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2022/11/1 6:30

伊原六花「とにかく四股を仕上げないとと思って、意識して鏡の前で練習しました」ドラマ『シコふんじゃった!』

ディズニープラスで配信中のドラマ『シコふんじゃった!』でヒロインを演じている伊原六花さん。部員が集まらない大学の相撲部で、たった1人で頑張ってきた主将・大庭穂香を演じています。スーッと足が伸びた美しい四股、かわいらしい津軽弁など、事前準備も多かったという今作について、楽しいお話をたくさん聞かせてくれました。

伊原六花●いはら・りっか…1999年6月2日生まれ。大阪府出身。2017年、大阪府立登美丘高校ダンス部のキャプテンとして「バブリーダンス」で話題を集める。2018年、高校卒業後に芸能活動を開始。連続テレビ小説『なつぞら』などのドラマや、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』、『夜の女たち』などに出演。公式HPTwitterInstagramYouTube

 

【伊原六花さん撮り下ろし写真】

1つのことをやり続けている人ってかっこいいなって思った

──相撲女子は世の中ではまだまだ馴染みが薄いと思いますが、相撲部の女子主将という役柄を聞いたときはどう思いましたか。

 

伊原 私はスポーツや体を動かすことが好きなので、また違うスポーツに取り組めるのはうれしいという感覚がありました。ただ馴染みがないというのはそのとおりで、この役について周りの人に話すと「え、マネージャー役じゃなくて相撲するの!?」という反応で。まだまだ日本でも女子が相撲をするということはあまり知られていないんだなって思いました。女子相撲のイベントに行って実際に見ると、男性のダイナミックなぶつかりとはまた違い、女子はテクニックを使って、スピードのある相撲をしていたので、ドラマの中でもその魅力が見せられたらいいなと思って燃えました。

 

──美しい四股や津軽弁と、撮影前に準備することが多かったのではないかと思います。事前にどんな練習をされたのか教えてください。

 

伊原 撮影が始まる2か月前から相撲の稽古を始めました。最初に片島(章三)監督から「なにより四股をきれいにしてください」というオーダーを受けていたので、とにかく四股を仕上げないとと思って、意識して鏡の前で練習したりしました。津軽弁は事前に音声をいただきましたが、私が演じた大庭穂香は上京して今は東京に住んでいるので、どこまで標準語と津軽弁をミックスにするか、撮影が始まってから監督と方言指導の先生とお話しながら決めていきました。方言の音はその場で教えてもらうことが多かったです。最初は津軽弁は高いハードルになるかもと思いましたが、意外とすぐにこの話し方をすれば穂香になるという感じがつかめたのでやりやすかったです。

筋肉と脂肪も付けて、最終的には7kgぐらい増やしました

──劇中では下半身がドッシリした感じに見えました。相撲をしている女子としての体作りもされたのでしょうか。

 

伊原 初めて役のために体作りをしました。最初は腕立て伏せもできないくらいひょろひょろだったんです(笑)。さすがに腕立て伏せもできないのはダメだなと思って、週3の相撲稽古にプラスして、週2でトレーニングに行って、最後はベンチプレスを上げるようになっていました。そうやって筋肉と脂肪も付けて、最終的には7kgぐらい増やしましたね。

 

──相撲は股割りをしたり、柔軟性が必要とされるスポーツだと思いますが、ダンスの経験が相撲に活かされた部分はありましたか。

 

伊原 ダンス部も体幹を鍛える練習が多かったので、役に立ちました。そのおかげで、わりと最初からよたよたせずに四股を踏むことができたのかなって思います。足をどこまで上げたらどう見えるかということも感覚的に想像できたので、「ここまで上げたいな」という目標に近づけるように練習することができました。

 

──スッと上がった四股が印象的でした。あれは最初からできたのですか。

 

伊原 バレエっぽい上げ方ならどこまでも上がるんです。でもまず片方に重心を寄せてから、徐々に上げた足を伸ばして、最後は軸足もしっかり伸ばすという四股のやり方が難しくて。体は軸足のほうに倒さないといけないので、そのバランス感覚が難しく、最初は全然足が上がりませんでした。でもだんだん足を上げるというよりは、手で持ち上げるくらいにして、倒していく体で引っぱったほうが安定するなとか、徐々にバランスの取り方を見つけていってできるようになった感じです。

津軽弁でかっこよさとキュートさを絶妙なバランスで持っている女の子に

──穂香という役柄について、周防正行総監督、片島監督とはどんなお話をされましたか。

 

伊原 周防監督からはドラマには「女子相撲」という新しい要素が入り、そこが大事な軸になるんじゃないかというお話をしてくださって、より一層稽古や試合のシーンをちゃんと見せたいなって思うようになりました。片島監督は稽古のときから相撲場に来てくださり、「こういうイメージで」という映像もいただいたりして、一緒に穂香という役を作っていきました。そして1、2話だけ本読みがあり、森山亮太(葉山奨之)と穂香の関係性などを監督、葉山さんと3人で話し合えたんです。監督は明確なビジョンを持つつつ、そこに私たちの意見も取り入れてくださる方だったので、穂香という役の軸は片島監督のおかげででき上がったと思います。

 

──相撲部で1人頑張ってきた穂香はかっこいい女の子だと思いました。伊原さんは穂香をどんな女の子だと思って演じられましたか。

 

伊原 一番大きかったのは、1つのことをやり続けている人ってかっこいいなって。それは学生のときに私もダンス部の先輩たちを見て感じていたことなので、どのスポーツも変わらず、突き詰めている人ってかっこいいなって思いました。穂香は自分がやっていることを誇りに思っているのが魅力的です。そして真っすぐ。ちょっとズレているみたいなところも憎めない、愛すべきキャラだなとも思いました。1、2話は亮太にキツイことを言いますが、津軽弁なのでキツイひと言もマイルドになったりして(笑)。標準語だとちょっと強すぎるなと思うところは、「方言に変えていいですか?」と聞いて調整することもできたので、津軽弁にすごく助けられました。できればキュートな役にしたかったので、津軽弁のおかげでかっこよさとキュートさを絶妙なバランスで持っている女の子になったかなって思います。

 

──葉山さんの印象はどんな感じですか。

 

伊原 面白い方だなって思いました(笑)。どこまでが葉山さんでどこからが亮太なのかわからないくらい、普段からチャーミングだけど男らしさがある方でした。真ん中が似合う方で、みんなを引っぱってくれるタイプなんですけど、1つのシーンごとに考えて悩むような繊細な部分もあって。だからこそ役について話し合えましたし、「このシーン、大事にしていこうね」みたいなお話ができてありがたかったです。それが穂香と亮太にも、私と葉山さんの関係性にも影響を与えて、いいコンビになったんじゃないかなって思います。

竹中直人さんから「若いメンバーにとっても羽ばたいていく作品の1つに」と

──濃いキャラクターばかりの相撲部ですが、雰囲気はどんな感じでしたか。

 

伊原 学校みたいでした。確かにバレエを習っていたり、ボディービルダーだったり、キャラが強い人たちが多くて(笑)。稽古は午前が男子、午後が女子みたいな形で分かれていたんです。だから稽古で顔を合わせることはあまりなかったんですが、いざ撮影が始まると、これは葉山さんと亮太にも言えることですが、みんな「当て書き?」と思うくらいそのままでした(笑)。皆さん、素敵な方で、芝居にも生かされるくらい仲良しでしたね。そのせいかアドリブがどんどん増えていって、穂香はあまり笑わない役だから堪えるのが大変でした。逆に「この掛け合いに入りたいな」って思うくらい息がピッタリでした。

 

──竹中直人さんをはじめ、映画『シコふんじゃった。』のキャストの方々も登場します。撮影現場で交流はありましたか。

 

伊原 竹中直人さんからは「映画『シコふんじゃった。』は、僕たちにとってもすごく大切な作品になったから、若いメンバーにとってもこれが羽ばたいていく作品の1つになったらいいよね」とおっしゃっていただきました。田口浩正さんは試合のシーンのときに、「どうしたって君たちは素敵だから試合頑張ってきて」って声をかけてくださって。皆さん、優しい方ばかりでした。映画のキャストの皆さんが集まったときは、「懐かしい!」っておっしゃっていました(笑)。映画のキャストの皆さんも仲良しでしたし、若手チームと大人チームで一緒にご飯を食べたこともあって、皆さんが気を張らない空気感を作ってくださってありがたかったです。

丁寧な暮らしにハマっています(笑)

──ここからは「モノ」や「コト」についてお聞かせください。必ず撮影現場に持っていくモノはありますか。

 

伊原 香水やお香といった香り系を持っていきます。舞台の楽屋に置いたり、穂香はそういうタイプじゃなかったんですが(笑)、撮影のときはその役のイメージに近い香りを付けてから行ったりしますね。

 

──では、今ハマっているモノやコトは?

 

伊原 丁寧な暮らしにハマっています(笑)。マネージャーさんにコーヒーミルをいただいたんです。もともとコーヒーは好きだったけど、自分で挽くまではしていなくて。でもミルをいただいてから、好きなコーヒーショップの豆や、地方公演に行ったらそこにあるカフェでしか買えない豆を買ったりします。そして南部鉄器でお湯を沸かしてコーヒーを淹れるようにしています。ミルでゴリゴリするとコーヒーの良い香りが漂うじゃないですか。そうしていると「素敵な朝だな」って我ながら思っています(笑)。

 

──コーヒーを淹れるときはちょっと早く起きるんですか。

 

伊原 はい。明日はコーヒーを飲みたいと思ったら、早く起きるようにしています。そうすると余裕を持って準備ができるので、落ち着いた気持ちで仕事にも出かけられるんです。ミルで削る豆の粗さも選べるんです。いろいろ試すのも面白くて。私はカフェオレが好きなんだなと思っていましたが、ブラックなら浅煎りの豆、甘いものを食べるときは深煎りのダークなコーヒーにして……なんてやっていると、大人になったなって思います(笑)。

 

(C)2022 Disney

シコふんじゃった!

10月26日(水)よりディズニープラスで独占配信中

 

(STAFF&CAST)
原作・総監督:周防正行
脚本:鹿目けい子
監督・脚本:片島章三、後閑広、廣原暁、植木咲楽
出演:葉山奨之、伊原六花、佐藤緋美、高橋里央、森篤嗣、高橋佳子、佐藤めぐみ、手島美優、福松凜、梶尾篤紀、竹中直人、清水美砂、田口浩正、六平直政、柄本明

(STORY)
大学生の亮太(葉山)は就活で内定をもらったが、留年の危機が迫る“崖っぷち”大学生。亮太に提示された卒業の条件は、廃部寸前の相撲部に入部して試合に出ること。しかし、たった1人の部員であり、相撲一筋の大学2年生の穂香(伊原)は、相撲に本気で向き合うつもりのない亮太の入部を断固拒否。卒業を勝ち取るためになんとしても入部しなければならない亮太は食い下がり、穂香に相撲の“十番勝負”を挑むことに。一方、相撲部存続のため、新たな部員を募集するものの、集まってきたのは、元引きこもりのゲーマー、33歳のおじさんバレエダンサー、どこでも筋トレを始めてしまう筋トレマニアといった相撲とは程遠い、団体戦に挑むにはなんとも心許ないメンバーだけ。相撲部の存続とそれぞれの人生逆転を懸けて、あとには引けない寄せ集め弱小相撲チームは団体戦で無謀にも勝利を目指す―。

【『シコふんじゃった!』よりシーン写真】

(C)2022 Disney

 

撮影/映美 取材・文/佐久間裕子 ヘアメイク/NADEA スタイリスト/工藤祐司