連載開始から20年経った今もなお世界中で愛されて続けている大ベストセラーコミック「鋼の錬金術師」の最終章が「復讐者スカ―/最後の錬成」の二部作で実写映画化。まずは「鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカ―」が5月20日より公開する。前作から引き続きエドワード・エルリックを演じる山田涼介さんと、リン・ヤオ&グリード役で今作から参加の渡邊圭祐さんがインタビューに登場。「復讐者スカー」では協力者とも言える関係になるふたりだけに仲の良さが伝わる楽しい話を聞かせてくれた。
エンターテイメント作品としてみなさんに純粋に楽しんでいただけたらうれしいです
──山田さんは前作に引き続きエドワード/エルリックを、渡邊さんは「復讐者スカー」から登場するリン・ヤオを演じていらっしゃいます。
山田 完結編二部作で僕は3役を演じています。原作ではすごく筋肉質に描かれている役も演じることになるので、半年間ぐらいずっと筋トレをして撮影に挑みました。
渡邊 もともと原作が好きでしたし、原作ファーストで考えるということを大切にしたいと思い、マンガをもう一度読んでアニメも観ました。原作に描かれている温度感や表情を大切に演じることを意識しました。
──お二人は今回が初共演となりますが、一緒に演技をした感想をお聞かせください。
山田 リン・ヤオは、ひょうきんなんだけど一本芯が通ったキャラクターなんです。いつもヘラヘラしているんだけど、やる時はやる……自分の国のために己を捧げるような男らしいところもあって、そのメリハリがすごく大事な役柄だと思っていました。SNSなどで見るナベちゃんはクールな印象が強かったので、どうやって演じるんだろうと思っていたら、普段がひょうきんな人だったのでピッタリだなって思いました。そしてお芝居のキャッチボールもしやすい俳優さんでした。
渡邊 山田くんはもう“エド”ですよね。一作目でもそう思いましたし、今回はより磨きがかかったエドになったというか。個人的にはすごく気合を感じました。エドらしく非常にフランクな雰囲気なんですが、シーンごとに直前でまとう雰囲気が変わるんです。重いシーンなら内側にある気持ちがだんだん外側に出てくる。それは役者としての先輩から学ぶところではありました。
今思えば、大変そうに見えないシーンが大変だった気がします
──アクションシーンも見どころのひとつですが、撮影が大変だったシーンはありましたか?
山田 リンがランファン役の黒島結菜さんを担いでいるシーンがあるでしょ? あれはどうやって撮影したの?
渡邊 ほとんど実際に担いで撮りました。
山田 担ぎながら芝居するのって相当大変だと思うんです。これキツかったろうなって思いながら映画を観てたんだけど。
渡邊 黒島さんは本当に軽いので、苦じゃないと言うとウソになるけど……あのシーンの後で舘ひろしさんとのアクションシーンを撮ったんです。
山田 オレ、撮影を観に行ったよね。
渡邊 その時に、一番恥ずかしかったのが、舘さん演じるブラッドレイ大総統と対峙して、リンにパチッとスイッチが入ってランファンを担いだまま立ち上がるシーンがあったんだけど、僕、立ち上がれなかったんです(笑)。
山田 あははは(笑)。
渡邊 足がぷるぷるしちゃって(笑)。僕らは刀を持ってそのまま戦うことが多かったけど、山田くんはCGありきで戦う瞬間が多いからそのための想像力が大変だっただろうなって、映画を観て思いました。どうでした?
山田 「復讐者スカー」の最後にエドとリンがあるものと対峙するシーンがあるんですけど、本当に何もない場所で、2人で「うわぁ」「うえええっ」ってリアクションするシーンの撮影は大変でした。今思えば、大変そうに見えないシーンが大変だった気がします。この作品では、地味なアクションや軽々とやっているように見えることが大変だったりするんですよね。
空き時間はディーンさんがディーン塾を開いてボクシングも始めるし
──今でも記憶に残っている撮影中のエピソードを教えてください。
山田 待ち時間のエピソードになっちゃうけど、まっけん(新田真剣佑)もディーン(・フジオカ)さん、山本耕史さんもみんな筋トレ好きなんですよ。ナベちゃんはシュッとしたタイプだから「オレも筋肉つけたい!」って筋トレに交ざるんですけど、本当に何もできなくて!!(笑) かわいらしい一面をたくさん見たので、世の女性たちがキュン♡ とする渡邊圭祐の魅力はこれなんだなって思いました。
渡邊 違うんです!! 僕は撮影に入るまでに体重を10kg増やしたんです。
山田 そうだよね。オレはあの状態がナベちゃんのデフォルトだったから、今は痩せたよね?
渡邊 また10kg減った状態に戻ってるから。当時は筋トレして体重を増やして「よっしゃ!! これは取材で言ってやろう」と思っていたんです。でも筋肉バカしかいない現場で(笑)。お茶の時間はほぼプロテインを飲む! みたいな人たちばかりでした。
山田 空き時間はディーンさんがディーン塾を開いてボクシングも始めるし。めちゃくちゃな現場だったよね(笑)。
渡邊 体づくりをしていたからあの頃は山田くんも腕が太かったですよね。この顔にあの筋肉はついてちゃいけないです!
山田 もう元に戻りましたけどね(笑)。
──お互いから見たこの映画の見どころは?
山田 ひょうきんで一本芯が通っているリン・ヤオもかっこいいけど、グリードが入ったバージョンのリンもめっちゃかっこいいんです。「誰ですか?」って思うくらい。それこそ身にまとう空気感が変わっていたし、「復讐者スカー」と「最後の錬成」で、まったく違う表情の渡邊圭祐を見せているので、個人的には振り幅の広い人だなって印象でした。
渡邊 エドのシーンって「ここを見て!」ってつまめないんですよね。ただ山田くんがリンを普段はひょうきんと言っていましたけど、エドも普段は抜けているというか(笑)。重みのあるシーンの時に、そこからの温度の切り替えが見ていて気持ちがいいんです。「そうだよね、ここは怒るよね」ってところも繊細に演じていたので、言えるとしたらエドの機微かなって思います。原作の世界観をそのまま体現している人だと思うので、そこを見ていただければ「ハガレン」ファンも山田涼介ファンにも刺さるんじゃないかなって思います。
山田 エドとしては全部! としか言えないです(笑) 座長として立たせていただいていますし、完結編ではキャラクターのバックグラウンドを色濃く出しているので感情移入しやすいと思うんです。「鋼の錬金術師」の良さって、人の心がどうなっていくかというヒューマンストーリーの部分も大きいと思うので、それを生身の人間が演じることによって出せる生々しさみたいなものが出ているんじゃないかと思います。そしてエンターテイメント作品としてみなさんに純粋に楽しんでいただけたらうれしいです。
スターってこういうことかと思いました(笑)
──撮影に入る前の印象と、実際に共演してみてお互いの印象は変わりましたか?
山田 ナベちゃんは背が高くて見た目もイケメンですし、SNSなどを見てもクールな印象があったんです。でも実際はおバカちゃんでめちゃくちゃおもしろい(笑)。わりと早めに意気投合しました。
渡邊 同年代だしね(笑)。
山田 なので共演してみるとおもしろい人という印象が強くなりました。現場でダンスの振付を覚えたかったのか踊りたかったのか……。
渡邊 踊りたかったし覚えたかった(笑)。
山田 現場でやってくれたんですけど、めっちゃダンスが下手なんです。その印象が強いのかもなー。
──渡邊さんから見た山田さんの印象は?
渡邊 僕の中に顔だけで判断した「20代の三大イケメン」というのがありまして、山田くんはその中のひとりでした。
山田 そんなのあるんだ!?(笑)
渡邊 ただバラエティ番組に出演している姿も見ているので、なんとなくこんな人なんだろうなって思って現場に入ったんですが、そのまんまでした。かわいらしい、おバカさんで(笑)。そしてとにかく接しやすいんです。優しいし、フランクだし、でも男前のところもあって。ちょうど撮影中に僕の誕生日があったのですが、何も言ってないのに僕の目の前にドンッ!! といいところの紙袋が出てきまして。
山田 いいところの紙袋って(笑)。
渡邊 そんなところ行く時間あった? ってスケジュールだったのに。「何これ?」って聞いたら「誕生日でしょ」ってちょっとかっこつけてました。
山田 やかましい!(笑)
渡邊 中身は財布でした。ちゃんと使わせていただいています。僕は財布が欲しいなんて言ってなかったけど、ちょうどそのブランドの財布を探していた時期だったんです。
山田 マジで!?
渡邊 すごいんですよ。スターってこういうことかと思いました(笑)。
山田 あははは(笑)。財布ってもらって困らないものじゃないですか。そして人から財布をもらうと良いっていう縁起物でもあるから。僕としては気に入ったら使ってくれればいいなくらいの気持ちでした。
渡邊 ほら、男前ですよ!
鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカ―/最後の錬成
5月20日(金)「復讐者スカ―」、6月24日(金)「最後の錬成」完結編二部作連続公開!!
【映画「鋼の錬金術師 完結編」よりシーン写真】
(STAFF&CAST)
原作:荒川 弘「鋼の錬金術師」(「ガンガンコミック」スクウェア・エニックス刊)
監督:曽根文彦
脚本:曽根文彦、宮本武史
出演:山田涼介、本田 翼、ディーン・フジオカ
蓮佛美沙子、本郷奏多/黒島結菜、渡邊圭祐
寺田 心、内山信二、大貫勇輔、ロン・モンロウ、水石亜飛夢
奥貫 薫、高橋 努、堀内敬子、丸山智己、遼河はるひ、平岡祐太
山田裕貴、麿 赤兒、大和田伸也
舘ひろし(特別出演)
藤木直人/山本耕史/筧 利夫
杉本哲太、栗山千明、風吹ジュン
佐藤隆太、仲間由紀恵 ・ 新田真剣佑
内野聖陽
(STORY)
国家錬金術師ばかりを狙った連続殺人事件が起きる中央(セントラル)を訪れたエドとアル。犯人は正体不明ながら、額に十字傷を持つことから”傷の男 スカー と呼ばれていた。兄弟も命を狙われ応戦するものの、圧倒的な強さの前に機械鎧 オートメイル を破壊され、絶体絶命となる。果たして二人はこの危機を乗り越え、元の身体を取り戻すことができるのだろうか。隠されたこの国の秘密と 約束の日 、そしてエドとアルの父親の過去。幾重にも重なる謎と真実が解き明かされ、物語は圧巻のフィナーレへ。最後に兄弟が出した答えとは?
(C)2022 荒川弘 /SQUARE ENIX (C)2022 映画「鋼の錬金術師 2&3」製作委員会
取材・文/佐久間裕子