みなさんこんばんは、ギャランティーク和恵です。毎月その季節に合わせた歌謡曲を10曲選び抜き、みなさんにご紹介する「マンスリー歌謡プレイリスト」。今月は「グループ」特集です。
歌謡曲には様々な形態のグループが存在します。早くは1950年後期に登場した「ダーク・ダックス」や「デューク・エイセス」などのコーラスグループの流行に始まり、キャバレーなどで活動していたラテンやハワイアンなどのムード音楽を奏でる「マヒナスターズ」や「ロス・プリモス」、さらにはブリティッシュロックに影響を受けた「ザ・タイガース」などのグループ・サウンズ、そして「キャンディーズ」などのアイドルグループに「ツイスト」などのロックバンドなど、「グループ」をテーマに絞ってみても、歌謡曲というジャンルには多様な音楽性があることに気づきます。これから紹介するのは、そんな歌謡曲の「グループ」モノのなかでさらにカテゴリーを決めて、ワタシの個人的な趣味も交えて選んでみたいと思います。……やだ、真面目。
【2月のプレイリスト】
01.赤いドレスの女の子/ザ・スパイダース
(作詞:橋本 淳 作曲:かまやつひろし)
まずは<GS(グループ・サウンズ)>編。1968年6月に発売されたザ・スパイダースの15枚目のシングル「真珠の涙」のB面曲を選ばせていただきました。スパイダースのなかで個人的に1番好きな曲です。GSの誕生をきっかけに、歌謡曲黄金期を作り上げた職業作詞家・作曲家というものが同時に誕生したのも大きなポイント。そのポイントは、ワタシが「歌謡曲」というものを語るうえで大きな節目として捉えています。多くのGSがそんな職業作家によって手がけられているなか、スパイダースはメンバーの1人であるかまやつひろしさんが作曲している曲も多く、商業ベースに染まらない音楽性の高さを垣間見ることが出来ます。
02.男と女のいる舗道/内山田洋とクールファイブ
(作詞:吉田 旺 作曲:穂口雄右)
続いては<ムードコーラスグループ>編。1979年にリリースのLP「内山田洋とクールファイブ 第12集」のなかの1曲。デビュー曲「長崎は今日も雨だった」のような♪ワワワワ〜みたいなコーラスのいわゆる「ムードコーラス」スタイルも、70年代も終わりに差しかかりアーバンかつ大人のムードがクールファイブにも漂い始めます。肩に力が抜けたような優しい穂口センセーのアレンジと、男女の別れ際のキザな描写がなんともダンディーです。しかし、お互い背中を向けてそれぞれの道を歩もうとする時、女に対して「死ぬなよ」と願う別れって一体どんな別れなんでしょうか……。
03.ハチのムサシは死んだのさ/平田隆夫とセルスターズ
(作詞:内田良平 作曲:平田隆夫)
お次は<ヴォーカル&インストゥルメンタルグループ>編。ちょっとわかりにくいカテゴリーではありますが、この当時、「ピンキーとキラーズ」にはじまり「ペドロ&カプリシャス」なんかに見る女性ヴォーカルをフロントに置くバンドスタイルが多く出てきました。そのなかのひとつがワタシも大好きな「平田隆夫とセルスターズ」です。1972年2月にリリースされ大ヒットしたこの曲は、マイナー調でテンポ感のあるアレンジに、子供受けもするような歌詞がとてもキャッチー。しかしフロントに立てた女性2人「村部レミ」と「みみんあい」。この2人が衣装を合わせる気がなくそれぞれ好き勝手な格好をしてるところを見ると、あぁきっと仲悪いんだろうなぁ〜とか想像出来て楽しいです。
04.急げ!若者/フォーリーブス
(作詞:千家和也 作曲:都倉俊一)
お次は<男性アイドルグループ>編。男性アイドルグループは数いれど、ワタシが大大大好きなのは「フォーリーブス」です! 1974年7月にリリースされた24枚目のシングル曲。特にこの曲が好きで、ワタシの10年前にリリースしたアルバムでもカバーさせていただきました。ミュージカル調でドラマティックなこの曲は作曲の都倉センセーお得意の世界観。さらに「いつも神は見ている」とどこか耽美的な歌詞も、千家センセーお得意の世界です。黒の衣装を身に纏い、まさにミュージカルのように踊り歌う1974年紅白歌合戦でのステージは必見です。話は逸れますがフォーリーブスって、無駄に衣装替えするわりに、毎回誰かがうまく脱げなかったりボタンが外れなかったりしてトチるんですよね〜。
05.恋はミステリー/アップルズ
(作詞:松本 隆 作曲:穂口雄右)
お次は<女性アイドルグループ>編。女性アイドルグループも星の数ほどいますが、「キャンディーズ」を選ぶわけでもなく、あえて「アップルズ」という3人組をご紹介したいと思います。特にこの「恋はミステリー」という、1976年リリースのデビューシングル「ブルーエンジェル」のB面曲が大好きなのです。作編曲はキャンディーズの楽曲を多く手がけられた穂口雄右センセー。キャンディーズ同様の難易度高いコーラスワークに加え、彼女たちのハンパない歌唱力の高さが売りでしたが残念ならがヒットすることはなくアップルズとしては2枚のシングルのみのリリースとなりました。しかし! その後彼女たちは「EVE」というコーラスグループへと生まれ変わり、80年代以降の大ヒット曲の多くに彼女たちによるバックコーラスが刻まれることとなります。
06.ジェット・マシーン/フィンガー5
(作詞・作曲:三枝 伸)
お次は<兄弟グループ>編。半ば強引なカテゴリーですが……兄弟グループといえばやっぱり「フィンガー5」でしょう。残念ながら「サーカス」ではありません。何故ならサーカスは3人兄弟プラス従兄弟なんです。歌謡ひっかけ問題。「恋のダイヤル6700」や「個人授業」などで大ヒットを飛ばし、子供受けを狙った楽曲を数多くリリースしてきたフィンガー5ですが、1975年にアメリカへ渡りレッスンをつむために留学。その帰国後に再起を賭けてリリースされたのがこの「ジェット・マシーン」です。かなりアッパーで攻め攻めなこの曲、作詞作曲にはフィンガー5に数多くの楽曲を提供している三枝 伸センセー。ヒット曲のほとんどが都倉俊一センセーと井上忠夫センセーのため陰に隠れた印象がありますが、この方のヒップな作曲センスは抜群です。特筆すべきは、この曲から長男がマネージャーとしてメンバーから脱退し、代わりに8歳の甥っ子が加入したこと。8歳って! 血統を守るって大変です……。
7.賣物ブギ/ダウン・タウン・ブギウギ・バンド
(作詞:島 武実 作曲:宇崎竜童)
お次は<バンド>編〜その1〜。バンドとひと口に言っても、フォーク・ニューミュージックの世界にもたくさんバンドがいるなか、ここでは「歌謡曲」という観点で選ばせていただきました。たくさん名曲はありますが、ワタシが選んだのは1975年にリリースのシングル曲「賣物(うりもの)ブギ」。もちろんこれは笠置シヅ子さんの「買物ブギー」を下敷きに作られたコミカルな歌ではありますが、それと比較するとよく出来ています。ぜひ両方聴いていただきたい。しかしコミックソングといってもサウンドとしてはソリッドな演奏で非常にカッコ良いです。この曲は作詞が島 武実さんで、高田みづえさんの「硝子坂」や由紀さおりさん「う・ふ・ふ」など作詞家として活動しつつ、のちに「プラスチックス」のメンバーとしても活動された方。なるほどニューウェイブだわ……と納得出来るセンスを感じさせてくれます。
8.はるかな旅へ/ゴダイゴ
(作詞:奈良橋陽子 作曲:タケカワユキヒデ)
お次も<バンド>編〜その2〜。皆様ご存知の「ゴダイゴ」。スーパーミュージシャンでありながらも「お茶の間」の大人から子供たちに支持を受けたグループとして、こちらも「歌謡曲」という観点で選ばせていただきました。大ヒット曲の「銀河鉄道999」に「モンキー・マジック」と最強ソング数多いなか、ワタシが選ぶのは1979年にリリースされたシングル曲「はるかな旅へ」です! 「銀河鉄道999」同様の、新しい何かが始まりそうな期待に胸を膨らませる、希望に満ち溢れた楽曲。そこはミッキー吉野センセーのアレンジの素晴らしさもあり、奔放に大きく横揺れしながら歌うタケカワユキヒデさんのフレッシュなヴォーカルの魅力もあるのでしょう。
9.星化粧ハレー/ハイ・ファイ・セット
(作詞:田口 俊 作曲:杉 真理)
お次は<コーラスグループ>編。元は「赤い鳥」という5人組のフォークグループだった3人が「ハイ・ファイ・セット」に、そしてもう2人は「紙ふうせん」として活動を続けています。「紙ふうせん」は引き続きフォーク路線でしたが、「ハイ・ファイ・セット」は都会的で洗練された、ファッショナブルなコーラスグループとなりました。そして今回独断と偏見で選ばせていただいたのは、1984年にリリースされたシングル曲「星化粧ハレー」。井上 鑑さんのアレンジが最高にアーバン! そして何より山本潤子さんのα波ヴォイスが優しく包み込んでくれます。途中Cメロ的に現れるメジャー調の分厚いコーラスが、この曲の切なさをより引き立てています。あと、見れたらPV見て欲しいのですが、80年代ならではのアニメーションと実写を組み合わせたドリーミーなPVは、ちょっと泣けます。
10.涙をこえて/ヤング101
(作詞:かぜ耕士 作曲:中村八大)
最後は<合唱>編。グループの極み……。1970年からNHKで放送された番組「STAGE 101」に出演していた若者たちで結成されたグループが「ヤング101」です。NHKの一番大きな「101」スタジオにて収録していたことからこの番組名がつけられました。その出演者のなかには「田中星児」さんや「串田アキラ」さん、「上條恒彦」さんや「太田裕美」さんなんかも在籍していました。番組内では外国曲を中心にオリジナル曲もたくさん制作され、そのなかでもこの番組の代表曲ともいえるのが、ヤング101によって歌われた「涙をこえて」です。中村八大センセーのメロディ展開の素晴らしさ、そして東海林修センセーのラグジュアリーなアレンジはいまも色褪せず、40年以上経ったいまでもその当時の熱量が楽曲と共に伝わって胸を震わせてくれます。
以上、今月のプレイリスト、2月は「グループ」を特集してお送りいたしました。カテゴリーを作りながらご紹介しましたが、ほかにもカテゴリー分けとして、<チビッコ>若草ジャイアンツ、<ハーフ>ゴールデン・ハーフ、<不良>横浜銀蠅、<ダンサー>ニュー・ホリデー・ガールとかいろいろ出来そうですが、かなりニッチな方向になりそうなのでやめました。そういうワタシもソロ歌手と平行して、「星屑スキャット」というグループに所属させていただいております。ジャンル分けとしては、もちろん<女装>です。かなりニッチですよね……女装グループって。ほかに思いつきません。そう考えると貴重なグループなのかも知れませんね。自分で言うなって感じですけど。
「星屑スキャット」も春に向けていろいろ準備中であります。来月素敵なニュースをお届け出来ればいいなと思ってますので、皆様どうぞお楽しみに!