現在公開中の「マッドマックス 怒りのデス・ロード 」は、40歳前後の映画ファンの間で話題になりまくっている映画。マッドマックスシリーズは、荒廃した近未来を舞台に、家族をなくした元警官の主人公マックスの戦いを描いたアクション作品です。1985年に公開された前作「マッドマックス サンダードーム」以来30年ぶりとなる本作は、シリーズを手がけてきた御年70歳のジョージ・ミラー監督による、ハイテンションかつパワフルで狂気に満ちた内容が人気を集めています。
同作品は、2Dや3Dの他、最新技術を駆使した「MediaMation MX4D」(以下MX4D)など様々な方式で上映されています。では、果たしてどのバージョンが最も楽しめるのでしょうか。そこで今回は、「MX4D版」、「IMAX版」、「ドルビーアトモス版」という、異なる3つのバージョンを劇場で見比べてみました。
座席が振動したり傾いたりするMX4D版は
映画というよりアトラクション!
まず初めに体験したのは“アトラクション型の映画鑑賞スタイル”が話題のMX4Dです。MX4Dとは、映像と連動して座席を振動させたり、風や水を座席に吹き付けたりするなど11種類の演出により五感を刺激し、映画の中に入りこんだような感覚が味わえるというもの。TOHOシネマズ新宿/六本木ヒルズ/ららぽーと富士見の3館がこのMX4Dを採用しています。同様のシステムとして、ユナイテッド・シネマ豊洲などで採用されている「4DX」という規格も存在しています。
映画の冒頭、主人公マックスが愛車「インターセプター」に飛び乗り、追っ手から逃れようと砂漠を疾走するシーンでは、エンジンの始動に合わせ座席が振動し、さらに画面の視点に合わせて座席が上下左右に傾くなど、いままで体験したことのない感覚を味わうことができ、初っ端からテンションMAX!
ストーリーが進行していくにつれ、シーンに合わせて水しぶきやら風がビュンビュン顔に吹き付けたり、座席の背面や足元で何かが触れる感触があったりと、様々な演出が行なわれます。ただし、敵の顔につばを吹きかけるシーンで、顔にプシャーッとミストが浴びせられるなど、映像のイメージとMX4Dの効果がちょっと合ってないのでは……という場面も多々あり、まだまだ改善の余地があると感じました。
スクリーンのサイズは、今回鑑賞した3つのシアターの中では最も小さく、映像自体の迫力は他に比べやや劣ります。また、料金が大人3400円(3Dメガネ代込み)と、通常料金1800円の倍近くなっているのもネックでしょう。しかし、それらを差し引いても、新感覚の鑑賞スタイルを1度体験してみる価値はあると思います。
IMAX版はとにかく迫力のある巨大スクリーンにぶっ飛ぶ!
続いて体験したのは、迫力の大画面がウリのIMAXです。IMAXシアターはこれまで、郊外型の大規模な劇場で多く採用されてきましたが、今回鑑賞したTOHOシネマズ新宿では、アクセスに便利な都心でIMAXの大画面を楽しむことができます。
シアター内の前方一面がほぼスクリーンという巨大な画面は、映像が視界に収まりきれないほどで、他とは一線を画す迫力と没入感を味わうことができます。また、スクリーンが大きいぶんスピーカーも大きくできるのか、音量も最も大きかったように感じました。
一方で、視界以上に広がる大画面のため、どうしてもスクリーン中心部に目がいってしまい、大量に登場するマッドな改造車やぶっ飛んだ外見の雑魚キャラたちなどの細部を目で追いかけきれない場面も多くありました。今回のマッドマックスは世界観が徹底して作りこまれているので、モブ役や背景などをじっくりと見るために何度も映画館に足を運ぶ人も続出しているようです。観るのが2度目、3度目という場合は、IMAX版以外を選択した方がいいでしょう。しかし、巨大スクリーンによる圧倒的迫力は一見の価値ありなので、とにかく迫力のある映像で映画を観たいという人にはIMAX版がオススメです。
ドルビーアトモス版で狂気のサウンドを堪能
最後は、2014年ごろから映画館にも取り入れられた最新の音響技術によるドルビーアトモス版です。ドルビーアトモスは、より進化したサラウンド音声を実現する技術ですが、音のクリアさや分離感などもこれまでとは違うクオリティになっていると感じました。
劇中で、主人公たちが車に乗って砂嵐に突入するシーンがあるのですが、MX4DやIMAXではその場面のBGMが地響きのような重低音に混じってしまい、「何か鳴っているな」という程度であまり意識がBGMに向かいません。しかしドルビーアトモス版では、雷鳴のようなホーンが嵐の中で鳴り響くのがしっかり聴き取れ、この世の終わりのような臨場感が見事に再現されていました。
また、主人公たちを車で追いかける敵の集団の中に、巨大なスピーカーを搭載し、走りながら乗っている太鼓隊やギターマンの演奏を大音量で再生するというクレイジーとしか言いようのない車が登場するのですが、その狂気のサウンドを一番楽しめたのもドルビーアトモス版でした。今回鑑賞したTOHOシネマズ六本木ではTCXスクリーンで上映していたこともあり、IMAXほどではありませんが、迫力のある大画面を楽しむこともできました。
今回鑑賞したバージョンはどれも甲乙つけ難いクオリティの高さでしたが、個人的にはMX4D版とIMAX版がイチオシです。これから夏に向け、「ジュラシック・ワールド 」や「ターミネーター: 新起動/ジェニシス 」、「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション 」など大作が目白押しとなっていますので、ぜひ劇場に足を運んで、最新の設備で映画を堪能してみてはいかがでしょうか。