ファッション
2016/4/9 16:30

【トレンド解説】ヘリテージデザインという機械式時計の新たな潮流

近年、スイス時計業界で新たなブームが生まれつつあります。それは、傑作を復活させた原点回帰とサイズの小径化。すなわち、“使いやすい時計の復権”です。本記事では、歴史を重ねることで磨かれてきた遺産のようなヘリテージデザインを持つ機械式腕時計に注目。長く付き合っていく相棒としてふさわしいモデルを、時計ライターの篠田哲生さんのコメントとともにチェックしていきましょう。

 

1604120_11

時計ライター 篠田哲生さん
1975年千葉県生まれ。時計専門誌、新聞、WEBなど、40を超える媒体で時計記事を担当。時計学校を修了した実践派です。

 

2極化が進んだため現実路線が一気に加速

20年近く成長を続けてきたスイス時計業界ですが、ここにきて不穏な空気が流れています。ライターの篠田氏はその状況を次のように語ります。

「原因は中国・香港市場の不調。欧州全体を覆う経済不況も業界に影を落としています。スイスフラン高による価格の上昇も問題です」

 

しかし一般ユーザーにとっては、悪い話だけではないといいます。

「時計業界も2極化が進んでおり、数千万円以上の贅沢品を求める人々もいます。しかし一般層が相手のブランドは、日本を含めた主要市場のニーズを読み取ろうとしています。どの国も機械式時計を購入するのは、センスの良い趣味人。本物志向のデザインや機構が好まれるのです」(篠田さん)

 

つまり“普通の価格の普通の時計”へと回帰しているのです。

「顕著なのが、過去のスタイル=ヘリテージを引用する動きですね。モンブランもボーム&メルシエも良い意味で普通のデザインを採用し、奇をてらわぬ姿勢がむしろ安心できます」(篠田さん)

 

機械式時計は永く愛し抜くモノ。だからこそ、伝統の重みがたびたび重視されるのです。

「ケースの小型化も同様です。見栄えのために大型化されたモデルに大金を投じることができる人は、残念ながらごく一部になっています。となれば、常識的なサイズが復権するのは必然です」(篠田さん)

 

名門時計工房の伝統を受け継ぐドレッシーな品格ウォッチ

1604120_01

モンブラン
ヘリテイジ クロノメトリー
ツインカウンター デイト

39万9600円/8月発売予定

【素材 ステンレススチール】
【ケース径 40mm】
【防水性 30m】
【駆動方式 自動巻き】

横2つ目のカウンターは、右がカレンダーで左がスモールセコンド。デザインは、1948年に名門時計工房・ミネルバが手掛けたピタゴラスというモデルから引用されました。上品な雰囲気が生まれています。

ケースサイドのデザイン画。ミネルバの往年の名機のように、9.85mmと薄くエレガントです
ケースサイドのデザイン画。ミネルバの往年の名機のように、9.85mmと薄くエレガントです

【プロの3項目採点】
9.85mmの薄型かつ弱点のない時計

仕上げ:☆☆☆☆
装着感:☆☆☆☆
コスパ:☆☆☆☆
合計12/15点

「バランスに優れています。ダイアルデザインのバランスを重視し、カレンダーを窓式にしなかったのも高評価です。ケース厚も9.85mmと控えめなので、使いやすいでしょう」(篠田さん)

 

シェルビー・コブラに捧ぐ情熱のコラボレーション第2弾

1604120_04

ボーム&メルシエ
シェルビー・コブラ
リミテッド エディション

51万3000円(予価)/6月発売予定

【素材 ステンレススチール】
【ケース径 44mm】
【防水性 50m】
【駆動方式 自動巻き】

1960年代に活躍した伝説のレーシングカー「シェルビー・コブラ」とのコラボ第2弾です。ドレッシーなケープランドをベースモデルとし、イエローの挿し色を効かせてスポーティに仕上げられました。世界限定1963本。

クロノグラフ積算計はクルマのメーターをイメージしています。秒針にはコブラのあしらいが!
クロノグラフ積算計はクルマのメーターをイメージしています。秒針にはコブラのあしらいが!
シースルーバックには“15”の印字があります。1963年に活躍したコブラのレースナンバーです
シースルーバックには“15”の印字があります。1963年に活躍したコブラのレースナンバーです

【プロの3項目採点】
カラーが変化し魅力が増した

仕上げ:☆☆☆☆
装着感:☆☆☆☆
コスパ:☆☆☆☆☆
合計13/15点

「昨年モデルのヒットを受けての第2弾。配色やコブラのあしらいなど、このデザインでこのコスパは良好です。しかし1963本限定は大問題! 入手困難が予想されます」(篠田さん)

 

20世紀初頭の船旅へ誘う

1604120_03

モンブラン
4810 ツインフライ クロノグラフ
110周年記念 エディション 1110

96万6600円/8月発売予定

【素材 ステンレススチール】
【ケース径 43mm】
【防水性 50m】
【駆動方式 自動巻き】

クロノグラフ秒針と60分積算計針を同時にフライバック(クロノグラフにおいて、セットボタンを押すとその瞬間に針がゼロ位置にリセットされる機能)させる「ツインフライ機構」を搭載。世界地図や第2時間帯表示で20世紀初頭の船旅の世界観を表現しています。世界限定1110本です。

 

コンプリートカレンダーにクロノグラフもプラスした贅沢な一本

1604120_07

ボーム&メルシエ
クリフトン クロノグラフ

57万7800円(予価)/4月発売予定

【素材 ステンレススチール】
【ケース径 43mm】
【防水性 50m】
【駆動方式 自動巻き】

月、曜日、日付、ムーンフェイズを表示するコンプリートカレンダーに加え、クロノグラフまで搭載した贅沢なモデル。ミドルレンジの価格帯の機械式時計では非常に高コスパです。

 

1940年の伝説的モデルへのオマージュ

1604120_10

IWC
ビッグ・パイロット・ヘリテージ・ウォッチ 48

182万5200円/今秋発売予定

【素材 ステンレススチール】
【ケース径 48mm】
【防水性 60m】
【駆動方式 手巻き】

1940年に誕生したIWC製パイロット・ウォッチのスタイルを引用。高精度な大型ムーブメントを搭載していた伝統を継続するため、48㎜の大型ケースを採用しました。世界限定1000本。

 

空の計器を思わせる無骨な仕上がり

1604120_09

IWC
ビッグ・パイロット・ウォッチ・トップガン

187万3800円/4月発売予定

【素材 ステンレススチール】
【ケース径 46mm】
【防水性 60m】
【駆動方式 手巻き】

2007年にスタートした「トップガン」シリーズは、計器を思わせるメリハリの利いたデザインが特徴です。精悍な仕上がりのセラミックケースから“武骨な空の男の世界”が感じられますね。

 

85周年の傑作モデルがリニューアル!

1604120_08

ジャガー・ルクルト
レベルソ・クラシック・ラージ

102万5000円/今夏発売予定

【素材 ステンレススチール】
【ケース径 45.6×27.2mm】
【防水性 30m】
【駆動方式 自動巻き】

85周年を迎えた反転ウォッチの大傑作が若干リニューアル。ミディアム、ラージサイズに自動巻きムーブメントを搭載しました。ただしデザインエッセンスは変わっていないのがうれしいですね。

 

【URL】
モンブラン http://www.montblanc.com/ja-jp/collection/watches.html
ボーム&メルシエ http://www.baume-et-mercier.jp/
IWC http://www.iwc.com/ja/
ジャガー・ルクルト http://www.jaeger-lecoultre.com/