終戦記念日にカントの言葉から戦争と平和について考えてみる――『永遠平和のために』

ink_pen 2018/8/15
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終戦記念日にカントの言葉から戦争と平和について考えてみる――『永遠平和のために』
三浦 暁子
みうらあきこ
三浦 暁子

1956年生まれ。大学在学中に結婚、専業主婦を10年ほどした後、突如、文筆活動を開始。現在は神戸市在住。エッセイストとして活動しています。著書には『ボルネオの白きラジャ』(NTT出版)、『梶本隆夫物語』(燃焼社)、共著に『家族はわかり合えないから面白い』(三笠書房)などがあります。

カントの言葉 その1

『永遠平和のために』では、まさに納得と思う言葉が私にもわかるように示されているが、中でもすごいと私がうなったのは……。

 

いかなる国も、よその国の体制や政治に、武力でもって干渉してはならない。

内部抗争がまだ決着をみていないのに、よそから干渉するのは、国家の権利を侵害している。その国の国民は病んだ内部と闘っているだけで、よその国に依存しているわけではないからだ

(『永遠平和のために』より抜粋)

 

おそろしいほど、今に通じる考え方ではないか。

 

 

カントの言葉 その2

他にも

隣り合った人々が平和に暮らしているのは、人間にとってじつは「自然な状態」ではない。
戦争状態、つまり敵意がむき出しというのではないが、いつも敵意で脅かされているのが「自然な状態」である。だからこそ平和状態を根づかせなくてはならない。

(『永遠平和のために』より抜粋)

 

まったくもって、胸をえぐる言葉だ。

 

平和な世の中を享受し、ぼーっと生きていた若い頃の自分に、「ほら、ぼやぼやしていないで、この本を読みなさい。今すぐ」と差し出したくなる。けれども、それはできない。
私はすでにいたずらに年を取ってしまった。今まで、政治や戦争について、よくわからないからと目を背けて生きてきた。それが楽だったからだ。後悔しているが、もう遅い。

 

だからこそ、これから社会に出る若者たちに、気力がないと非難される彼らに、この本をプレゼントしたい。ここには、あなたたちの未来を変えてしまうような衝撃的な、しかし、予言に似た言葉が並んでいる。

 

それにしても、300年近く前に生まれた人が、すでに今の世を射通すような言葉を残していたなんて。やはり、カントはすごい。さらには、書物という媒体のすごさも改めて認識する。書物として残されていなかったら、私たちはカントの考えに触れることはできなかった。

 

もちろん、翻訳した池内紀も、写真家の野町和嘉・江成常夫も、銅板画家の山本容子も、そして、何より、この本を編んだ編集者・池孝晃がすごいと思う夏の午後である。

 

 

【書籍紹介】

 

永遠の平和のために

著者: イマヌエル・カント(著)、池内紀(訳)
発行:集英社

【「憲法9条」や「国連」の理念は、この小さな本から生まれた】「戦争状態とは、武力によって正義を主張するという悲しむべき非常手段にすぎない」「常備軍はいずれ、いっさい廃止されるべきである」「永遠平和は空虚な理念ではなく、われわれに課せられた使命である」。1795年、71歳のカントは、永い哲学教師人生の最後に、『永遠平和のために』を出版した。有史以来、戦争をやめない人間が永遠平和を築くために必要なこととは? 力強い平和のメッセージ。

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