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2020/2/5 21:00

2020年はニューバランス「M1300」が、5年に一度の復刻の時! 1300に問いかけた素朴な“13個”の質問!

ニューバランス初の1000番台モデルとして1985年に登場した“1300”。数多くのファンから親しまれ、復刻リリースされる度に大きな話題を呼ぶ正真正銘の名作だ。そんな誰もが知るエバーグリーンではあるが、私たちがまだまだ知らない情報も多い。

↑ニューバランス「M1300JP3」

 

そこで今回は、6度目の復刻を果たす「M1300JP3」について、“ニューバランス愛のクセがすごい社員”との噂もある、ニューバランスジャパンのGTM &デジタルマーケティング マネージャーの山崎祐仁さんにお話を聞きました。

【プロフィール】ニューバランスジャパン マーケティング部 GTM&デジタルマーケティング マネージャーの山崎祐仁さん。学生時代はなけなしのお金を握りしめ、スニーカーを求めて靴屋や古着屋を探し回ったという

 

 

今でも根強い多くのファンを持つ1300のルーツ

【Q.1】そもそもニューバランスのシューズは、なぜモデル名を数字で表記するのでしょうか?

山崎祐仁さん(以下:山崎) 1976年に登場した「320」というモデルから、数字を使ったネーミングが始まりました。商品を品番で識別した方が、社内でもお客様にとっても認知しやすく分かりやすいのかなと考えております。

 

【Q.2】1300の初代モデルは何年に登場したのですか?

山崎 ランニングシューズのフラッグシップモデルとして、1985年に登場しました。クッション性に長けたENCAP(エンキャップ)を搭載する第一弾モデルがこの1300になります。ちなみに当時(1985年)のアメリカでの販売価格は130ドル(当時の日本の価格で3万9000円)でした。

↑1985年に登場したオリジナルモデル1300の広告ビジュアル

 

ニューバランスジャパンは1988年に出来たのですが、それまでの日本では、月星化成(現 ムーンスター)さんの事業部がニューバランスを扱っていました。その頃にニューバランスと月星化成さんが技術革新を追求して生まれたのが1300。それ以前までは、EVA素材をそのまま取り入れるなどしていたのですが、よりクッション性を高めるために開発された、当時としては画期的なソールユニットが搭載されたことで話題となりました。ちなみに、“スニーカー界のロールス・ロイス”や“ラルフ・ローレンが「まるで雲の上を歩いているようだ」と大絶賛した”などの逸話があるようですが、ニューバランスが正式に発表したことではありません(笑)。ただありがたいことに、こういった逸話がメディアや口コミなどで広がり、より人気に火がついていったのも確かだと思います。

 

【Q.3】1300はニューバランスの他のモデルと、どのような違いがあるのですか?

山崎 各モデルの大きな違いは、仕様用途に応じて開発されたミッドソールになります。ニューバランスのミッドソールには“ENCAP(エンキャップ)”をはじめ、“C-CAP(シーキャップ)”や“REVLITE(レブライト)”といったソールがあります。

↑1300のミッドソールはENCAPを採用。ENCAPとは、衝撃吸収性のあるEVA素材(サンダルなどに使われる水に強い合成樹脂。クッション性がある)をPU素材(ポリウレタン。プラスチックだがゴムのように柔らかい)で包んだ技術である(写真はM1300JP3)

 

【Q.4】1300は用途でいうとランニングシューズですよね。いつ頃からファッションアイテムとしても認知され始めたのですか?

山崎 当時はランニングシューズとして販売されていました。日本では80年代後半の“渋カジブーム”の際、当時の一部の高感度な方達の間で広まって、ファッションアイテムとして取り入れてくださる方が増え始めたんだと思います。

↑1985年に登場した「M1300オリジナル」。当時のプロダクトのため加水分解でボロボロですが、その分歴史を感じます

 

ファッションアイテムとしてさらに急激に浸透したのは、80年代終わりから90年代にかけてだと記憶しています。空前のスニーカーブームが起こった際、すでにディスコンとなっていた1300を何かの雑誌や資料で見つけた方たちが再注目。それが口コミやメディアで広がり、全国のスニーカーショップにわずかに残っている(デットストックの)1300を探し回る方が増えていったそうです。市場の球数は少なくなるにつれて入手困難となり、どんどんと神格化されていったのではないでしょうか。現に私自身も大学生の頃に血眼になって探しましたが、オリジナルには一度も出会うことができませんでしたし、95年の復刻リリースも超レアアイテムだった記憶があります。

 

【Q.5】1300の魅力を3つのポイントで言い切ると!

山崎 革新的な進化を遂げるスーニーカーシーンにおいて、1300の履き心地の良さは最先端のものと比べると、やはり劣ってしまいます。しかし、これが85年に誕生したという事実を踏まえると、とてつもなく凄いこと。

↑アウトソールはビブラム社製。NBロゴは5本バーとなっています(写真はM1300JP3)

 

そして、いまのファッションに取り入れても全く色褪せることのない不変的なデザイン性。

↑ブランドを象徴するグレーカラー

 

また、これまでに何度も復刻されていますが、ただ懐古して忠実に再現するだけでなく、毎回その時ならではの細かなディテールへのこだわりが注がれています。なので、復刻される度にウンチクを語れるようなトピックが存在する。これも、ファンが魅了される1300ならではの魅力だと思います。

↑好きが高じてニューバランスに入社したという山崎さん。スニーカーはツボや陶磁器のようにず~っと見ていられる、日用品と美術工芸品を兼ねる存在だと語る

 

1300が定番ラインではなく復刻で生産される理由!

【Q.6】1300はこれまでに何度、復刻されてきたのでしょうか?

山崎 1995年に初めて復刻されて以来、2000年、2005年、2010年、2015年と5年おきに復刻され、今回の2020年で6度目です。

↑復刻第一弾となる、1995年登場の「M1300」

 

↑2000年登場の「M1300J」

 

↑2005年登場の「M1300J」

 

↑2010年登場の「M1300JP」

 

↑2015年登場の「M1300JP2」

 

【Q.7】需要があるにも関わらず、定番化せず限定化するのは、やはりマーケティングな意味合いが大きいのでしょうか?

山崎 確かにそういう意味合いも無きにしもあらずですが、技術的な問題もあります。いかに85年のオリジナルに近づけるか、その試行錯誤を繰り返しながら商品化するわけですから、時間もかかってしまいます。分かりやすい例を挙げると、サドル部分の「N」。85年のオリジナルは、ステッチが直線じゃなかったり、端に寄りすぎていたりします。でも、オートメーション化された現代の工場では、ステッチが綺麗なラインで縫うことも可能なわけです。良いことではありますが、綺麗に縫えてしまうと完全な復刻とは言えません。当時の味を忠実に再現するためには、当時を知る職人の技術が必要になりますし、その技術を新しい世代に継承していかなくてはならない。そういったこだわりが細部に宿るのが1300の復刻モデル。だから量産ができず、定期的な復刻販売になってしまうんです。

↑サドルのNロゴのステッチひとつを取っても、敢えて直線で縫製しないというこだわり

 

【Q.8】1300には1300CLや1300JPなど、様々な表記がありますが、具体的にどう違うのですか?

山崎 純粋な復刻モデルは、1995年、2000年、2005年、2010年、2015年、2020年のものです。こちらはジャパン企画ですのでJやJPがつく。正式には、1995年が「M1300」、2000年が「M1300J」、2005年も「M1300J」、2010年が「M1300JP」、2015年が「M1300JP2」と表記されます。

 

それぞれ、ディテールにわずかな違いがあります。ちなみに2015年のM1300JP2は、ビブラムソールの使用やシュータンのタイポグラフィだったり、シュータン裏の説明文だったり、オリジナルのディテールを忠実に再現した完全復刻モデルだと言われています。

↑オリジナルのディテールを忠実に再現した完全復刻モデルと言わしめた、2015年販売のM1300JP2。発売日には、ドラクエ発売を彷彿させるほど長蛇の列ができ、TVニュースにもなったほど

 

【Q.9】オリジナルの復刻ではなく、まったく新しいデザインの1300が登場することはあるのでしょうか?

山崎 過去には、「1300CL(クラシック)」というモデルがありました。これは、アッパーは似ているんですが、ミッドソールのソールユニットに別のものを使っているので、厳密には1300の派生モデルとなります。今後も、この1300CLのプラットフォームで新しい技術のミッドソールを取り入れたり、することは考えられます。ただ現段階では、僕の口からこれ以上の詳細は言えません(笑)。今後、正式な発表があると思いますので、楽しみにしていてください。

 

【Q.10】1300ならではのエピソードを教えてください。

山崎  他のモデルと比べると、お客様の目線がとにかく厳しいです(苦笑)。例えば、目視で確認できない程度のノリのハミ出しやちょっとしたキズなど、他の商品では検品をパスするレベルでもクレームが届くことがあります。先ほどの“なぜ、定番化せず限定化するのか?”といった質問にもつながることなんですが、こういったエピソードも、1300がレギュラーモデルとして展開されない理由かなと。だから、アメリカメイン州にあるスコヘーゲン工場で熟練の職人たちもじっくりと手間と時間をかけて取り組んでいます。

↑ノリのハミ出しや、ちょっとしたキズなども付けないよう丁寧な作業を進めます

 

USのクラフトマンシップが宿る待望の新作とは?

【Q.11】アメリカ生産にこだわる理由を教えてください?

山崎 コストだけを追求していくのであれば、他の国にシフトしたり、技術を追求して3Dプリンターに頼ったりなど、別のアプローチもあります。しかし、ニューバランスが最も大切にするのは、クラフトマンシップと地域コミュニティです。

 

スコヘーゲンにある工場には、熟練の職人が数多く在籍します。この方達が先代から受け継いだ技術で作ること。そして、その技術を後世に伝えることを大切にしています。これは、“地域雇用を率先することで地域経済を安定させる”という、企業理念につながることでもあります。

 

また、スコヘーゲン工場の近くには本社やラボがあるので、新しい開発や研究結果をすぐに試すことができるのもメリットのひとつです。

 

【Q.12】2020は遂にファンが待ち望んだ5年振りの復刻リリースがあります。今回の特色を教えてください。

山崎 今回のM1300JP3も、2015年にリリースした完全復刻の仕様を引き継ぎ、カラーコンビネーションやステッチワーク、ビブラムソールの採用と、オリジナルを完全再現しています。前回との大きな違いは、上質レザーとして知られるHorween社のマテリアルを採用し、さらに高級感を高めているところです。いかにHorween社のレザーをブランドを象徴するグレーカラーに近づけるか? が最大の課題でした。

↑アッパーにHorween社製の高品質レザーを採用した本作は、その証としてHorween社のタグが付属する(写真はM1300JP3)

 

↑NBロゴがオリジナルと同様の14本バーになっています(写真はM1300JP3)

 

↑実はオリジナルモデルのシュータン裏の刺繍には2パターンのデザインがある。M1300JP3はJP2で採用したものと同じシュータン裏の刺繍となっている

 

【Q.13】M1300JP3の発売はいつからはじまるのですか?

山崎 2020年2月22日を予定しています。現在、ニューバランス公式オンラインストアでは2月12日正午まで抽選応募を受付中です。店舗での販売方法はそれぞれ異なりますので、取扱店舗などに関してもオンラインストアをご覧ください。

ニューバランス
M1300JP3(2月22日発売予定)
3万7400円(税込)
※:オリジナルボックス、2020年版シューズバッグ、Horween社のタグ付属

 

撮影/我妻慶一

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

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