いま、日本の時計界はソーラーGPSウオッチと機械式時計の開発で、熾烈な争いを展開中。なかでも、ビジネスシーンを想定した製品は幅広く、時計売り場での戦いは混迷を極めています。今回は世界でも珍しい自社で時計製造を行える体制を持った国産メーカーの最新作のなかから、ソーラーGPS市場を独占する3社のデュアルタイム表示モデルをピックアップ。受信感度など、性能の違いをあぶり出します!
【ソーラーGPSウオッチ とは?】
GPSウオッチは、腕時計が地球を周回するGPS衛星と通信し、着用者の現在地を特定。そのエリアの正確な時刻情報を割り出して、針やカレンダーの表示を調整する時計のこと。これを光発電の腕時計で行うには、アンテナを収めるための高密度実装技術や、ICやモーターの省電力化技術、さらに高効率の光発電装置という要件が必要となります。
地球上の現在位置を測定するための衛星測位システムを活用し、世界中で正確な時刻を把握します。
電池切れの心配もなく世界中で正確な時刻がわかる
GPS衛星から情報を受信できる製品自体は数多くあります。しかし、光発電駆動で、さらにアナログ表示まで行える腕時計の市場に関して言えば、カシオ、シチズン、セイコーの寡占状態となっています。
現在の開発競争の始まりは2011年。人工衛星から時刻情報を受信するシチズンの光発電時計「エコ・ドライブ サテライトウェーブ」の登場でした。これに対し、セイコーは2012年にGPS衛星で位置情報まで取得できる「セイコー アストロン」を発表。後発となるカシオは、2014年にGPSと標準電波のハイブリッド受信タイプで市場に参入しています。
各社の最新作は、受信感度ではシチズンとセイコーがほぼ同等。シチズンは針の動きも迅速でした。同じくカシオも時刻合わせは早く、しかも速度が変化する小ワザ付き。「定番のセイコー」「スピードのシチズン」「個性のカシオ」という三者三様の特徴が浮き彫りになりました!
●受信感度の測定は、屋内は編集部のある学研ビル内、屋外は晴天時の都内公園にて検証。測定秒数は、同一条件下で5回測定した平均値(小数点以下切捨て)を掲載しています
【注目モデル1】
セラミックベゼルリングの仕上げ分けが映えるエレガントデザイン
カシオ
オシアナス OCW-G1200-2AJF
24万8400円
先進機能とエレガンスデザインを追求するオシアナスのGPSハイブリッド電波ソーラー最新作。時差を記したベゼルはセラミック製です。
セラミックベゼルにレーザー加工を施し、時差の±を質感で表現。このひと手間が上質感を生みます。
【受信感度を調査】
屋内での受信は標準電波でカバーできる
手動受信は4時位置のボタンを1秒押して時刻、3秒押して位置と時刻の情報を取得できます。受信できた屋外では、時間が17秒。時間と場所の受信には60秒ほどかかりましたが、試しに時計を頭上に掲げると30秒ほどに。
【高層ビル内16階で測定⇒失敗】
ガラス越しは受信失敗。ですが、夜間の自動標準電波受信で挽回しました。
【晴天時の公園で測定⇒約17秒】
時間だけなら20秒以下で受信。受信時の位置が低いと失敗することも。
【使い勝手を調査】
最大の特徴はハイブリッド仕様と針の動き
GPS衛星電波と世界6局対応の標準電波のどちらの信号も受信できる点が最大の特徴。2都市の時刻の同時表示は、ボタン操作で簡単に入れ替え可能です。針の動きに緩急をつけるなど、モーターの使い方もユニーク。
【操作系統の割り当て】
手動の都市設定はリューズで、時刻の入れ替えは2時側のボタンで可能。
【文字盤の独自性】
2つの時間帯を同時に示し、10時側にはモードと曜日表示も備えています。
【総括】
時計の美しさを考慮すればむしろ安く感じる一本
基本スペック 4/5
受信感度 3.5/5
付加機能 4.5/5
コスパ 4.5/5
ハイブリッド仕様という独自性に加え、外装面でも高品位な平滑仕上げの代名詞「ザラツ研磨」を採用。受信感度に不安定さを覚えましたが、それを補って余りある魅力があります。
【注目モデル2】
“STAY GOLD”をテーマにした爆速受信の限定機
シチズン
アテッサ F900 CC9017-59F
27万円
ビジネスマンに人気のアテッサから発売となる700本製造限定モデル。独自技術を駆使したケース素材に映えるゴールドカラーが特徴です。
人気の黒×金の配色を採用。第二時間帯を表示するサブダイアルの金色が、存在感を主張します。
【受信感度を調査】
看板に偽りなしの“3秒受信”を体感
本機が搭載するF900は、時間のみの受信が世界最速(※)・最短3秒という触れ込みで登場。そのフレーズに偽りはなく、時間だけならあっという間に受信完了となりました。位置情報の取得も平均40秒と、3社の中で最速。
※:光発電のGPS衛星電波時計として、2016年9月現在。シチズン時計調べ
【高層ビル内16階で測定⇒失敗】
建物内ではGPS電波は受信不可。条件が揃えば窓際なら受信可能といいます。
【晴天時の公園で測定⇒約3秒】
時間だけの受信では、4秒を上回ることもなく好記録を連発。期待通りです!
【使い勝手を調査】
充電残量と発電量がわかる機能がユニーク
4時側のボタンを押すと充電量が確認でき、長押しすれば位置情報が取得可能。リューズでLLIモードを選んでから操作すると、現在の発電量を秒針が示す独自機能が作動します。光発電の先駆者らしいアイデア機能といえます。
【操作系統の割り当て】
[TME]モードなら、ボタン操作だけで手動受信や時刻の入れ替えが可能です。
【文字盤の独自性】
↑第二時間帯表示は1周24時間を採用。右側はモード表示、左側は機能針です
【総括】
受信感度も良好で独自機能も備えたバランス型
基本スペック 4/5
受信感度 5/5
付加機能 4.5/5
コスパ 4/5
受信も針の動きの機敏さが印象的。ライトレベルインジケーターは楽しい一方、リューズの締め忘れは要注意です。限定仕様の本機は高額ですが、通常機なら21万6000円で割安。
その3
ソーラーGPSのパイオニアが放つ安定感抜群の一本
セイコー
アストロン SBXB101
23万7600円
高感度リングアンテナを備えたセイコー アストロンのデュアルタイムウオッチ最新作。ブルーのメタルパーツが、特有の上質感を演出します。
シンメトリーに配置されたメタリックブルーのパーツが個性を主張。視認性の向上にも貢献します。
【受信感度を調査】
薄型設計の8Xキャリバーも抜群の感度をキープ
独自の高感度リングアンテナは、最新世代キャリバーでも優れた受信性能を発揮。時間だけならば約4秒、時間と場所でも約43秒と、優秀な結果を残しました。受信時の基本姿勢は上向きですが、多少傾けても受信に成功。
【高層ビル内16階で測定⇒失敗】
ガラスの種類次第で屋内でも受信できるようですが、今回は受信不可。
【晴天時の公園で測定⇒約4秒】
時間修正だけなら約4秒で受信。位置情報の受信感度も予想以上に良好でした。
【使い勝手を調査】
捕捉衛星の数を示して宇宙との繋がりを可視化
タイムゾーン修正に必要なGPS衛星の捕捉状況表示は、セイコーの独自機能。クロノグラフがないぶん、文字盤がシンプルで見やすく、操作も容易でした。自然光を受けると自動受信を始める機能も、実生活での利便性が高いです。
【操作系統の割り当て】
強制受信は2時側のボタンで操作。もうひとつは小時計の設定などで使います。
【文字盤の独自性】
クロノグラフがないので非常にシンプル。左上のモードも極めて簡潔です。
【総括】
デュアルタイムに特化して実用性を追求
基本スペック 4/5
受信感度 4.5/5
付加機能 4/5
コスパ 5/5
第一人者らしい使い勝手の良さは特筆もの。針合わせの速度はスローですが、セラミックベゼルやザラツ研磨など、高級時計で培った仕上げが楽しめるなら、全く申し分ありません。