テレビが生む名言から人間の生き様を学ぶ、くすぶり系男子ライター福田フクスケの「魁(さきがけ)!! テレビ塾」。今回は、貴重な映像資料として評判高いNHK制作のドキュメンタリー「新・映像の世紀」から学んだ生き様を紹介します。
【今週の課題番組】
NHK総合「新・映像の世紀」
20世紀の膨大で貴重な映像遺産を掘り起こしたドキュメンタリー番組として今も名高いのが、95年に放映された「映像の世紀」だ。その続編「新・映像の世紀」が、昨年10月から全6回で放映されていたが、淡々と映像をつなげ歴史を俯瞰で見せようとしていた旧作に比べ、新作は「演出が過剰」「制作側の主観が目立つ」という不評の声も多い。
とはいえ、100%客観的なドキュメンタリーなどあり得ない。旧作もまた、あの過剰にドラマチックなテーマ曲が果たしていた役割は大きい。あの曲のおかげで、私たち視聴者が単なる「資料映像」を「メロドラマ」として消費し、感動していた側面は否定できないと思う。新作への批判は、旧作から20年の歳月を経て、視聴者のテレビに対する猜疑心が高まり、作為に対するアレルギー反応が過敏になったことのあらわれだろう。
奇しくも第5集では、60年代に東西両陣営で若者による反乱や革命が連鎖的に起きたのは、テレビ中継の力によるものだった、と伝えていた。しかし、今のテレビに大衆を煽動するような力は、もうない。“映像の世紀”とは20世紀の過去のことであると、皮肉にも強く印象づける番組となってしまった。
じゃあ、これからはネットがその役割を担うのかというと、それもあやしい。だってみんな、不満や怒りをSNSで垂れ流せばそれで満足しちゃって、煽動どころか去勢されている気がするもの。21世紀はいったい“何の世紀”になるのでしょうね。
【今回の名言】
「遠く離れた若者たちの心をつなぎ、時を超え、そのエネルギーを運んだのは、テレビだった」
by山田孝之(語り)