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2022/3/6 7:00

森崎博之インタビュー「僕にとって道具たちは、ギアというより相棒」

前後半に渡ってお届けしているTEAM NACSリーダー・森崎博之さんへのロングインタビュー。後編は、俳優・演劇人としてのみならず、北海道フードマイスターやごはんソムリエなどの資格も取得し、食育にも力を入れている森崎さんに、食べ物への思い、そして食品づくりや農作業に欠かせない道具への愛についてお話を伺いました。

 

森崎博之●もりさき・ひろゆき…1971年11月14日、北海道生まれ。1996年にTEAM NACSを結成。リーダーを務め、多くの公演で脚本・演出を担当。2008年からスタートした『森崎博之のあぐり王国北海道』(現・『あぐり王国北海道NEXT』/HBC)をきっかけに農業タレントとしても活躍中。現在、『ハナタレナックス』(HTB)に出演中。

 

【森崎博之さんの撮りおろし写真】

 

道具に感謝しながら、長く、いつまでも使っていく。今の時代は特にそうした気持ちが大事

 

──森崎さんはいまや北海道を中心に、全国規模で農業タレントとしても活躍されています。ご自身でも調味料を作ったり、農作業をされていることでも知られていますが、やはり道具なども揃えていらっしゃるんですか?

 

森崎 そんなに特別なものは持っていないですよ。ただ、少し前になるんですが、大豆ミンサーを買いました。味噌作りのために購入したのですが、これまではコーヒーミルのように茹でた大豆を手動でグルグルと回して小さく潰していたんです。それを電動にしたところ、びっくりするほどラクで! さっそく5kgの味噌を仕込みました。白米味噌、玄米味噌、麦味噌といろいろ麹を変えたりして。今は出来上がるのが楽しみです。

 

──味噌作りにはどのような工程が必要なんでしょう?

 

森崎 いろんな作り方がありますが、どれも簡単で、我が家では大豆と塩だけで1年間、常温で熟成させます。今、食卓で食べているのは一昨年に仕込んだもの。旨味爆発でとんでもなく美味しい味噌が出来上がっています。昨年の舞台(『マスターピース』)でも、稽古で東京にいる間や地方公演の時は外食を控えていましたから、キッチンのあるマンスリーマンションを借りて、自前の味噌を使って自炊をしていました。これが本当に美味しくて。皆さんにも飲んでほしいぐらいです!

 

──そのうち、森崎さんが公演中のケータリングまで担当しそうですね(笑)。

 

森崎 ははははは! そうなったら、メンバー全員がお味噌汁を飲み干すまで近くで監視してますよ。「おい、音尾(琢真)、お前最後まで飲んでないだろ!」って(笑)。

 

──(笑)。味噌作りはいつ頃からされているのでしょう?

 

森崎 もう、10年ぐらいになります。特に大きなきっかけがあったわけではないんです。うちは昔から、妻が野いちごでジャムを作ったり、祖父の家でもハラペーニョを作っていて、それを焼いたお肉に乗せて食べたりと、いろんなものを家庭で作っていましたから。そもそも食べることが大好きで、それが講じて、自分で作ろうというふうになっていったんですよね。

 

──今、お味噌以外で作ろうと思っているものはありますか?

 

森崎 醤油に少し興味があります。

 

──醤油って家庭で作れるものなんですか!?

 

森崎 作れます。大抵の調味料は作れますから。だって、昔はみんな自分の家で作っていたわけですしね。もちろん、たくさん作ろうとすれば、それなりの場所や道具が必要になってきますが、基本的には大豆と塩だけでギューッとプレスしていけばできます。あと、これは余談ですが、醤油づくりの際に出る大豆のカスって、本来は牛のエサだったんです。でも、それに塩酸をふりかけて、無理やりもう一度旨味を出したものをたんぱく加水分解物といい、今、世にあふれている加工食品の多くにこれが使われているんです。だから、食べていると喉が渇くんですよね。そうやって食品の裏側を知ってしまうと、自分が安全だと思うものを口にするには自分で作るしかないわけです。

 

──確かにそうですね。

 

森崎 できれば、家にある調味料はすべて手作りのものにしたいなと思っています。また、調味料以外にも作りたいものはたくさんあって。次に挑戦しようと思っているのが納豆です。

 

──大豆ばかりですが、何か理由があるんですか?

 

森崎 いえ、特にはないです(笑)。ただ、北海道は大豆の生産量1位ですし、いい大豆がすぐ手に入るからというのもあります。納豆作りも本当に簡単ですよ。市販の納豆を買ってきて、透明のフィルムに付着している納豆菌と煮た豆を一緒に置いておくだけでできますから。納豆の菌というのはものすごく繁殖が強く、常温で1日置いておくとネバネバになります。それもあって、僕は日本酒作りの取材に伺う際、2日前から納豆を食べないようにしているんです。もし納豆菌が体のどこかに付いた状態で酒蔵に行くと、お酒の酵母を壊してしまいますから。そうやっていろんなことを知っていくと、“面白いなぁ。それなら自分でも作ってみようかな”という気持ちになるんですよね。

 

──そういえば、最近はまわりでもベランダなどでちょっとした家庭菜園をする人が増えてきています。

 

森崎 そうでしょ? やっぱり、そうやって人はみんな土に帰っていくわけです(笑)。それに、自分で農作物を作ると、そこにストーリーが生まれますからね。例えば、「これは自分が世話して作ったトマトだ」とか、子どもたちと「このトマトが大きくなったら、一緒に収穫しようね」といった約束ができたり。そうしたストーリーがあると、まだ完熟していないトマトだろうが、とんでもなく美味しく感じる。自分で育てたものには、どんなものでも敵わないんです。

 

──なるほど。でも、どう育てていいのかが分からず、始めようかどうかで躊躇している人も多いと思います。

 

森崎 そういう方は、まず簡単なものから始めてみるといいと思いますよ。それこそトマトなんて、ほぼ失敗しませんから。トマトって実は雑草の種類なんです。ほかの植物と一緒に植えると、その植物を殺しかねないぐらいの生命力がある。農家さんが毎日トマトのビニールハウスに行って手入れをするのは、脇芽と言われる新芽を取り除くためで、それをしないと、たった一本でジャングルみたいになってしまうんです。すると、たくさん出来る代わりに1個1個のトマトが大きく育たず、栄養分も少なくなる。ミニトマトでも、うまくいけば1株で200から300個ほど取れる場合がありますからね。水やりも週に一回程度で大丈夫ですし、本当に簡単です。

 

──そうした話を伺うと、育っていく過程を見ているのも楽しそうです。

 

森崎 楽しいですし、それにすごく愛おしくなります(笑)。また、同時に道具も大事に扱うようになります。僕にとって道具って、“ギア”というより“相棒”みたいな感じなんです。心を込めて使うので、1つひとつへの思いも強い。大豆ミンサーを買う時も、夫婦で何度も会議をしました。結構な値段のするものですから、「ウチは一体いくらの味噌を作るつもりなんだ!?」って奥さんに言われたりして(笑)。でもね、我が家ではこれからも一生、味噌を作り続けていこうと思っているわけです。ただ、年齢を重ねていくにつれて、そのうち手動で回す力もなくなっていく。そうなってしまってから電動の大豆ミンサーを購入するより、今買っておいたほうがコストパフォーマンス的にはいいんじゃないかと。それもあって、思い切って購入したんです。正直、1年に1回しか使わないものですから、贅沢品とも言えます。でも、憧れて買ったものですから、そこには愛がありますし、本当に、大事に大事に使っていこうと心に決めていますね。道具やモノに感謝しながら、1つのものを長く、いつまでも使っていく。今の時代は特にそうした気持ちが大事だと思いますね。

 

 

TEAM NACS『LOOSER2022』
2022年3月6日(日)19時より配信スタート

(SATFF&CAST)
脚本:⽥中眞⼀ 監督:木村ひさし
出演:TEAM NACS(森崎博之、安田 顕、戸次重幸、大泉 洋、音尾琢真)

チケット料金:5000円(税込)
配信:LIVE SHIP、GLOBE CODING(ローソン・ぴあ・イープラスにて販売)
詳しくはこちらから https://www.teamnacs.com/stage.php

(STORY)
平凡な日々を送るシゲは、自分にできることを模索していたある日、謎の男から渡された薬で過去へとタイムスリップしてしまう。行き着いたその先は、なんと新選組がその名を轟かせ始めた幕末。最初は厳しい隊律に翻弄されていたシゲだったが、やがて時代を切り拓くために命がけで戦う志士たちの姿に、自身の中で熱い思いが芽生え始めていく。

 

撮影/映美 取材・文/倉田モトキ ヘアメイク/白石義人(ima.) スタイリスト/小林洋治郎(Yolken) 衣装協力/BARENA、08circus