時計のことを深く知るためには、いくつかの用語を知っておきたいものです。今回は、最高峰の時計職人のみが作り出すことができる複雑機構を取り上げます。
【グランドコンプリケーション】
機械式時計の数ある特殊機構のうち、複雑機構と呼ばれるものを複数搭載した時計のこと。多くの場合は、「ストライキング機構」「パーペチュアルカレンダー」「スプリットセコンド・クロノグラフ」「トゥールビヨン」「天文表示」のいずれか3つ以上を搭載したモデルを指す。
【ストライキング機構】
ハンマーやゴングなどを用いて時を「打ち鳴らす」機構の総称。「ソヌリ」「リピーター」が、これに該当する。
【スプリットセコンド・クロノグラフ】
クロノグラフ計測専用の秒針を2本備えた複雑機構で、クロノグラフ機構の上位機構に位置付けられる。2人のランナーのそれぞれのタイム計測や、ラップタイム計測が行えるようになる。イタリア語圏などでは「ラトラパンテ」とも呼ばれる。
【ソヌリ】
ユーザーが起動させるリピーターに対し、ソヌリは毎正時や15分ごとに、自動的に鐘の鳴らす。鐘はボタン操作で任意に作動させたり、音が出ないようオフ状態に設定しておくこともできる例が多い。ちなみに毎正時と15分ごとに鐘の鳴るものはグランソヌリ、毎正時と30分ごとに鳴るものはプチソヌリと呼ばれている。
【天文表示機構】
時間という概念の確立に関係の深い天体の動きを時計で示す機構のこと。ムーンフェイズや、均時差表示のほか、日の出・入り時刻、黄道十二星座の位置、太陽と地球の位置関係など、複雑な天体の動きの一部を表示する機構全般がこれに含まれる。
【トゥールビヨン】
天才時計師として著名なアブラアン-ルイ・ブレゲが、19世紀初頭に発明した機構(1801年6月26日に特許取得の記録が残る)。懐中時計の時代は、ポケットの中などで長く垂直状態にあったことから、重力によってヒゲゼンマイなどに偏りが生じることが多かった。そこでブレゲは、テンプやアンクルなどの調速&脱進機を「キャリッジ」と呼ばれる小さなケージに収めてキャリッジごと回転させる「トゥールビヨン」を考案。各パーツにかかる重力の影響を平均化し、精度の安定化を図った。微細パーツの製造や組み立てに高い技術力が必要となる一方、長期にわたって精度を安定させる機構として腕時計に重用されており、複雑機構の代名詞的な存在となっている。
【パーペチュアルカレンダー】
閏年の2月29日まで計算された輪列が組み込まれた、カレンダー表示の最上位機構。多くの場合は、2004年、2008年、2012年、2016年……という閏年の2月29日表示にも対応し、例外的に閏年が適用されない2100年まで、正確にカレンダー表示に行うことができる。様々な意味で使われる「パーペチュアル」と混同を防ぐため、永久カレンダーと呼ばれることも多い。
【ミニッツ・リピーター】
自動的に鐘の鳴るソヌリと異なり、ユーザーが操作することで鐘やチャイムが鳴るリピーター機構のうち、鐘の音で分単位(ミニッツ)まで現在時刻を知らせる機能、またはそれを搭載した時計のこと。最小単位が5分の場合はファイブミニッツ・リピーター、15分の場合はクォーター・リピーターなど、いくつかの種類がある。
【ワールドタイマー】
都市名が記されたリングや地図と、それに対応する24時間の時刻がわかるパーツを組み合わせて、世界各地の時刻を把握できるようにした時計のこと。自分の現在地のタイムゾーンに都市名と24時間表示を正しく設定することで、その他の主要国(都市)すべての現在時刻も同時に把握できる時計のこと。