みなさんこんばんは、ギャランティーク和恵です。今月から、読者のみなさまに毎月その季節に合わせた歌謡曲10曲をワタシが思いのままご紹介する新企画「マンスリー歌謡プレイリスト」がスタートします。記念すべき第1回は夏真っ盛りの8月。夏の歌謡曲は名曲ばかりで、選びきれずに泣く泣く外した曲などもありましたが、きっとみなさんも気に入ってもらえるものばかりになったのではと思います。ぜひ、ワタシが精魂込めて作ったプレイリストを、通勤・通学やドライブの際に聴いてみて下さいね。
さて、8月は照りつける太陽の下、心も体もつい奔放になってしまう季節。危ない恋にも溺れそう!? でもお墓参りも忘れずにね……。
01. 暑中お見舞い申し上げます/キャンディーズ
(作詞:喜多條忠 作曲:佐瀬寿一)
最初はやっぱり季節のご挨拶ということでこの曲から。1977年6月リリースのキャンディーズ14枚目のシングル。出だしの「ウ〜ワオ!」で一気にテンションUP! はち切れんばかりの若さ漲るキャンディーズ3人がビキニ姿で海へ駆け出す姿が目に浮かびます。「暑中お見舞い申し上げます」という挨拶と、それに佐瀬寿一センセーが乗せたメロディのみがサビのすべてとなっている、この曲の潔さが実に爽快です。可愛い振り付けも真似しながらカラオケなんかで歌えたらサイコーです(ワタシは踊れます)。夏が始まると聴きたくなる1曲。
02. 夏にご用心/桜田淳子
(作詞:阿久 悠 作曲/森田公一)
1976年5月にリリースされた桜田淳子さんの15枚目のシングル。こちらも夏の始まりにピッタリな曲。ミニスカートから見えるご自慢の御御足で誘うようにポーズを取る淳子に「ご用心♪」と言われちゃうと、男の子たちもそりゃ我慢など出来なくなるに決まってます。しかし「ご用心」という古風な言葉をアイドルに歌わせることで、キッチュな質感を生むのが阿久 悠センセーの凄技のひとつ。淳子の太ももをチョイと触って「ご用心♪」と指差すポーズはまるで日本舞踊ようで不思議なミクスチャー感があり、阿久 悠センセーが作り出すアイドルはPOPではなくキッチュなのだと改めて思います。
03. 夏に抱かれて/岩崎宏美
(作詞:山上路夫 作曲:馬飼野康二)
1979年5月にリリースされた岩崎宏美さん17枚目のシングル。サンバ・ステップで艶々の黒髪を揺らしながら楽しげに歌っていたヒロリン。でも、歌詞が曲調とは裏腹にどこか情念深く、「みんな外国へ行くのね……独身貴族ね……」と早々に恨み節から入ります。ホントは私もみんなと外国に行きたいのに、彼がいるもんだからしょうがなく日本の海で遊ぶわよ! ホレ海小屋! とやけっぱちです。なのにせっかく来た海は嵐と激しい稲妻という状況のなか、「今年の夏は忘れない」という言葉がやっぱり恨んでいるように聞こえ、そんな不満げな夏に「ラララ〜」とサンバ・ステップを一心不乱に踏むヒロリンが狂気的で素敵です(褒めてます)。
04.思いっきりサンバ/石野真子
(作詞:有馬三恵子 作曲:筒美京平)
1982年2月にリリースされた石野真子さん13枚目のシングル。……え? 2月リリース? Wikipedia情報によるものでいま初めて知ったのですが、2月に夏の歌をリリースってどういうことかしら……。歌詞にも「真夏日」と出てくるんですが、これは果たして夏の歌なのでしょうか(取り上げておいてなんですが)。そんな不可解なところはこの曲のなかにも多分にあり、まず有馬三恵子センセー独特の、後ろめたさやタブー感のある詞が非常に重々しく、全然「思いっきり」感がない! さらには、イントロのピアノのフレーズと焦燥感溢れるストリングスから始まり、全体に漂う不穏な感じがまったく夏を感じさせない! でも、この筒美京平センセーの曲と大村雅朗さんのアレンジが素晴らしすぎて、つい取り上げてしまいました。こんな後ろめたい夏もあっていいよね……。
05. 困ったラブ・ソング/沖田浩之
(作詞:売野雅勇 作曲:梅垣達志)
あぁ、やっとこの曲を紹介出来る時が来たわ……嬉しい……! 1983年4月リリースの沖田浩之さん9枚目のシングル。ワタシが男性アイドルのなかで一番好きなのがヒロくん。その彼の曲のなかで特に好きなのがこの曲。Aメロではキザなセリフを吐いていたのに、突然「困ルンバ!困ルンバ!」と連呼(えぇ!?)。するとマイナー調だったAメロから一転してメジャー調になり、何故かヒロくん、しりとりを始めちゃうのです! 「青い海……南風……全身で恋を!」と。なんてオシャレな歌なんでしょう! サウンドもワタシ好み。ヒロくんの楽曲は全体的に作詞家による高度なSMプレイを見ているようで、ほかの曲も素晴らしいのでぜひ聞いていただきたい。
06. 水中花/井上忠夫
(作詞:阿久 悠 作曲:井上忠夫)
さぁみなさん、クールダウンです。パヤパヤした曲ばかりが夏の歌ではありません。1976年5月にリリースされた井上忠夫さんのアルバム「水中花」の表題曲。少しヒンヤリとした夏の夜、盆踊り、金魚すくい、線香花火……。そんな夏の風物詩のひとつに「水中花」という、水の中に入れると花のように開く紙のおもちゃがあるのをご存知でしょうか。涼やかで見た目も綺麗なこの「水中花」ですが、この歌で主人公の女は「水の中でこそ美しく、外に出せばただの紙」と、自分自身を「水中花」に例えています。そんな主人公は水商売の女なのか……舞台に立つ女なのか……どちらにしてもワタシも同じような職業で身に沁みるものがあり、いつも夏になるとこの歌を歌いたくなるのです。さらに「辞書を開き知らぬ文字探しながら書く手紙」という一文で主人公の人物像まで見えてくる、阿久 悠センセーの詞の力には感服いたします。
07. 蛍火/小柳ルミ子
(作詞:門谷憲二 作曲:出門 英)
8月といえばお盆、ご先祖様や亡くなった人を迎え入れる日。そんなお盆にちなんだ歌が、1980年7月にリリースされた小柳ルミ子の31枚目のシングル「蛍火」です。夏の季語でもある「蛍火」が何万もの数となって集まり、亡くした恋人(もしくは夫)の魂を迎え火となって連れてくるという映像的で幻想的な歌なのですが、この主人公にはすでに新しい恋人がいて、これからその新しい恋人と添い遂げてもいいか、何千何万の蛍火と共に現れる亡くした男の魂に許しを乞うという、何とも背徳的でドラマティックな歌なのです。超・名曲。しかしそんな悲しい歌なのに、Bメロの「ぁどしてもどしてもどして〜も♪」という部分だけが何だかふざけたメロディで、そこがある意味この曲のフックになっています。
08. 夏八景/麻丘めぐみ
(作詞:阿久 悠 作曲:筒美京平)
ここからはまた気を取り直して元気な夏の歌をご紹介。1976年6月にリリースの麻丘めぐみさんの16枚目のシングル。またまた阿久 悠センセーの大衆演劇のような古風なタイトル。しかし筒美京平センセーの70年代ディスコサウンドでノリの良い曲となっております。花火、海水浴、そんな夏ならではのシチュエーションのなかで、ふいに訪れる恋の瞬間を甘酸っぱく描いています。しかもそれを阿久 悠センセーは「夏はいろいろです本当に」という言葉で締めくくるのです。この詞、凄くないですか!? めっちゃ適当なフレーズに聞こえるんですけど、でも、このフレーズじゃないとダメなんですよね。いや〜夏はいろいろです! 本当に!
09. 波乗りパイレーツ/ピンク・レディー
(作詞:阿久 悠 作曲:都倉俊一)
1979年7月にリリースされた、みなさんご存知ピンク・レディーの13枚目のシングル。ビーチ・ボーイズの「Surfin’ U.S.A.」をベースにしてるのでは? と思わせるアレンジですが、実際にこのシングルのB面には、同曲をビーチ・ボーイズ本人達のアレンジとコーラスで録音されたヴァージョンが収録されています。なのでB面のほうが本家ビーチ・ボーイズのサウンドとして有り難がられてたのかもしれませんが、ワタシとしてはA面の都倉俊一センセーのアレンジのほうが、スピード感があり、明るい曲調なのにどこか切なさも感じさせて断然好みです。是非A/B面を聴き比べて、歌謡曲のアレンジがいかに繊細な情景を生み出しているかを感じてもらいたい。これこそが日本人の匠の技。
10. 夏ざかりほの字組/Toshi & Naoko
(作詞:阿久 悠 作曲:筒美京平)
最後はデュエット曲で。1985年7月に田原俊彦さんと研ナオコさんがToshi & Naoko 名義でリリースしたシングル。スチールパンが夏のムードを感じさせ、研ナオコさんの気だるくも色っぽい歌唱がアーバンな気分を漂わせています。基本ナオコさんはハモりに徹しているのですが、Bメロで一瞬主線を取る彼女の低音のボーカルがドキっとするほどセクシー。マニッシュなファッションセンスも相まってめっちゃ都会的です。トシちゃんもデビューから5年が経ち、子どもっぽさが抜けたキザな歌唱も研さんの色気に引けを取らずセクシー。でも、2番の「おっぴろげ」という言葉がどうしても引っかかってしまいます。これこそがまさに阿久悠センセーのキッチュなセンス。「ほの字」だってそう。ダサいんだかオシャレなんだか……の際どいところです。しかしそれを承知でカッコつけて歌うのが楽しい! それがこの歌の魅力です。今年の夏はカラオケでぜひ!
以上、和恵が選ぶ「8月のマンスリー歌謡プレイリスト」でした。なんか気づけば阿久 悠センセー多いなぁ。全然無意識で選んでいたのですが、実は阿久 悠センセーの命日は8月。しかも今年で没後10周年だそうです。阿久 悠さんは夏が好きだったみたいだし、夏に色々と縁があったとお話も聞いたことがあるので、きっと阿久センセーが天国でテレパシーを送ってくれてたのでしょう。それではみなさん、熱中症に気をつけて夏を思いっきり楽しんでください!
【インフォメーション】
『チョット待って!プレイバック Part.1』 〜ギャランティーク和恵の秘蔵フィルムコンサート〜
ギャランティーク和恵さんの過去の秘蔵ライブ映像を語るトークイベントが、渋谷の「サラヴァ東京」にて開催されます。トークのお相手は、長年にわたりギャランティーク和恵さんのリサイタルやライブイベントを撮ってきた白尾一博さん。YouTubeやDVDで見ることの出来ないお蔵入り映像を見ながら、あの日あの時の思い出のライブを振り返ります。現在、PassMarket イベントページにて予約受付中!
日時:2017年8月20日(日)、開場16:00 開演16:30 閉演20:00 (休憩アリ)
料金:3500円(1ドリンク付)
出演:ギャランティーク和恵、白尾一博
会場:サラヴァ東京(渋谷)
【メディア出演情報】
2017年4月28日から新しくリニューアルされたNHK BSプレミアム「The Covers」の新コーナー「BAR 好猫(スキャット)」で、ギャランティーク和恵さんが所属するユニット・星屑スキャットがレギュラー出演中。ぜひオンエアをチェックしてみて下さい!
放送日/第4金曜日 22:00~22:59
番組公式サイト http://www4.nhk.or.jp/thecovers/