独特な存在感から役者としても独自の地位を築いているミュージシャン・中村達也。そんな中村の最新出演作は、『ガキ帝国』『パッチギ!』など、社会からあぶれてしまったアウトサイダーたちに焦点をあててきた井筒和幸監督8年ぶりの新作『無頼』。今回は、初参加である井筒組の印象や役者という仕事、そして惜しくも昨年夭折した遠藤ミチロウさんについてなど多岐にわたって、話を伺った。
(撮影、構成:丸山剛史/執筆:宮地菊夫)
初めて参加した井筒組のインパクト
--このたび、映画『無頼』に主人公の兄・井藤 孝役で出演されたわけですが、井筒監督の作品は初めてですよね?
中村 出るのも初めてだし、実は井筒さんの作品をちゃんと観たこともなくて。
--じゃあ、イメージとしてはテレビで見る毒舌の人くらいの……。
中村 実はそれも見たことがない。だから噂だけ聞いて、ちょっと怖いんかなとか思ってたんだけど。
--最初に監督と顔を合わせたのは?
中村 いきなり現場で。最初、出演者がみんな集まってホン(台本)読みをしたんだけど、そのときは助監督とスタッフだけで監督はいなかったから。
--どうでした? 実際にお会いして。
中村 俺、ビビリだから、とにかく少し離れたとこにいて(笑)、「あぁ、監督いるわ」「いつ挨拶しに行ったらいいんだろ?」みたいなことを思ってたよね。
--ビビリとおっしゃいますけど、むしろ周りは中村さんに対して同じようなことを感じてたりするんじゃないかなと(笑)。
中村 なんかね、よくそう言われる(笑)。
--『BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4課』(14年)にゲスト(第7話)出演されたときの記事で、共演の感想を聞かれた小栗 旬さんが「『なんかヤバいヤツが来た!』っていう感じがしたんですよ」ってコメントしてましたね(笑)。
中村 俺、なんとなくのイメージで小栗 旬さんって細くて女の子みたいな人かなとか思ってたら、ガタイはいいわ、背は高いわで……格闘シーンがあったんだけど、殺陣が激しくてけっこうキツかったよ。
--近年だと『悪と仮面のルール』(18年)がかなり狂った役どころでした。アクションがない分、芝居を求められる部分が大きかったんじゃないかなと。
中村 あれはセリフが多くてねぇ。あのとき初めて、ちゃんと台本覚えなきゃって思った(一同笑)。
--俳優デビューから10年近く経ってやっと!(笑)
中村 まぁ、それまでそんなにセリフがなかったからね(笑)。あのころは本当に何にもわかってなかったというか、今でもそんな段階なんですよ、役者としては。やっぱ俺なんかさ、バンドをやってて役者は本職じゃねえしみたいな逃げ口上もできるんだけど、対峙する役者さんたちは本職だから。みなさん場数を踏んでて現場に慣れてる感じがするんだけど、その中に自分みたいなのがポッと入ると小さくなっちゃうというか……なんか現場にビビるみたいな感じはあるよね、やっぱ。
--場違い感みたいなことですか?
中村 うん、いつでもそんな感じ。どこに行っても。
--今回、『無頼』で演じられた役もヤクザということで端的にアウトローですけど、おそらく今までやってきた役の中で一番普通の人ですよね?
中村 そうだね、なんか普通の人だよね。弟思いの、いいお兄ちゃん。
--『涙そうそう』(06年)のヒロインの父親役より、よっぽど人として真っ当なんじゃないかなって(笑)。
中村 そうだね。あんなろくでなしじゃない(笑)。
--職業こそヤクザだけど、非常に人間味溢れる人物というか、地に足のついた人物かなと。そこは現実から飛躍した極端なキャラクターに比べて演じやすいものなんですか? それともリアルな分、逆に演じにくかったり?
中村 わりともう役者歴は長いけど、俺は場数が全然足りなくて。他の役者さんのインタビューを読んでると「役に入り込む」とかそういう話をしてたりするじゃない。俺は全然そんなことなくて、たとえば凶悪な感じだったら『レオン』のゲイリー・オールドマンかなとか、ホントそんな感じだから。でも、今回の役はそれも違うもんね。
--今回はすごくフラットに、ナチュラルに演じているように感じました。
中村 それはたぶん、井筒さんがそういうふうに撮ってくれたんだと思う。最初に現場に入ったのは、弟を刑務所に迎えに行ってアメ車に乗ってどこかに向かうシーンなんだけど、実はものすごく緊張してたんだよね。ガチガチに緊張して目が泳ぎまくってた(笑)。で、俺じゃないんだけど他の役者さんが「お兄さん、下北の劇団じゃないんだから」みたいなことを言われてて、「うわぁ、なんか絞られてんぞ」みたいな(一同笑)。
あと、台本をあまり読み込めてなかったのか、読んでも俺の頭脳じゃ理解し切れてなかったのか、一緒にいるヤツらの関係性を全然わかってないまま入っちゃったんだよね。それで、監督に「そこはお兄さん、こういう気分でしょ?」とか言われるまま演じて。「ここはこうでしょ。そうすると自然に肚が据わるでしょ?」「そうっすね」みたいな。よくわかってないのに(一同笑)。
--じゃあ、どの辺で掴めた感じだったんですか? 役のこととか監督が求めてる芝居の温度みたいなものは。
中村 まぁ、求められてるものはわからないというか、応えようともしてないというか。撮影中、とにかくずっと声の出が悪くてね。俺は緊張してるとそうなるんだけど。だから、これは相当ビビってるなってずっと思ってた。
--特に印象に残っている撮影時のエピソードは?
中村 ある日、前日がライブで、終わったあとにめちゃくちゃ飲みすぎちゃって、酒くさいまま現場に行ったとこがあるんですけど。
--それはどのシーンですか?
中村 まっちゃん(松本利夫)が小木(茂光)さんの傘下に入るときかな。
--松本さん演じる弟が小木さん演じる組長と舎弟杯を交わすシーンですね。弟の姿を誇らしげに見てるお兄さんの姿がちょいちょい映り込んでましたけど、よかったですね、とりあえずセリフのないシーンで(笑)。
中村 ボロボロだったもん。前日にテキーラを飲みまくって朝までゲロ吐いてたから、松本で(苦笑)。こないだ初めて映像を観たんだけど、まぁセーフだったかな。
--すごくいい顔で映ってました。そんなテンションだったと思えないくらい(笑)。
中村 じゃあ、そんなテンションのところをお見逃しなく!……って、こんな喋りでいいの? しなきゃよかったな、この話(一同笑)。
――個人的には、弟の服役先に組員一同で向かうバスのシーンも好きですけどね。ロッキード事件で捕まった田中角栄が保釈されたニュースを車内のテレビで見て、「でも飛行機は飛ばす、新潟まで高速は作る。この土建屋の親方、そんな悪人じゃねえよ」って言ってるところが。
中村 あのときはね、(柳)ゆり菜ちゃんが初めて近くにいたから、すごい緊張してたんだよ。ホントにもう(笑)。
--通路を挟んで隣の座席でしたね。
中村 そうなんですよ。俺、義理のお兄さんの役だから、わりとすごい位置に置かれちゃって、緊張してたね、とにかく。……って、だから、そんな話でいいのかな(一同笑)。
--他にも柳さんと一緒のシーンは多かったですよね。
中村 うん。「お兄さんも務めから帰ったばかりなんだから、体大事にしてくださいよ」みたいな。けっこう井筒さんが粘って撮ってたから、俺はあそこが一番時間かかったかな。琵琶湖の辺りで明るいうちから撮ってたんだけど、もう最後は寒くなってたもん、真っ暗になっちゃって。
--「男の仕事で命懸けられんのはヤクザしかねぇからな」っていう、わりとこの映画のキモと言うべきお兄さんのセリフもここで出てくるから、そこは監督的にもこだわりのシーンだったんじゃないでしょうか。
中村 そうだよね。あれでよかったんかなぁ……とか言っても、もうしょうがねぇけど。
--いや、よかったんじゃないですか? 達也さんの見た目と佇まいに、ヤンチャな弟を支える頼り甲斐のあるお兄さん感は出てた気がしますけど。
中村 おっ、うれしいぜ!(笑)
--あと、特に印象に残っているシーンというと?
中村 やっぱ病院で死ぬシーンかな。そこも井筒さんが近くに来て「もう痛くてしょうがない。声にならへん。よだれ垂らしてブワァーなってるわけや。なんかホント、ウゥーって感じでしょ? お兄さん」って言うから、「はい、わかりました」って言われるがままにやってみた感じだったんですけどね。
――その前に、自分の家族と弟の家族がみんな集まって、自宅で食事するシーンも重要ですよね。今で言う終活というか、病気で死を迎える前に、その準備と別れの挨拶を済ませる一連に、お兄さんの生き様が表れていて。
中村 そうだね。あのときは、自分の嫁さんと彼女と最新の彼女がいるわけだ。で、その人間関係もあまり飲み込めてなかったっていうのはあるんだけど。
――自分の奥さんと愛人に向かって、新しい愛人の看護婦に「礼を言ってくれ。最後まで看取ってもらうからな」って。あれはなかなか言えませんよ(笑)。
中村 お兄さん、完全におかしいでしょ(笑)。普通ぶってるけど。
――でも、そこも含めて男らしいというか。
中村 まぁ、お兄さんとしてはやり切ったんでしょうねってことだろうね。
――達也さん的にはどうなんですか? 同じく余命いくばくというシチュエーションになったとしたら。
中村 もう未練タラタラだよ。お兄さんは「こういうマスクもいらねえからな」って言ってたけど、俺は「もう絶対、呼吸器外すなよ」みたいな(笑)。まぁ、こればっかりは実際にそうなってみないとわかんないね。
ミュージシャンとして繰り広げる個と個の戦い
――ちょっと話題が映画のことから逸れますが、達也さんがアンプラグド・パンク・デュオ「TOUCH-ME」を組んでいた遠藤ミチロウさんが、2019年4月に癌で亡くなられてもうすぐ1年(※取材時)になります。
中村 あぁ、みっちゃんね。確か前の年の10月か11月に「膵臓取っちゃった」って電話がかかってきたんだけど、俺も返す言葉が見当たらなくて「膵臓取ったらどうすんのよ……」「おう」みたいな。それで無言が続いて、「でもさぁ」「しょうがねぇんだよ」「じゃあ、元気になったらまたやろうね」みたいな会話をして……。あの人、昔からそうなんだけど「絶対来んな」って言うの。「面会に来るな」って。だから会えなかったけど。
――ミチロウさんが亡くなられた2か月後、結成18年目にして初のアルバム(「TOUCH-ME Live at APIA40 2016-2018 ライブ」)がリリースされました。
中村 あれは、みっちゃんが「アルバムを出そう」つって、自分で曲を選んだんだけど、ちょっと間に合わなかったね。
――そもそもは達也さんが高校生のとき、4代目ドラムスとしてザ・スターリンに参加されたのがミチロウさんとの縁の始まりですよね。で、スターリン脱退からから18年近く経って、飛行機の中でばったり顔を合わせたのがきっかけでTOUCH-MEを結成することになったという。
中村 そうだよ。2001年に奄美行きの飛行機の中でばったり会って、「おう、みっちゃん」って言ったら「おう、達也。どこ行くの?」「これ、奄美行きでしょ」みたいな(一同笑)。
――しかし、それもすごい偶然ですよね。
中村 俺はそのとき30で、BLANKEY JET CITYを解散した次の年だったんだけど、バンドが終わって、離婚もして、慰謝料で金もなくなって、何もかも失くしちゃって(笑)。それで、マネージャーに「島にでも行って心静かに過ごしてこい」みたいなことを言われたから、ちょっとお腹が膨らんできた女房を連れて、携帯も何も全部置いて奄美に行ったんだけど、そしたら飛行機にミチロウさんが乗ってたもんで話しかけたら、ライブやるって言うから「じゃあ、俺行くよ」とか言って。
――そしたらアンコールでステージに上がってドラムを叩くことに。
中村 そう。そのときはもうライブに行くのもそんな乗り気じゃないっていうか、最初は女房だけ観に行ってたんだけど、やっぱし行こうかなと思ってフラッと顔を出したらまだやってて。そしたら、みっちゃんが「達也が来てるんでスターリン時代の曲をやります」とか言ってやったんだけど、俺がいたときにやってた曲は1曲もやらなかったからね。「俺やってねーだろ、その曲」って(一同笑)。
――アルバムでいうと『虫』のころですよね。達也さんがスターリンのライブでドラムを叩かれてたのは。
中村 そうそう、そのころだね。
――ミチロウさんと達也さんの関係性って、やっぱり兄貴と弟分みたいな感じだったんですか?
中村 兄貴というより、お母さん(一同笑)。
――ステージでは過激だけど、普段はすごく穏やかで知的な方なんですよね。
中村 本当に穏やか。で、インテリだからね。そんじょそこらのパンクスとはちょっと違うところをなぞって生きてたんじゃないかなと思うよ。
――還暦を過ぎてなお精力的にライブ活動を続けられて、ものすごいバイタリティの人だったなと。
中村 ばったり会った飛行機の中で「歳をとっていくってどういうことなんですか?」って手紙を書いて渡したら、「肉体と精神がバランス取れてくるから、これからが楽しみなんじゃない?」みたいなことを言われたんだよね。そのとき、みっちゃんはまだ51歳だったんだな。
――ミチロウさんはいろんなミュージシャンと組んで活動していましたが、達也さんも負けず劣らずかなり幅広いジャンルの方たちと組まれてますよね。
中村 俺は本当に無節操だからね。
――けっこう意外な相手もいて、この人とも一緒にやるんだ! って。
中村 自分でもそう思うよ(笑)。「斉藤和義ともやんの?」「やるよ」みたいな。
――MANNISH BOYS。ボーカル兼ギターとドラムのポジションがステージで完全に横並びなのがいいですよね。ドラムもフロントマン、みたいな。
中村 「もっと前にしていい?」って(笑)。まぁ、TOUCH-MEもそうなんだけど、とにかく前に出てやる、みたいな。
――そういうスタイルがやりやすい感じなんですか? そのつどサポートメンバーが入るにせよ、座組としてはサシの勝負みたいな。
中村 別にやりやすくはないけど、1対1が一番ダイレクトっていうか。なんかジャンルがあっての1対1っていうよりは、シンプルに和義くんと僕、ミチロウさんと私、スガダイローと俺、みたいな(個と個のぶつかり合い)。まぁ、それぞれ相手はパンクだったりフリージャズだったりするけど、俺は何もないもんな、別に。あ、元ブランキーの人、みたいな(笑)、わかりやすく言えば、そういうものはまだちょっと纏ってる感じはあるけど。一つのジャンルに縛られてると欲求不満になるというか、自分に飽きるから、いろんな相手とやれるのはありがたいよね。
――極端な例だと映像と即興演奏を合わせたTWIN TAILとか、逆にメジャーなところで布袋寅泰のバックバンドに参加されたり、音楽に対しての取り組みが自由というか、あまり形には囚われない感じが常にあって面白いなと思います。
中村 まぁ、何だかわかんないけどやってみちゃってるだけかもね! こういう言い方もアレだけど、そんなに好きでもないジャンルのちょっと口ずさむのが恥ずかしいような曲でも、ステージで一緒にやってるとウォーッ! ってなっちゃってるし(笑)。それは不思議だよなぁ(しみじみ)。だから、そういうのはあまり関係ないのかもしんない。
俳優業に対する外様感と、演じることへの意欲
――音楽に関しては自由闊達に活動されている印象ですが、俳優業についてはどういうスタンスで向き合われてる感じなんですか?
中村 結局ね、さっきも話した通り、役者として踏んだ場数が少ないし、現場に入るといつもちょっと外にいたりして役者の中にも入っていけないし……。子どものころに5、6回くらい転校してるんだけど、なんかそのときの気分に似てるな(笑)。
――キャリア的には10年選手だけど、まだちょっと外様な感じがあるわけですね。
中村 そうそう、外様だね。
――いつまで経っても慣れない?
中村 慣れねぇなぁ。『HiGH&LOW』の撮影のとき、お寺の境内で池の鯉を眺めながら黄昏てたら、加藤雅也さんが話しかけてきてくれて。で、雅也さんに「ちょっと役を演じるのが苦手で」って質問したら、「いんじゃないですか、そのままで」みたいな。あとは、「ヤクザってどういう感じなのかなぁ?」って自分の役どころについて訊いたら、「ヤクザっていうのは兄貴の男のカッコよさに惚れて、その道に入っちゃうじゃないですか」みたいな話をされて、「あ、そうかぁ」って思ったりなんかして(笑)。なかなか自分からは入っていけないけど、話しかけられるといろいろ質問したくなっちゃうというのはある。
――でも、そこは雅也さんの言う通り「そのままでいいんじゃないですか」が一つの正解というか。達也さん自身の佇まいや存在感、醸してる空気みたいなことが、キャスティングにおける一番のポイントなんじゃないかなって気はしますけど。
中村 そうなんだよね。だから、よく言われる言葉だけど、バンドを長い間やってきて纏ってきてしまったものがあるから、それで選ばれてるという。反面、それはわかっていながらも、俺もゲイリー・オールドマンみたいになりてぇ! 俺もホアキン・フェニックスみたいになりてぇ! みたいな(笑)。
――『野火』(15年)に出演された際のインタビューで、『バレット・バレエ』のときにもっとこうすればよかったとか芝居に対する後悔があったから、久々にまた塚本晋也監督と一緒にやれてうれしい、みたいなことを話されていましたけど、そういう意味では、慣れねえなぁと言いつつ、ちゃんと役者としての欲も出るわけですね。
中村 あのときあぁすりゃよかったとか、それは常にあるよ。『悪と仮面のルール』で使われなかったシーンがあって、最後に爆弾で爆死するんですよ。で、「それまでの時間をちょっと表現してみてください」って言われたから、どういう顔かなって考えて。俺はそんなに映画を何本も観てるわけじゃないけど、これは『時計仕掛けのオレンジ』だなと思ったの。
作家のおじさんの家にアレックスたちが侵入して、その妻を犯してしまうじゃない。で、捕まったアレックスが更生施設を出たあと、前に強盗に入った家に来ちゃって、妻を犯されたおじさんが途中で気づくわけ、こいつはあのときのあの若造だって。それで、アレックスがお風呂に入ってるときに、そのおじさんがこいつをどういう目に遭わせてやろうかみたいなすごい顔をしてて。だから、爆死する前にそういう顔をしてやろうと思ってたんだけど、いざ撮影となったらカメラの前でできなかったんですよ。
――そういう後悔というか、心残りみたいなものが……。
中村 ある! いつも恥ずかしくて枠を超えていけないっていうのはあるし、だけど自分が纏っているものを良しとされて呼ばれてるところに甘んじてるとこもあるし、今はまだその途中。今回の『無頼』で他の共演者はけっこう絞られてたんですよ。「ボケカス、おんどりゃ!」くらいの感じで(笑)。でも、みんな役者じゃん。だから、それが普通なのかなと思って「俺、あんなこと言われたことないんだけどさぁ」って訊いたら、「俺もあそこまで言われたことないっすよ」って。「俺、あんなこと言われたらビビって演技できなくなるよ」みたいな相談もしてたりしたんだけど。結局、俺は言われなかったけど、なんかそのレベルですよ、まだ。だから、今後もっと現場をくださいって感じ。
――まずは現場に慣れる(笑)。
中村 ちゃんと役者をやりたいという意欲はあるけど、やっぱしまだ外から来てるって感覚があって……自分でぶつかってく勇気がないかな、俺は。たとえばオーディションに自分で行くとか。まぁ、オーディションつったって、俺が行ったことあるの「イカ天」くらいだけど(一同笑)。結局、役者も職人ですよね。音楽でいうと、たとえばジャズならジャズに特化したことがいかにできるのか、みたいな。でも、俺はそういうことができるわけじゃないし、何でも中途半端だから。ただ、逆に中途半端だからいいのかもっていうのもあって。まぁ、見た目で判断されると俺に来るのはだいたい恐ろしい人の役ばっかで(一同笑)。しかもほぼ死にますからね。死亡率80パーセントみたいな(笑)。
--それこそ『週刊真木よう子』(08年)のとき(第2話ゲスト)なんて、ただ殺して殺されるだけの役でしたよね。
中村 そうだよ。あのとき俺、布袋さんのライブ(「HOTEI and The WANDERERS FUNKY PUNKY TOUR」にドラムで参加)が終わってから、そのまま現場に行って雪山を一晩中走って、それで真木よう子さんに会って「おぉ、カワイ子ちゃんがおるな」みたいな(笑)。演技に関しては、どうしたらいいんだろう? って感じで、ほとんど暴れるだけの役だし、ライブのテンションをそのまま現場でやったんだけど。あのころは演技がどうこういうレベルに達してなかったよね。まぁ、今も大して変わらんけど。
――何か今後やってみたい役はありますか?
中村 普通の学校の先生……『金八先生』の脇役とかやってみたいけどね。
――マジですか⁉︎ それはすごく意外ですね。
中村 そう? やらせてもらえるなら喜んでやるよ。
――では最後に、『無頼』の公開と俳優・中村達也の活躍に期待しているファンにメッセージを一言。
中村 ……………………………………………………………………。
――なければ大丈夫です!
中村 重たいよ、その質問(一同笑)。
【作品紹介】
無頼
監督:井筒和幸
出演:松本利夫(EXILE) 、柳ゆり菜、中村達也、ラサール石井、小木茂光、升毅 、木下ほうか
主題歌:泉谷しげる 「春夏秋冬〜無頼バージョン」