ムーブメントの自社開発が各社の課題となるなど、変革の時代を迎えている時計界。素材面でも、金の価格がプラチナを上回り、原材料の高騰によってステンレススチールは決して手頃な素材ではなくなりました。そこで今回はスポーツウオッチを例に、従来の“常識”からどのように変わったのかを見ていきます。
【これまで】SSはスポーツウオッチの素材だ⇒【現在】SSでもラグジュアリーに装える!
ステンレススチールのドレスウオッチは古くからありましたが、それを格上げしたのはオーデマ ピゲのロイヤルオーク。同社が作ったラグジュアリー スポーツウオッチの分野は、いまや人気ジャンルのひとつです。これを契機にステンレススチールの地位自体も向上。ジャンルを問わず、ラグジュアリーな素材として使われるようになりました。
ブライトリング「アベンジャー Ⅱ GMT ブルーマザー・オブ・パール」
ミリタリー由来の本格性能を誇るアベンジャーのGMT仕様に、日本限定でマザー・オブ・パールダイアルを採用。12.2㎜というブランド屈指の薄型設計ながら、両方向回転ベゼルを備え、300m防水も確保。
ブルーのマザー・オブ・パールは、まさに大空をメインフィールドとするブライトリングにふさわしい色味。高貴な素材を巧みに使った好例です。
(問)ブライトリング・ジャパン TEL:03-3436-0011
公式サイト:http://www.breitling.co.jp/
オメガ「スピードマスター 38㎜」
Si14シリコン製ひげゼンマイを備えたコーアクシャルエスケープメントを搭載した、スピードマスターの新展開。丸形の文字盤にオーバル形のインダイアルと日付小窓を配し、小ぶりながらも個性的な仕上げに。
ボックス型サファイアクリスタルとアルミニウム製リングを採用。クラシックな趣を残しつつ、ブルーダイアルの美しさを絶妙に際立たせています。
(問)オメガお客様センター TEL:03-5952-4400
公式サイト:https://www.omegawatches.jp/ja/
【現在】素材で選べるようになったスポーツウオッチ
ステンレススチールは頑丈で、広く使われている素材ですが万能ではありません。もし腕時計を身に着けて本当にスポーツをするのであれば、軽くて、汗や海水が蓄積しても錆びない素材の方が良いでしょう。そこで、登場したのがチタン。非金属ならセラミックやカーボンも選択肢に入れてもOK。
<チタン>
ステンレススチールよりも硬く軽量で、錆びにも強く、メタルアレルギーの心配も少ないのが特徴。この夢のような素材は、1978年にポルシェ・デザインが発表したブランドの1stウオッチで初めて時計に使われました。
ポルシェ・デザイン「1919 デイトタイマー」
独立ブランドとして一昨年から再スタートを切った同社は、コレクションのすべてにチタンを採用。本機はラグを独自デザインとして、素材の持つ軽さを視覚化。文字盤デザインでも独自性を発揮します。
(問)ノーブルスタイリング TEL:03-6277-1604
公式サイト:http://noblestyling.com/
<セラミック>
原材料の形を整えたあと、高温焼成して成型を行うのが、セラミック。加熱時には原料粒子が徐々に接着し、粒子間の隙間が小さくなると同時に全体も収縮。その収縮率の見極めが難しい一方、高硬度で耐傷性が高く、美しい光沢も得られる。
エドックス「クロノオフショア1 クロノグラフ オートマチック」
「海のF1」と称されるパワーボートレースに着想を得た、定番モデルの最新作。逆回転防止式のセラミックベゼルに採用されたブルーと、ケースのゴールドPVDのバランスが美しく調和しています。
(問)GMインターナショナル TEL:03-5828-9080
公式サイト:http://www.edox.jp/
<カーボン>
多くの分野で期待が高まっているのがカーボン物質で、21世紀は「ナノカーボンの時代」とまで言われています。腕時計では、いち早くカーボンナノチューブを組み込むブランドが出てくる一方、数年前には超高額だったフォージドカーボンが狙える価格で展開され始めています。
ロックマン「モンテクリスト カーボン」
カーボン素材を高温・高圧で固めるフォージドカーボンをケース素材に採用した、世界限定1000本のモデル。直径41㎜はラグまでを一体成型とし、カーボンダイアルと合わせて疾走感溢れる仕上がりに。
(問)ロックマン ジャパン TEL:03-6264-5552
公式サイト:https://www.locman.jp/
ディートリッヒ「オーガニックタイム1 カーボンルミネセント」
フォージドカーボンにスーパールミノバ樹脂を混合したベゼルが最大の特徴。暗闇でもベゼル、時分針などが緑色で視認できます。文字盤のX型ブリッジは、筋繊維にインスピレーションを得た有機的なデザイン。