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2022/6/24 19:30

内野聖陽「うそのない芝居をしていれば、芝居の世界にひきずり込める」映画「鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成」

『鋼の錬金術師 完結編』の後編となる『最後の錬成』がついに完成、6月24日(金)より全国公開される。後編のキーマンとなるのが内野聖陽さん演じるヴァン・ホーエンハイム。この作品で内野さんは、エルリック兄弟の最大の敵となる“お父様”も演じている。この作品ならではのグリーンバックの撮影で、「演技ってこういうことだよな」と改めて感じという。

内野聖陽●うちの・せいよう…1968年9月16日生まれ、神奈川県出身。映画やドラマ、舞台と幅広く活躍。映画『ホムンクルス』、『劇場版 きのう何食べた?』など。6月24日(金)から東京、大阪、福岡、愛知で上演される舞台「M. バタフライ」にも出演。

【内野聖陽さんの撮りおろし写真】

 

ホーヘンハイムは家族愛や息子たちへの愛情を大切にしました

──「鋼の錬金術師 完結編」2作への出演を決めた経緯から教えてください。

 

内野 曽利文彦監督から絶大なラブコールを頂きまして(笑)。「“お父様”が全ての始まりであり、フラスコの中の小人にたぶらかされたホーエンハイムという男が、人類や家族、大切なものを守るために戦うという構図には内野さんがどうしても必要です」と言ってくださいまして(笑)。「そうですか、それならば……」と出演することを決めました。そしてCGをどうやって作っていくかを監督のラボで事細かに説明してくださったんです。そのクオリティーがあまりにも高くて、「これはすごいな、日本のCGの技術もここまできたんだ」と思い、それならばホーエンハイムとお父様という役を頑張らせていただきますということになりました。

 

──「鋼の錬金術師」は世界中で読まれている人気マンガが原作ですが、どんな印象を持っていらっしゃいましたか?

 

内野 まず「鋼の錬金術師」というマンガを読んだことはありませんでした(笑)。友達や若い子に聞くと、「『ハガレン』に出るんですか!?」という反応だったし、僕の甥っ子もよく知っていたんですが、僕自身は読んだことがなくて。そこで1巻から27巻まで全部読みました。ただ一度読んだぐらいでは分からないところも多く、監督と何度もコミュケーションを取りました。

──確かに難しい内容ではあります。

 

内野 そう、子供たちが読むマンガという枠には収まりきらない世界観の作品だなって感じました。扱っているテーマが、戦いと平和、人種問題と、今の時代にビビッとハマってしまうような内容で、メッセージ性の強い長編マンガだなと。撮影していたころは、まだ現在の社会情勢とは違いましたけどね。

 

──今回はホーエンハイムと“お父様”の二役を演じていらっしゃいますが、二役を演じる上で大切にしたことを教えてください。

 

内野 “お父様”は得体の知れない野望を持ち、自分が神のようになりたいと思っているキャラクターですよね。感情を1つひとつホムンクルスに明け渡しているので、感情を持たないような人物として、デーンッと存在していなければならないのは難しかったです。逆にホーエンハイムは何百年も生きているけれど、とても人間的だと思いました。妻のトリシャが大好きで、妻の遺言を聞いて息子の前でも泣いてしまうようなかわいいところもあって。息子たちには悲しい思いをさせたという深い負い目を持っている。それでも自分は人間として、家族と一緒に普通に生きたいんだという思いに目覚め、悪に対峙していくことになります。なので家族愛や息子たちへの愛情を大切にしました。そしていつもかっこいいお父さんではなく、抜けているところがあるのもホーエンハイムの魅力ですね。与えられた二役は、外見は似ているけれど、内部が全く違うので、それぞれの役柄を捉えやすかったです。すごく分かりやすく演じ分けができましたね。

台本から喚起されたイメージの中で成り立っているものだよねって気づかせてくれた

──ホーエンハイムのビジュアルを原作に寄せることは意識されましたか?

 

内野 “寄せる”というか、“頂く”というか。まあ結局は内野の顔で、内野の体形で勝負するしかないんですけど、そこに原作のエッセンスを盛り込みたいじゃないですか(笑)。この作品のキャラクターは多国籍だから、原作ファンの方が実写化を心配する気持ちも分かるんですよ。ホーエンハイムを演じるにあたり、僕にもヨーロッパの人の雰囲気が出せるかなって気持ちはありましたから。ただ僕は演劇でいろんな翻訳劇をやり、恥ずかしげもなくアメリカ、フランス、いろんな国籍の人を演じてきました。確かに日本人顔だけど、内部を真実で表現できていれば、違和感なく受け入れてもらえるんじゃないかと。「内野さん金髪だ!」って最初は違和感を持つかもしれないけど、うそのない芝居をしていれば、芝居の世界にひきずり込めるなって自信はありました。スタッフさんも優秀ですからね。僕の顔に似合うカツラやメガネを用意してくれて。それでなんとか乗り越えられたと思います。ただ、衣装に関してはいろんなものを着てきたので、着こなし上手にはなっているかもですね(笑)。

 

──『最後の錬成』はCGを多用しているため、ほとんどグリーンバックでの撮影だったそうですが、現場で新に気づいたことなどはありましたか?

 

内野 普段の映像の現場は、ロケに行けばその場所の環境、セットなら美術さんが作り出した環境……そういった周りの環境に支えられているんだと感じました。僕は演劇畑出身なので、演劇の場合は稽古場には何もなくて、そこで人間同士の関係性を深めながら役を構築していくことになります。でも映像の場合は、背景も含めて大事な表現要素じゃないですか。撮影現場が全部“ミドリ”の日々が続くと、自分や相手の役者さんが抱いているイメージ、監督が作り出すイメージ、そして原作から引っぱってくるイメージ……それくらいしか拠り所がないんです。逆に演技や自分の想像力に集中できる気はしました。二役が対決する場面でも自分が持ち寄ったイメージで対峙できるので面白かったですね。

 

──原点回帰のような感覚もありましたか?

 

内野 原点回帰というか、そうだよなと。本来、演技って自分が台本から喚起されたイメージや監督や共演者のイメージのすり合わせの中で成り立っているものだよねって気づかせてくれたところはあります。あとは監督のCGの世界観にうまくはまってくれるだろうかと。映画が完成して初めて「こんなスペクタルだったのか!!」って思いました。それも面白い体験でしたね。

山田涼介さんはすごく中性的な魅力がある俳優

──山田さん演じるエドワードとの噛み合っていない親子のやりとりも面白かったです。山田さんとの共演はいかがでしたか?

 

内野 山田さんは……いいですねぇ(笑)。どう親子らしい感じを出すかみたいなことを話さず、すぐに親子の関係に入れた気がします。僕は前作を見て、山田さんの作ったエドというのが分かっていたので、苦労することなくスッとホーエンハイムとエドになれました。彼はCGでの映画作りに慣れているし、きちんと背景の中に入り込めるというか……そこに添い遂げられるという確信を持っていらっしゃったので、頼もしい感じがしました。

 

──『最後の錬成』の山田さんは、若き日のホーエンハイムを演じるためにほくろをつけられていたとか。

 

内野 そう、ほくろもつけていただいて(笑)。僕はあの場面の山田さんもとても好きです。横顔のふとした表情とかとても魅力的ですよね。

 

──実際に共演して感じた山田さんの俳優としての魅力はどんなところですか?

 

内野 特に思ったんですけど、すごく中性的な魅力がある方だなって。ボーイッシュだけど、どこか女性っぽいニュアンスもすごくあるんですよね。そこが素敵でしたね。製作報告イベントの時にピアスをつけていて、かわいいぞって思いました(笑)。

 

──ではここからは「モノ」に関するお話になります。撮影現場に必ず持っていくモノはありますか?

 

内野 僕は汗かきなので、100均のうちわが手放せないですね。最近はハンディーの扇風機も使います。秋でも冬でも暑くなったら、100均のうちわと扇風機みたいな。

 

──冬も必要なんですね。

 

内野 スタジオによっては、そしてシーンによっては、熱量がガッと上がって、汗がワッと出てきたりするので、必ず持っていきます。あとはヨガマットです。

 

──え、ヨガをなさるんですか?

 

内野 違う、違う(笑)。ストレッチのために必ず持っていくアイテムです。ロケ先でヨガマットを広げてストレッチしたりしますよ。

──撮影の合間など、ちょっとした空き時間に気分転換になる「モノ」はありますか?

 

内野 時々、タブレットでマンガを読みます。仕事に関係ない怖いマンガとかね。「富江」とか……。

 

──伊藤潤二さんですね。ホラーだけど面白いですよね。

 

内野 そう、伊藤潤二さん! クセになりますよね(笑)。最近、ハマって電子マンガを何冊か買っちゃいました。

 

 

(C)2022 荒川弘 /SQUARE ENIX (C)2022 映画「鋼の錬金術師 2&3」製作委員会

『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカ―/最後の錬成』

『復讐者スカ―』大ヒット公開中、6月24日(金)『最後の錬成』完結編二部作連続公開!!

【映画「鋼の錬金術師 完結編/最後の錬成」よりシーン写真】

(STAFF&CAST)
原作:荒川 弘「鋼の錬金術師」(「ガンガンコミック」スクウェア・エニックス刊)
監督:曽根文彦
脚本:曽根文彦、宮本武史
出演:山田涼介、本田 翼、ディーン・フジオカ
蓮佛美沙子、本郷奏多/黒島結菜、渡邊圭祐
寺田 心、内山信二、大貫勇輔、ロン・モンロウ、水石亜飛夢
奥貫 薫、高橋 努、堀内敬子、丸山智己、遼河はるひ、平岡祐太
山田裕貴、麿 赤兒、大和田伸也
舘ひろし(特別出演)
藤木直人/山本耕史/筧 利夫
杉本哲太、栗山千明、風吹ジュン
佐藤隆太、仲間由紀恵 ・ 新田真剣佑
内野聖陽

(STORY)
国家中枢には国民の魂と引き換えに完全な存在になろうと企てる最大の敵、ホムンクルスたちの生みの親”お父様”が潜んでいた。エドとアルと、マスタングたち、賢者の石を求めるシンからの来訪者は、共闘しこの陰謀を阻止できるのか?全ての鍵を握る兄弟の父親の正体とは?“約束の日”とは?残された時間はあとわずか。
求め続けた身体と引き換えに兄弟が出した最後の答えとは? 伝説の最終話まで描き切った堂々の完結!

オフィシャルサイト:hagarenmovie.jp

(C)2022 荒川弘 /SQUARE ENIX (C)2022 映画「鋼の錬金術師 2&3」製作委員会

 

撮影/映美 取材・文/佐久間裕子