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2018/12/21 21:00

MISIAやMONDO GROSSOからFolderの名曲まで! 「ジャパニーズ・ハウス」の名曲10選

前回、「ハウス・ミュージック」にスポットを当てて、一般リスナー層に認知され始めたであろう80年代後半から90年代前半に絞ったプレイリストをお届けしました。その流れで、今回は日本人がクリエイトした「ジャパニーズ・ハウス」を取りあげてみたいと思います。

 

ハウス・ミュージックに関する詳しい説明は前回の記事をご覧いただくとして、個人的に「ジャパニーズ・ハウス」なる言葉自体、それほど目にすることがなかったのですが、数年前にフランスのディープ・ハウスDJのブラウザーと、日本在住フランスのDJのアリックスクンの尽力により、日本で生まれた初期ハウスを編纂したコンピ盤「Brawther & Alixkun Present ハウス Once Upon A Time In Japan… 」がリリースされ、「ジャパニーズ・ハウス」が世界的にも再評価される動きがありました。

 

この時期に「ジャパニーズ・ハウス」なる言葉をいくつかのメディアで目にして、意識するようになったのを覚えています。今回は上記の作品にも収録された「ジャパニーズ・ハウス」のオリジネイターのマニアックな作品から、誰もが知っている懐かしのJ-POP、そして今現在のハウスのエッセンスを取り入れた楽曲など、幅広く10曲ほどセレクトしてみました。

 

「Spotify」アプリをダウンロードすれば有料会員でなくても試聴ができますので、リズムの魔法がつまった「ジャパニーズ・ハウス」で、気分をアゲていただければうれしいです。

 

ちなみに、個人的な話ですが、ハウス・ミュージックの存在を知ったのは藤原ヒロシのDJでした。四つ打ちのリズムとフレーズが延々と続く、ハウス・ミュージックならではのフォーマットに快感を覚えた記憶があります。その流れで彼がプロデュースした小泉今日子のアルバム「No.17」も当然のようにゲット。とはいえ、当時は若いがゆえにリズムの魅力よりも、「ハウス=おしゃれ」な匂いを感じて興味を持った部分の方が大きかったような気がします。

 

そんな小泉今日子がハウス・ミュージックに急接近していた時期に、往年の昭和歌謡曲の歌姫・山本リンダもクラブ・ミュージックと出会い、「YAMAMOTO LINDA CLUB MIX」や「HOUSE LINDA」(共に1991年)で突然再ブレイクしていた不思議な時代があったのです。ハウス仕様にアレンジされた往年の名曲が、クラブで爆音でかかるイベントもあったりしました。あれって、いったいなんだったんだろう……。

 

【ジャパニーズ・ハウスプレイリスト】

01.Sunshower(H-Track Edition)feat. Nami Shimada/島田奈美
(1990年リリース)

1986年にアイドルとしてデビューした島田奈美。89年にリリースしたディスコブギーな名曲「サンシャワー」を、音楽プロデューサー・杉山洋介(paris match)の発案で、日本のハウス・ミュージックの先駆者ともされるアレンジャー/コンポーザーの寺田創一にリミックスを依頼。のちに寺田自身が音源を買い取り、自身による白盤(プロモ盤)12インチが遠い海を越えてNYのDJたちの手にわたり、夜な夜なクラブでスピンされるようになる。しばらくすると、この白盤がなんとあのラリー・レヴァン(伝説のディスコ「パラダイス・ガラージ」のレジデンツDJ)の手にわたり、レヴァン自らがリミックスを施したのが本作というわけなのです。シンセによるチープなストリングスとロボットヴォイスが時代感たっぷり! NYでヘヴィー・プレイされた本作が日本に逆輸入された1990年時点には、島田奈美はアイドルを引退していたというストーリーがあります。

 

02.Low Tension – 1991 Original version/Manabu Nagayama
(1991年リリース)

永山 学もジャパニーズ・ハウス黎明期を支えた一人で、過去には森俊彦(元SP1200 Production)と結成したJAZZZADELIC名義での活動、そしてピチカート・ファイヴの「Lesson 3003 part 1」にターンテーブルで参加していたりします。本作は前述の寺田創一とタッグを組んで、NYの名門レーベル「King Street Sounds」からリリースされたディープ・ハウスの傑作。洗練されたサウンドプロダクションは、27年以上も前の作品とは思えないほどのクオリティの高さ。まさしく夜の帳のサウンドトラック。夜の首都高を流す際にハマりそうです。ちなみに、彼はTGC(東京ガールズコレクション)のランウェイ時の選曲を担当していることでも知られています。

 

03.Equality Part.2 – Rich Medina -/福富幸宏
(2004年10月28日リリース)

80年代にジャパニーズ・ハウス黎明期を支え、90年代のハウス・シーン興隆の第一人者の一人。クラブ・ジャズのフィールドでも世界的な評価を得ており、ハウスの文脈における最重要人物。ピチカート・ファイヴの「東京は夜の七時」にハウス・アレンジを施したのは彼でもあります。本作はディープ・ハウスとフューチャー・ジャズを繋いだアルバム「EQUALITY」に収録されたナンバー。必要最小限の音数でストイックに刻まれるリズムに、ゲストヴォーカルのリッチ・メディナのポエトリー・リーディングが被さるなんともクールな仕上がり。同アルバム収録の「The tambour」もフロア対応のハウスナンバーですので、こちらも要チェックです。ちなみに音楽プロデューサーとしても手腕を発揮しており、布袋寅泰のカバーアルバム「MODERN TIMES ROCK’N ROLL」(2009年)なども手がけています。

 

04.Thursday, 2am/富家哲
(2015年6月22日リリース)

ハウス・ミュージックの生みの親であるフランキー・ナックルズに才能を発掘され、フランキーが所属していたレーベル「デフ・ミックス・プロダクション」から名作「Tears」で1989年に全米デビュー。日本に留まらず世界のハウス・ミュージック・シーンの礎を築き、そしてシーンを牽引したサトシ・トミイエ。2015年に15年ぶりとなるアルバム「New Day」を突如リリースしたのも記憶に新しいところです。アルバム全体はハウス色がそれほど強くない中で、本作はいわゆる初期ハウスのシカゴ・ハウスのフレイバーが散りばめられたサウンドで、シンセベースの鳴りに思わず歓喜する諸先輩方も多いのではないでしょうか。2015年当時のシカゴ/デトロイトのディープ・ハウス再評価の流れが見え隠れする内容となっています。

 

05.White Tipi/曽我部恵一
(2003年5月12日リリース)

サニーデイ・サービスを解散後(現在は活動中)、ソロ名義としては3枚目となるシングル。ハウス・ミュージックのエッセンスをJ-POP/J-ROCKのフォーマットに取り込んだダンサブルなナンバー。四つ打ちのリズムに印象的なギターリフ、そしてセクシーな乾いた歌声。何も考えずに、ただ音楽のリズムに身を委ねて、ダンスフロアでゆらゆらと踊る情景を重ねる歌世界に引き込まれます。共同プロデュースは盟友でもあるSUGIURUMN(スギウラム)。彼もまた、2000年代以降からプログレシッヴ・ハウスからテクノまで、独自のダンスミュージックをクリエイトし続ける重要人物。ダンスフロア直球の「White Tipi – SUGIURUMN House Mission Mix」も必聴です。オリジナル曲はセカンド・アルバム「瞬間と永遠」に収録。

 

06.光(Single Mix)/MONDO GROSSO feat. UA
(2003年7月16日リリース)

MONDO GROSSOこと大沢伸一が、ソニー時代に設立した自身のレーベル「REALEYES」からリリースした、5枚目のアルバム「NEXT WAVE」に収録されたビッグチューン。盟友でもあるUAと7年ぶりにタッグを組んだことで大きな話題を呼んだシングル。そもそもは1996年にUAのシングル「リズム」で大沢伸一がサウンドプロデュースを手掛けた過去があり、「リズム」は90年代を代表するR&Bナンバーとなりました。本作は当時、大沢が取り憑かれたように追求していた四つ打ちを直球で取り入れたハウスナンバーで、地を這う野性的なイーブンキックとリズム、そしてUAの激情あふれる歌声と完璧。これ以上、ドラマティックなハウスナンバーに出会うことはなかなかないかもしれません。

 

07.THE GLORY DAY – MALAWI ROCKS REMIX-/MISIA
(2000年4月19日リリース)

90年代の日本のR&Bシーンの地図を塗り替えたソウル・ディーヴァ。彼女の歌声、そして楽曲はハウス・ミュージックと親和性があり、当時、数々の楽曲がハウス界隈のクリエイターによってリミックスされ、オフィシャル12インチもリリースされていました。本作はオリジナルのゴスペル調の楽曲を四つ打ち仕様にリミックス。手掛けたのはDJのEMMAとサウンドクリエイターの川内タロウのユニット「MALAWI ROCKS(マラウィ・ロックス)」。耳馴染みのいいポップ・ハウスといった仕上がりで、徐々に高揚していく流れがたまりません。この曲がかると女子が嬉しそうに踊っていましたっけ。リミックス楽曲を収録した「MISIA REMIX 2000 LITTLE TOKYO」に収録。ちなみに、EMMAは東京のハウス・シーン興隆の立役者の一人で、ノンストップでライブミックスするMix CD「EMMA HOUSE」シリーズでもお馴染みです。

 

08.パラシューター/Folder
(1997年8月1日リリース)

もはや説明不要かと思われますが、いまをときめく三浦大知と満島ひかりを擁したキッズグループ、Folder(フォルダー)のファースト・シングル。ハウス・ミュージックの意匠を取り入れたJ-POP発キッズ・ハウスの名作ともいえましょう。三浦大知(当時9歳)のハイトーンヴォイスが縦横無尽に駆け巡り、ピアノのアタックと多彩なコーラスワークがとにかく印象的なサウンドメイク。低音をあげて爆音で聴くと、楽曲の真価がより発揮されます。作曲と編曲はのちに数多くのFolderの楽曲を手がけることになる小森田実によるもの。彼は同時期にSMAPの「SHAKE」「ダイナマイト」などでヒットを連作し、いずれの作品にも「小森節」ともいえる同じような手法が取り入れられていたりします。関係ないですが、個人的にはAKINA(宮里明那)オシでした。

 

09.深海 – Hi-ra Mix/東京女子流
(2016年8月31日リリース)

凝ったサウンドメイクで音楽ファンからの評価も高い、4人組の女性ダンス&ヴォーカルユニット、東京女子流の通算20枚目となるシングル。思いが届かなかった恋を深い深い海へと沈めようとする哀歌を、トロピカル・ハウス的なアプローチで聴かせます。トロピカル・ハウスとは爆発的に拡大したEDMシーンが飽和状態にある中で、新たに生まれた音楽ジャンルでBPMが110前後のいわゆるスロー・ハウス的なものです。美メロと緩やかに心地いいグルーヴを特徴とするEDMエッセンスを、J-POPのフィールドに違和感なく取り入れており、エレクトロニックでありながらも、オーガニックな肌触りをも感じてしまいます。彼女たちはこのEDM路線を「predawn」「water lily〜睡蓮〜」などでも踏襲させています。

 

10.SUNSHINE FEAT.BIRD/FreeTEMPO
(2007年9月5日リリース)

イタリアのレーベル「IRMA RECORDS」からデビューした経緯を持つ音楽プロデューサー・DJの半沢武志によるソロ・ユニット。普遍的なメロディを紡ぎつつ、様々な音楽性をクロスオーバーさせたクラブ・ミュージックを発信。本作はハウス・ミュージックが持つ「多幸感」に満ちあふれた1曲で、タイトルを踏襲した太陽のような輝きを放つ仕上がりに。ピアノの連打が印象的なピアノ・ハウスにbirdの歌声が声高らかに空に向かって伸びていく、ひたすらアッパーな構成。聴き終わる頃には元気をもらっていたりして。2011年にFreeTEMPOとしての活動を終了させ、現在は半沢武志名義で活動中とのことです。セカンドアルバム「SOUNDS」に収録。

 

いかがでしたでしょうか? ジャパニーズ・ハウスはまだまだたくさん「Spotify」に存在しますので、皆さんをアゲてくれるお気に入りのあの曲、この曲をぜひ見つけてくださいね。