通っていました。距離にして往復約90kmという道のりを何度も行き来していたのです。
のちに総北高校の自転車競技部に入部し、インターハイで大活躍を果たすことになる小野田坂道をとんでもない健脚にさせたママチャリ小旅行。その道のりはアニメ『弱虫ペダル』のファンにとっては、憧れの存在・坂道が見てきた景色を味わえる、格好の「聖地」です。アニメ本編で登場した京成佐倉駅前は、ぜひ押さえておきたい撮影ポイント。ほかにも、道中にアニメ内でモデルになったような道路や建物をいくつか確認することができます。さらに、この巡礼は旅人のお金の使い方に関して考えさせられるところがあります。
成田から東京までの移動を、自転車にするという選択肢も
成田空港に着いた旅人のほとんどは「CHIBA」という存在を知らぬまま「TOKYO」まで鉄道やバス・車で移動をするでしょう。ただし運賃は、成田エクスプレスなら都内まで約3000円、スカイライナーなら上野まで約2500円、成田スカイアクセス特急なら約1200円。成田&東京シャトルバスなら約1000円。ほとんどの空港が同じ問題を抱えてはいますが、公共交通機関だとどうしても成田空港から千葉県を抜け出すのにそれなりの費用がかかってしまいます。もし空港の近くの駅から自転車に乗って移動すれば、その運賃は格段に節約できます。
誰でも乗れて旅の移動手段としても使用される自転車は、諸説あるが19世紀のドイツで生まれ、長きにわたって全世界で愛されている、環境にやさしい、かつコストパフォーマンスの高い乗り物。
『弱虫ペダル』の世界に戻ると、当時まだ小学生だった坂道は、電車で行くだけで1000円近くかかってしまう場所に安く行くため、そして自分の限られたおこづかいを大好きなアニメ・マンガグッズに使うために、子どもなりの無謀だけどほほえましい工夫をしたわけ。これは渡航・移動にかかる費用を節約して、そのぶん旅行の本来の目的に資源を集中投下しようとするバニラエアユーザーに通ずる考えではないでしょうか。
もちろん、ビジネスと同じくトラベルも時間は限られており、旅人はお金だけでなく時間も含めたコストパフォーマンスの高さを求めているでしょう。しかし、小学4年生の小野田坂道が考えた子どもなりの節約旅行は、これから待っている目的地における、とんでもなく幸福な出来事を多分に妄想できる、裕福な時間を提供してくれている気がするのです。
成田から東京……ではなく、日本で一番人気の自転車アニメの聖地からアニメ・マンガ文化の聖地へ……。自分自身で持ち込んだロードバイクを使ってもいいし、京成佐倉駅の近くにあるレンタサイクルショップを利用してみるのもいいでしょう。目の前にたくさんある荷物のことはこの際忘れて(笑)、成田空港から目的地までの単純な移動時間を、自転車に乗ることによって、夢のある、そして〝神聖な〟旅時間へと変えてみるのも一興ではないでしょうか。
(文/アニメ情報誌『アニメディア』編集長・馬渕悠)
『弱虫ペダル NEW GENERATION』
テレビ東京ほかにて毎週月曜深夜1:35から放送中
(C)渡辺航(週刊少年チャンピオン)/弱虫ペダル製作委員会