このお笑い芸人がすごい! 漫才やコントの面白さを学術的に分析した『サンキュータツオの芸人の因数分解 』レビュー

ink_pen 2018/3/15
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このお笑い芸人がすごい! 漫才やコントの面白さを学術的に分析した『サンキュータツオの芸人の因数分解 』レビュー
忌川タツヤ
いまがわたつや
忌川タツヤ

1980年生まれ。フリーライター / セルフパブリッシング愛好家。ライブドアブログ公式『つんどく速報』にてKindleダイレクトパブリッシング(KDP)作品の書評記事を担当する。 忌川タツヤのブログ Twitter : @imagawatatsuya

「昭和のいるこいる」のひみつ

のいるこいるのネタの妙味は、やや専門的に言いますと、グライスという学者の提唱した「会話の公理」という会話の「ルール」みたいなものを破っているところにあります。
(中略)
のいるこいるの場合は「関係性の公理」、つまり「関係のあることを言え」というルールを破っているのです。

(『サンキュータツオの芸人の因数分解』から引用)

 

「昭和のいるこいる」といえば、ボケ担当の昭和こいる師匠が、反省すると言いつつ、前かがみになって両手を小きざみに振りながら「ハイハイハイハイ」と、テキトーに謝ってみせるネタが有名です。

 

ある漫才ネタでは、ツッコミ担当の昭和のいる師匠が「寒くなりましたね〜」と前フリをすると、ボケ担当の昭和こいる師匠は「あー寒い寒い寒い寒い」とテキトーにあいづちを打ちます。さらに、「寒いからインフルエンザが流行っている」という前フリには、「あー、流行ってるね。良かった良かった」と、チグハグな受け答えをします。

 

まさに「関係性の公理」を反転させた笑いです。テキトーでふざけているように見えますが、じつは高度な言語テクニックによって「笑い」が構築されていることがわかります。

 

 

30種類の「文体」と「文法」

『サンキュータツオの芸人の因数分解』は、新旧さまざまな芸人たちにまつわる「笑いの分析」を収録しています。

【コンビ芸人】
サンドウィッチマン、ブラックマヨネーズ、笑い飯、おぎやはぎ、中川家、チュートリアル、オードリー、U字工事、Wコロン、南海キャンディーズ、ナイツ、パンクブーブー、しずる、ジャルジャル、スリムクラブ、昭和のいるこいる、はんにゃ、ハライチ、マシンガンズ、タカアンドトシ、POISON GIRL BAND、キングオブコメディ

 

【ピン芸人】
バカリズム、ヒロシ、AMEMIYA、中山功太、世界のナベアツ、いとうあさこ、キャプテン渡辺、柳原可奈子

 

どれも「なるほど!」と思わせる分析です。笑いのテクニックを理解したあとに、それぞれの漫才やコントを観直してみてはいかがでしょうか。

 

 

【著書紹介】

サンキュータツオの芸人の因数分解

著者:サンキュータツオ
発行:学研プラス

お笑いを研究する早稲田大学大学院卒の学者芸人・サンキュータツオが、同業者を舌鋒鋭く分析する「お笑い芸人研究本」!
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