話題のドラマや映画に数多く出演する要潤さんが、14年ぶりとなる舞台『レイディマクベス』に出演中だ。本作はウィリアム・シェイクスピアの『マクベス』の登場人物であるレイディマクベスにスポットを当てた作品で、主演の天海祐希を始め7人の豪華俳優陣が競演する新作書き下ろし舞台。『レイディマクベス』を俳優人生の集大成にしたいと語る要さんに、今回の舞台にかける思いや、今ハマっていることなどを聞いた。
【要 潤さん撮り下ろし写真】
40歳を過ぎて、舞台への思いが強くなった
──舞台に出るのは久しぶりですよね。
要 2009年に司馬遼太郎先生が原作の朗読活劇『レチタ・カルダ「燃えよ剣」』に出演して以来です。このときは一人舞台だったので、すごくやりがいもあったんですが、個人的に舞台は、本番に向けて稽古を重ねて、みんなで作り上げていくというイメージが強くて。だから、あまり舞台をやっているという感覚ではなかったんです。
──14年間も舞台に出ていなかったんですね。
要 実は2020年にコロナで中止になった舞台がありました。大人計画さんの『もうがまんできない』という舞台で、作・演出は宮藤官九郎さん。稽古もやったんですが、大人計画さん独特の空気感が出来上がっていて、毎日が笑いに包まれた現場で、すごく刺激的で楽しかったです。ようやく今年、上演されたんですが、僕はスケジュールの関係で参加できなくて残念でした。
──『レイディマクベス』のオファーがあったときのお気持ちはいかがでしたか。
要 今お話したとおり僕は舞台経験が少ないんですが、以前から先輩方に「板の上に立つ俳優になりなさい」と言われていて。40歳を過ぎて、舞台に挑戦したいという気持ちが強くなっていたタイミングでオファーをいただいたので、「ぜひ!」という気持ちでした。今まで自分が積み重ねてきた経験が通用するのか、また俳優として新しい何かを得られるんじゃないかという両方の気持ちがありました。
──今作の見どころをお聞かせください。
要 ウィリアム・シェイクスピアの『マクベス』をモチーフに、主人公をマクベス夫人に置き換えた、オリジナルの脚本と設定による書き下ろし世界初演の舞台です。エンターテインメントの要素もありつつ、アーティスティックな面も多くて。素晴らしい絵を見て、衝撃を受けて、はっきりした答えはないんだけど、すごく心の中が動いたときのような、そんな舞台になると思います。観終わった後、皆さんにどう感じてもらえるのかが楽しみです。
──主演の天海祐希さんをはじめ、錚々たるキャストが顔を揃えています。
要 ベテランの方々ばかりで、足を引っ張らないようにしなきゃいけないなと(笑)。僕は舞台経験が少ない上に、シェイクスピア作品を演じたこともないので、とにかくみんなに食らいついていこうという気持ちです。初めて共演する方もいらっしゃいますが、尊敬できる素敵な俳優さんばかりなので、胸を借りるつもりで演じたいです。
──プレッシャーはありますか?
要 もちろん感じていますけど、そのプレッシャーに負けないような、キャリアを積んできました。台本の読み方、キャラクターの作り方など、自分なりに積み上げてきたもので、役にのまれないように、しっかりと板に立ちたいです。
──シェイクスピアの舞台には、どんな印象をお持ちでしたか。
要 シェイクスピアは俳優をやっていたら絶対に耳にする名前で、世界中で常に作品が公演されているので、今まで尻込みしていたというか、自分にできるのかなという不安がありました。ただ俳優を22年やってきて、この作品に、このタイミングで出会えたということで、すーっと受け入れられたんです。作品ってやりたいと思って、回ってくるものではないですからね。
舞台は大きな山を、みんなで一緒に登っていく感覚がある
──要さんの演じるバンクォーはどんな役柄でしょうか。
要 バンクォーは、天海祐希さん演じるレイディの幼なじみで、弁が立ち、人を翻弄しながら自分の手は汚さない、したたかでずるい男です。レイディとは友人なんですけど、仲良しこよしではなく、忌憚ない意見も言う。彼女を刺激する存在ですね。
──どんな役作りを意識していますか。
要 バンクォーは自分とはまったく違うタイプですが、実は自分と違う役のほうがやりやすかったりするんですよね。自分と等身大の役がきたときって、演じながらこれでいいのかなと不安になることがあるんです。今回は設定も特殊ですし、完全にイメージで役を作り上げることができる。ただ僕は、自分から「こうしよう!」と思って演じるタイプの俳優ではないんです。この人はこういうふうに演じるから、じゃあ僕はこうかなというふうに作っていくタイプなので、稽古を通してバンクォー像を作っていきたいです。そのためにはイメトレが重要だと思っていて、僕はあまり瞬発力がないので、いろいろなパターンを想定して台本を読み込んでいます。今回は百戦錬磨の方々ばかりなので、「この人やりづらいな」と思われないようにしたいです(笑)。
──天海さんは憧れの俳優のお一人だそうですね。
要 俳優としての器が大きいんですよね。いらっしゃるだけで、その場が明るくなりますし、一緒にお芝居をすると全てを受け入れてくれる。どんな局面でも、ついていきたいなって思える人です。今回も天海さんが引っ張っていってくれるので、その歯車の一つになれるように、あわよくば潤滑油になれたらいいなと思います。
──本番では、どんなことを楽しみにしていますか。
要 シェイクスピアは難解なセリフも多いので、長い稽古期間で、しっかりと自分の中に落とし込んでいこうと考えていますが、もしかしたら公演期間も、沼にハマっていくように考えるのかもしれない。それって映像にはない舞台ならではの醍醐味ですし、すごく楽しみです。俳優としての階段を一つ上がるような、ターニングポイントになる作品にしたいですね。
──その他に舞台と映像の違いを感じる部分はありますか。
要 舞台は大きな山を、みんなで一緒に登っていく感覚があります。それに対して映像は、低い山がいっぱいあって、とにかく今日はこの山を登り切って、明日は違う山に登るようなイメージですね。
──改めて『レイディマクベス』の魅力をお聞かせください。
要 いつの時代も争いは絶えないですけど、戦わずして生きることができるのかとか、戦争の是非など、いろいろなテーマが包括されています。コロナ禍を通じて、今まで違和感を抱いていたことが露わになって、改めて生き方を考えるきっかけになりましたが、時代は違えど、『レイディマクベス』は今の時代に合っている作品です。
──要さん自身、コロナ禍のピーク時にどんなことを考えましたか。
要 東日本大震災のときもそうでしたけど、自分に何ができるのかとか、自分が幸せに生きるためにはどうしたらいいんだろうとか、いろいろなことを考えました。改めて家族の尊さを感じましたし、ここまで長く休みが続くこともなかったので、家族と密に過ごす時間を大切にしていました。
友達とDIYで山小屋作りにハマっている
──要さんは多彩な趣味をお持ちですよね。
要 いえいえ、胸を張って趣味と言えるものはないんですよ。というのも趣味の範囲が分からないので、仕事が趣味みたいなところもあって。
──確かに今年7月18日に放映された「午前0時の森」(日本テレビ系)で、「無趣味なのでテレビ用の趣味や特技を答えている」と仰っていて、それっぽい趣味として乗馬と手品を挙げていました。
要 どちらもハマっていた時期はあるんです。プライベートで手品師の方と知り合って、テレビで披露できるなと思って、幾つか手品を教えてもらって、実際に番組でも披露しました。乗馬も24歳ぐらいのときに、友達とノリで乗馬クラブに通ったんです。乗馬は一筋縄ではいかないので、半年ぐらいかかったんですけど、映画『キングダム』で刀を持って馬に乗るシーンがあったので、そのときの経験が活かされたのかなと。
──YouTubeチャンネル「要潤のシュールな日常」では度々、料理を披露していますが、手際が素晴らしいですよね。
要 料理も趣味と言えるほどのものではないんですけど、下積み時代にバイトでイタリア料理店や居酒屋のキッチンに立たせていただいたので、そのときに基本的な包丁の使い方などは覚えました。
──家で料理を作ることはあるんですか。
要 今はほとんどないですね。妻がバランスの良い料理を作ってくれるので助かっています。たまに自分が食べたい料理を一品足すぐらいです。
──たとえば、どういう料理を作るのでしょうか。
要 僕は砂肝が好きなので、砂肝の炒め物とかですかね。炒めるだけですけど、下処理が手間なんですよね。売られている砂肝は繋がった状態で、皮に白い筋みたいなものが付いていて、それを取るのが大変なんです。
──今ハマっていることは何でしょうか。
要 DIYですね。3年ぐらい前から友達と山小屋を借りて、少しずつ改造しているんです。ただの遊びですし、そんなに凝ったことはできないんですけど、かなり古い建物だったので、綺麗にしていこうと。
──どういうきっかけで始めたんですか。
要 コロナ禍で、飲みに行くことができなくなって、都内で集まることも難しくなって。山にこもって、みんなで会う場所を作ろうと始めました。YouTubeでDIY動画を見て、自己流でやっているんですけど、道具や資材を揃えるのが楽しいんです。道具はホームセンターで買って、資材はネットで安い物を探してオークションで落札して。新品よりもヴィンテージのほうが、味わいがあるんですよね。いつまでに完成させるというのもないので、気長にやっています。
レイディマクベス
(schedule)
■東京公演
日程:2023年10月1日(日)〜11月12日(日)
会場:よみうり大手町ホール
■京都公演
日程:2023年11月16日(木)〜11月27日(月)
会場:京都劇場
(cast&staff)
出演:天海祐希、アダム・クーパー、鈴木保奈美、要 潤、宮下今日子、吉川 愛、栗原英雄
作:ジュード・クリスチャン
演出:ウィル・タケット
音楽:岩代太郎翻訳:土器屋利行
美術・衣裳:スートラ・ギルモア
音響:井上正弘
照明:佐藤啓
ヘアメイク:川端富生
演出助手:伊達紀行
舞台監督:本田和男
主催:TBS 読売新聞社 研音 tsp
企画:tsp 制作:TBS & tsp
(story)
戦争が続いているとある国。レイディマクベスは元軍人であり、自ら戦場に赴く兵士だった。マクベスとは、ともに国を守るために闘う同志として知り合い、恋に落ち、娘を授かる。しかし彼女は産後、戦場へ戻れなくなり、母として、家庭を守ることに専念していたが、そんな現状に満足できないまま人生を歩んでいた。戦いは相変わらず終わりを迎える様子もなく、夫マクベスは戦場で次々と勝利を収め、国を導く存在となる。彼女には常に忘れられない若き日に描いた夢があった。それは「夫と共に国を治める」ということ。そんな時、統治者ダンカンが血縁者以外から後継者を選ぶと宣言。彼女の脳裏に忘れずに在った夢であり、夫婦の野望、そしてその夢が今、まさに手に入りそうになった時、二人は望むものを手に入れることができるのか……。
公式サイト:https://tspnet.co.jp/
公式X:https://twitter.com/2023LadyM
撮影/武田敏将 取材・文/猪口貴裕