エンタメ
2016/4/12 19:23

デヴィッド・ボウイの訃報に寄せて……その“魂”を感じさせる日本のあのバンドとは?

コレを読めば最新ミュージックシーンが手にとるように“わかった気に”なれる! 怖いもの知らず系音楽ライター・石井恵梨子の「今日から音楽ツウのふり。」をお届けします。

 

稀代のロックスターその魂は世界各国で今も生きている

デヴィッド・ボウイが亡くなった。1月8日、自身69歳の誕生日に発売した「★(ブラックスター)」が世界的な話題を呼んでいた、その矢先の出来事。

 

こういう言い方は失礼かもしれないが、完璧な幕引きを見るようだ。老いてなお見目麗しいルックスで、パントマイムから学んだ表現力を生かし、ときには宇宙人のようなコスチュームを着こなしていたボウイ。時代ごとにコンセプトを、いや自分自身そのものを変容させていくスタイルは、さながら完璧な役者のようであった。言い換えれば生活の喜怒哀楽がそのまま歌われることはほとんどなかった。いまのシーンでは、むしろこういう音楽家のほうが珍しい。

 

ポップスは純愛か応援歌、シンガーソングライターは私小説を綴り、ロックはリアルな挫折と希望を歌う。棲み分けはあれど、それらはすべて日常の歌。「え、何そのテーマ? どこから来たの?」みたいな驚きに出会うことは本当に少ないのだ。

 

ボウイのキャリア史上最も有名な「ジギー・スターダスト」は、別の惑星から来た両性具有のバイセクシャル・ロックスターを描いた架空のオペラだった。この作品にいたく影響を受け、自分たちもそれぐらいのことをやりたい、やるしかない! と息巻いていたのが初期のTHE YELLOW MONKEYであることは意外とみんな覚えていない。「楽園」などのヒット曲だけで語るべからず。初期のアルバムなんてジャケットからして完璧にボウイ。この時代の曲には商業性を無視した強烈なコンセプト(同性愛や売春、果てはタイムスリップした青年の魂とか)が多々あり、それらを全力で演じきる吉井和哉の姿があった。

 

この頃の強烈なニオイがあるからこそ、イエモンはいまもカルト的人気を保っていられるのだと思う。今春いよいよ再結成ツアーを開始する彼ら、そこにボウイの魂は感じ取れるはずだ。

 

“わかった気に”なれる2枚

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デヴィッド・ボウイ
「★(ブラックスター)」
2500円(税別) 発売:ソニー・ミュージック
遺作となった最新作。気鋭のジャズ奏者を揃えて挑んだ新境地。最後まで安定に走らなかった志の高さがあまりに美しい。

 

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THE YELLOW MONKEY
「THE NIGHT SNAILS AND PLASTIC BOOGIE」
2000円(税別) 発売:日本コロムビア
黄金期のボウイを模したジャケが鮮烈な1stアルバム。現在のイメージを裏切るマニアックでカルトな展開に脱帽。