エンタメ
2016/3/15 20:30

【子どもに読み聞かせるつもりが……】40オトコが号泣してしまう珠玉の絵本3選

子どものために読んでいたはずなのに、いつのまにか自分のほうが物語に入り込んでしまい、目頭が熱くなる……。名作と呼ばれる絵本では、そうしたケースは珍しくありません。人生経験を積んだ大人だからこそ、しみじみ実感できるストーリーがある。そんな珠玉の絵本3冊を紹介します。

読んだときの年齢によって読後感が変わる永遠の名作

おおきな木

おおきな木
作/シェル・シルヴァスタイン
訳/村上 春樹
出版社:あすなろ書房

 

「おおきな木」は、アメリカの絵本作家シェル・シルヴァスタインの「ぼくを探しに」と並ぶ世界的名作。黒い線で描かれたシンプルな絵と、村上春樹の上品な翻訳が心の奥にじんわりと届きます。

 

登場人物はひとりの少年と1本の木。仲良し同士だったその関係は、少年の成長とともに変わります。「お金が欲しい」という少年に木はリンゴを与え、「家が欲しい」という少年に木は枝を与え、ついには幹も与えてしまいます……。

 

とうとう切り株だけになってしまった木に、年老いた元少年が腰かけます。そして最後の一文が衝撃的。見返りを求めない愛。きっと自分の親もそうした気持ちで育ててくれたのだなと40歳を過ぎてようやく実感できる、そんな感動が押し寄せてきます。おそらく20代で読んでもピンと来なかったでしょう。自分が何歳でどう生きてきたかによって感じ方が変わるというのは、名作の証しです。

 

守るべきものができた人(=親になった人)を泣かせにかかります

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かたあしだちょうのエルフ
作/おのき がく
出版社:ポプラ社

 

「かたあしだちょうのエルフ」は、迫力あるイラストとそれに負けない物語の強さで、1970年に出版されて以来、ロングセラーを続ける名作絵本です。

 

主人公は、アフリカの草原で暮らすオスのダチョウ・エルフ。襲ってきたライオンから仲間の子どもを守り切ったものの、エルフは片足を失ってしまいます。しばらく経ち、今度はクロヒョウが子どもたちを狙います。エルフは最後の力を振り絞って子どもたちを背中に乗せ、足1本でクロヒョウと対峙します……。

 

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「おおきな木」が母性だとしたら、こちらは父性の話かもしれません。守られていた幼少期、青年期を過ぎると、今度は自分が命に代えても守るべきものが生まれます。思わず自分とエルフを重ね合わせてしまう人も多いでしょう。最後は大きな木になって野原に涼しい木陰を作り続けるエルフ。優しさと強さを持った人間になりたい、そう思える作品です。

 

もう戻れない夏休みの思い出が蘇ってくる

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なつのいちにち
作/はたこうしろう
出版社:偕成社

 

「なつのいちにち」は、比較的新しい作品ながら、お父さんが息子と一緒に読みたい本として新定番になりつつある一作。鮮やかな色使いとダイナミックな構図で、虫とり少年の一日を追います。

 

暑い夏の一日。おにいちゃんもいなくてぼくはひとり。シャーンシャーンとクマゼミの声が響くなか、げんじの谷まで走る。「まってろよ! でっかいクワガタムシ」。くさいくさい牛小屋を全速力で抜けて、神社の石段をハアハアと登る……。

 

文章はほとんどありませんが、緑いっぱいの自然のなかを虫とり網片手に駆ける元気な男の子を見ていると、夏にタイムスリップした気分になります。昔、わんぱく少年だったお父さんにとっては、ノスタルジックなキラキラとした夏の思い出が蘇ってきて、胸がジーンとすること間違いなし。あのころにはもう戻れませんが、次は子どもたちが体験する番です。