元BiSHのハシヤスメ・アツコが、本格的にバラエティタレントへ舵を切った。現在、テレビで観ない日はないほどの活躍ぶりで、早くも初めてMCを務めるバラエティ番組『金曜日のメタバース』(テレビ朝日系)もスタート。バラエティに対する熱い思いと、自分の力で叶えた”夢”を、語ってもらった!
(構成・撮影:丸山剛史/執筆:有山千春)
【ハシヤスメ・アツコさん撮り下ろし写真】
「ラブマゲドン」でZAZYと手つなぎ「収録中はドキドキしっぱなし」
──6月29日にBiSHが解散となり、翌日にホリプロ所属になりました。いま、テレビで観ない日がないくらいですよね。ちょうど昨日(9月12日放送)も『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)を観ました。「ラブマゲドン」企画にご出演され、ZAZYさんとカップリングしていましたね。
ハシヤスメ・アツコ(以下、ハシヤスメ) 『ロンドンハーツ』には、グループ時代に一度ドッキリ企画で出させていただきましたが、「ラブマゲドン」は初めてで。恋愛系自体もやったことがなかったので、それこそ芸人さんと手をつなぐなんていうこともなかったですし、収録中はドキドキしっぱなしでした。
──どんなドキドキ感ですか?
ハシヤスメ 今までやってこなかったことをやることに対して、「応援してくれているファンはどう思うんだろう」とか、自分の中ではドキドキしながら挑んだ、大きな1歩でしたね。
──ファンの方からはどんな反響がありましたか?
ハシヤスメ もっと荒れるかと思いましたが、意外とそこまで荒れなかったです。いいんだか、悪いんだか(笑)。なかには「誰にも選ばれないでほしいけど、最後のひとりになったらかわいそうだな」みたいなコメントもあって。
──やさしいですね。
ハシヤスメ そしてZAZYさんと結ばれたのですが、「気持ちが入っていない」なんて言われてましたけど入ってました! 手をつなぐということ自体は、グループ時代に握手会などでしてきてはいたものの、やっぱりファンの方からすると、「異性と手をつないでいる場面を見るなんて……何を見せられているんだ……」という気持ちだったと思います。でも、自分はこれからバラエティメインでいろいろやっていきたいという覚悟を決めた瞬間でもあったので、どんなことにもチャレンジするハシヤスメを応援していただけたらうれしいです。
──バラエティ番組に対する意気込みへのアツさがすごいと思います。6月30日に所属されて、いまは毎日のように出演されて。どれくらいのペースで仕事していますか?
ハシヤスメ でも週2日は休日があるので、みなさんと同じくらいです。ありがたいですが、もっといっぱい仕事したい! という気持ちです。
明石家さんまとの掛け合いは、台風のよう「めちゃくちゃ踏ん張っていました」
──これまでさまざまな方と共演したと思いますが、そのなかで印象的な出来事はありましたか?
ハシヤスメ 明石家さんまさんとお話したときは、なんだかいつもとすごく感覚が違うというか……風が吹いたんですよ。
──『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)ですよね。どういうことですか?
ハシヤスメ さんまさんと掛け合っているとき、ずっと台風の中に入っているくらい、ゴウンゴウンッ! という感じになって。「この風に負けちゃいけない!」という気持ちになったんですよね。こんな感覚初めてで……なんだろう……なにと戦っていたんでしょうね。とにかく、感じたことのない風がスタジオに吹いていたんです。すごい汗をかきました。
──ステキな表現ですね。吹き飛ばされないように、ぐっと踏ん張って。
ハシヤスメ そうですね、めちゃめちゃ踏ん張っていました。なんでそうなったのかわからないんですが、たぶん、いろんなワードがいっぱい飛んできて、その中で負けないように風の中でめっちゃ踏ん張っていた、という感じがして。それで、トークがほかの方に移った瞬間に、ふっと風は収まったんですけど、話している間は信じられないほどの突風でした。そのあと番組を観たら、当然風なんて吹いていなかったんですけどね。
──これまでのライブなどでもそういうことはなく?
ハシヤスメ なかったですね。グループ時代にもバラエティ番組に出ることはありましたが、吹き荒れる風はありませんでした。
──どんな話をしたんでしょう。
ハシヤスメ 夜中になるといらないものを買ってしまうというトークで、綿あめ機を買ったという話をしました。
──暴風の中、手応えはいかがでしたか?
ハシヤスメ やりきった! という感じはありました。もちろん、自分のトークが終わったあとに「時間を戻せるなら、もっとこんなことを言ったほうが面白かったかな」と思ったり、反省点はいっぱいありましたが、そのとき自分ができることを120%やりきったなという感じはありました。
推し芸人・コカドケンタロウと「一緒に銭湯ロケに……」
──以前から大ファンを公言されている、ロッチのコカドケンタロウさんとは共演しましたか?
ハシヤスメ コカドさんは今日、夢に出てきました。
──おお! どんな夢ですか?
ハシヤスメ 一緒に銭湯ロケしてました。
──リアルですね(笑)。
ハシヤスメ リアルですし、なんでそんな夢を見たんだろうって感じなんですけど。でも現実ではお会いしていなくて、お仕事でもプライベートでも。これだけ夢に出てきているのにずっと絡みがないので、いつお会いできるだろうなあとすごい楽しみにしています。夢の中では、「やっと夢が実現した!」と思っていたんですけどね、目が覚めてがっかりしました。
──残念です(笑)。
ハシヤスメ 一度会ってお話してみたい一方で、自分の気持ちが上がるのか下がるのか、というのが知りたいですね。
──たしかに、実際に推しと会うと「あれ?」となることがあると聞きますよね。
ハシヤスメ そうなんですよ。10年くらいずっと好きで応援している方なので、お会いしたときに自分がどんな気持ちになるのか怖くもあるので、正直、まだこのままでいいのかなという気持ちもあります。
──夢のままで。
ハシヤスメ 夢のままでいいです。
──バラエティに出る前とあとでは、ご自身の中でどんな変化がありましたか?
ハシヤスメ いままでは音楽のことをずっと考えて、グループのためを想っていた8年間で、一人になった今もグループの話をすることもあるので頭の片隅には置きつつ、ただ、いまは“ハシヤスメ・アツコ”として勝負をしていて。もっとバラエティの勉強をしないといけないなと実感しています。まだ小学1年生レベル……いや、歩きたてレベルなので、いろんなバラエティ番組を観たり、カメラの前で自分がどんな人間かというアピールというか、自己紹介をしていきたいなって思っています。
──共演者の方で、「この人はすごい」と感じた方はいましたか?
ハシヤスメ そうですね、麒麟の川島(明)さんはすごかったですね。BiSHを解散した翌日に『ラヴィット!』(TBS系)に出させていただいて、川島さんはどんな状況でも助けてくださるし、守ってくださるんだろうなというのを感じました。
──信頼感がすごいんですね!
ハシヤスメ そうですね。自分も至らない点が多々あって、発言とか「これであっているのかな」と考えてしまうことがあるんですが、川島さんはたぶんいろんなことを毎日経験されて、ハシヤスメの発言もうまく拾ってくださって、調理してくださって、すごく信頼できる方だなと思いました。
出演番組をすべて録画し、すべてチェックする徹底ぶり
──家に帰って膝を抱えることもあるんですか?
ハシヤスメ ありますね。収録後に帰宅して「あのとき、この発言をすればよかったな」とか、放送を観て「あ! ここ、こういうコメント入れられたのにな」とか、思うことがいっぱいあります。
──出演番組、全部チェックしているんですか?
ハシヤスメ 全部チェックしてます。自分が出ているバラエティは全部観て、「あれ使われてなかったな」とか、「ここ、喋ったのに使われてないな、自信あったのにな」とか、「このときガヤ入れてたらこの場が変わったのかな」とか、反省することがいっぱいありますね。
──昔から同じように、録画を観て反省点を頭に叩き込んで、とやっていらっしゃったんですか。
ハシヤスメ グループ時代はただ録画をするだけだったんですが、自分ひとりでしゃべるようになった、ここ2、3か月は研究するようになりました。
──誰かからそういった教えがあったり?
ハシヤスメ いろんなタレントさんが、雑誌やテレビで「録画をして観るのが大事だ」と喋っていたのを取り入れたり、ホリプロの方からも「観た方がいい」と言われたので、テレビで自分のどこが使われているのかを観るようしています。
──全部って、すごい量だと思います。
ハシヤスメ いやいや、あっという間に観終えますよ。
──ところで、なぜバラエティの道へ舵をきったのでしょう? BiSHの解散発表が2021年でしたが、その頃から今後のことについてなど、考えていらっしゃったんですか?
ハシヤスメ 私もメンバーも、この8年間、全員がBiSHのことしか考えていなくて、なにかやるにも「グループのため」という意識でした。解散発表をしてからも同じで、ツアーも続いていたし、12か月連続リリースもありましたし、自分のことよりもグループのこと、でした。スケジュールはパンパンで、グループのことしか考えられなかったし、1人のことを考えるモードになれなくて。そんなとき、WACKの社長の渡辺淳之介さんに「この先、どうするんだ」と聞かれまして。そのときにようやく「先のことを決めないといけないんだ」と気づいたんです。それが、2022年の冬でしたね。
──ということは結構ギリギリなタイミングですね。
ハシヤスメ そうなんですよ。グループの活動がとにかく大切だったので。
──そこでなぜバラエティへ?
ハシヤスメ もともとグループでは「コント担当」みたいな感じでやらせてもらっていました。ほかのメンバーは音楽に特化したり、作詞作曲ができたり、自分も音楽や歌うことは好きですが、こんなに素晴らしい音楽をやるメンバーがいて、自分も音楽をやっていくのはどうもしっくりこなくて。などと考えた中で、自分はずっとバラエティが好きで、テレビの人になりたかったんですよね。それで、「絶対にバラエティタレントになりたい!」という気持ちが強く固まっていき、ホリプロを選びました。
ホリプロスカウトキャラバンを5回受け「すべて書類落ち」の過去
──以前から公言されていますが、『王様のブランチ』(TBS系)に出るのが夢だそうですね。
ハシヤスメ 好きですね。トレンドのスポットに行って、いち早く体験したりとか、ディズニーランドに行って「楽しい! 面白い!」ということを伝えたいんです。レポーターの方たちが楽しそうにしているのを見て、「自分もそこにいる人になりたいのに、なんで行けないんだろう」と、ずっともどかしく思っていました。
──ディズニーランドではしゃぐハシヤスメさん、見てみたいです! ホリプロ所属ですが、かつてホリプロスカウトキャラバンを受けていらっしゃると聞きました。
ハシヤスメ はい。5回受けて、全部書類で落ちています。
──オーディション用写真を親御さんに写真を撮ってもらったり?
ハシヤスメ いえ、全部自分でやりました。『月刊Audition』や『De☆View』という雑誌があって、そのお手本に沿って「自撮りじゃダメなんだ」とか「頭から爪先まで入るように撮らなきゃ」とか、「黒髪ストレートのほうがいいのか」とか、忠実に守って撮っていましたね。
──めちゃくちゃ真面目ですね。
ハシヤスメ あと「切手の料金不足は事務所に迷惑かかっちゃうよ!」という注意書きを気をつけたり、「封を開けたとき、写真側が表になっていたほうがいいのかな」とか「糊で貼ったらベタベタになっちゃうから、履歴書をどんなふうに入れて封をしよう」とか、いろんなことを考えて送っていました。
──開けやすさまで考えて!
ハシヤスメ 「テープで貼ったほうがいいのかな」とか、そういうことばかり考えていました。絶対に受かりたかったので。
──「可愛い写真を撮ろう」といったこと以外のところまで気を配っていて、とてもステキですね。
ハシヤスメ 鉛筆で下書きを書いてから清書していましたしね。どうしても入りたかったので、気持ちがあふれていたんですよね。特にホリプロは第1希望だったので絶対に入りたかったんです。
──おキレイですし、路上スカウトもあったのでは?
ハシヤスメ それがほとんどなくて。学生時代も原宿の竹下通りを歩いたりしたんですけど、「え、これってスカウトなのかな……?」という懐疑的なものはありました。
──怪しさがわかるんですね。
ハシヤスメ 聞いたことがない事務所だったり、本当に実在するのかなというものとか。だから、自分が「正しい」と信じられるものだけをやっていこうと思っていました。
──すごくしっかりされていますね。
ハシヤスメ 違和感には敏感だったと思います。
──それで、BiSHを経て、原点ともいえるホリプロに所属されて。学生時代のお友達の反応はいかがですか?
ハシヤスメ 高校時代の友達はスカウトキャラバンを受けたことを知っているので、「ほんとうにおめでとう!」「夢が叶ってよかったね!」とめちゃくちゃ祝福してくれました。
ホリプロに所属を直談判!「今までも全部自分たちでやってきたので」
──ちなみに、ホリプロからのオファーがあったのでしょうか? 「うちに来ませんか?」みたいな。
ハシヤスメ 来てないですね。自分で「入りたい」と渡辺さんに相談したら「俺じゃどうにもできないよ」と言われまして。でも、どうにかいろいろな方法でホリプロさんまでつなげてもらい、自分で「面接してください」とお願いしたんです。
──それも自分で!
ハシヤスメ 自分でやりましたね。いままでも自分がやることが多かったんです。それこそ、6月29日の東京ドームのBiSH解散ライブの打ち上げも、会社から「打ち上げ会場を手配して」と言われて私がやりましたし。
──アーティスト本人が会場を手配!
ハシヤスメ 昔から衣装管理も自分たちだし、作詞もそう。振り付けはメンバーのアイナ・ジ・エンドがほぼやってくれていましたし。だから事務所をホリプロに決めたのが自分なのも、自然の流れでした。
──かっこいい!
ハシヤスメ もちろん、たくさんの方に支えはありましたが、今振り返るとほぼ自分たちで決めてやることも多かったグループなんだな、と実感しています。
──以前から自分たちで動いていたからこそ、自分の力を信じて責任が持てる、という印象を受けました。
ハシヤスメ たしかにそうかもしれません。なにがあっても自分が選んだことだし、衣装を忘れても自分の責任でした。いま、事務所を離れてほかのタレントさんと話すと、「あれ、これって当たり前じゃなかったんだ」と思うことも多いです。特殊だったけど、変わらず大好きな事務所です。
──その経験値が武器になっていそうです。でも、ホリプロも自分から、だとは。
ハシヤスメ 自分で扉を開きました。
──10月6日からはMCを務める番組『金曜日のメタバース』(テレビ朝日系)もスタートします。
ハシヤスメ お話をいただいたときは「まさか!」という感じでしたが、ずっと、MCやレギュラー番組をやってみたかったので、とてもうれしかったです。
──MCとゲストでは、全然違いますよね。
ハシヤスメ そうなんです。受動的に待つのではなく、自分から振っていくというスタンスに変わるので、いま、本当にすごく考えています。
──MCが決定したことなど、メンバーの方から喜びの連絡があったりしますか?
ハシヤスメ MCのことではないですが、『アッコにおまかせ』(TBS系)に出たときや、ほかのテレビ番組に出演したときは、アイナ・ジ・エンドが「すごいね」と連絡をくれたりします。
──やさしい! BiSHの皆さんは、それぞれ多様な道に進んで、それぞれがそこにハマっていらっしゃると思いますが、突出した個性がひとつのグループに集まり約8年間を共にしたことは、奇跡的だと思います。
ハシヤスメ それぞれが、いままで出会ったことがないタイプで、無口で全然喋らないメンバーもいれば、ダンスも振り付けもできるメンバーもいて、歌が歌えるメンバー、MCができるメンバーもいて。出会ったことがないタイプだからこそ尊敬していたし、同じ時間を過ごしていくことで取り扱いが分かっていきました。それに、つねに全員が「この子になにかあったら、支えよう」という意識でいましたね。お互いに尊重し合っていたからこそ、6人でひとつのものが作れていたんだと思います。
金曜日のメタバース
テレビ朝日系 毎週(金)午後11時45分~
MC・芝大輔(モグライダー)、ハシヤスメ・アツコ