スマホAIはGalaxy Z Fold 7でどう進化する? サムスンとクアルコムが語る“人間中心AI”の戦略

ink_pen 2025/7/28
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スマホAIはGalaxy Z Fold 7でどう進化する? サムスンとクアルコムが語る“人間中心AI”の戦略
坂田邦雄(GetNavi web編集部)
さかたくにお
坂田邦雄(GetNavi web編集部)

GetNaviチームリーダー。歴史、園芸、教育メディアの編集長、プロデューサーを経て現職。ガジェット、カメラ、ファッションを愛し、ものづくりと素材にこだわりを持つ。GetNavi事業のマネジメントを通じて、作り手と使い手を結びつける「つなぎ手」を目指す。

2025年7月18日、大阪・関西万博にて、スマホ世界トップシェアを誇るサムスンと、Snapdragonで知られるモバイル向けチップ開発企業クアルコムのキーパーソンが、スマホとAIの未来について語りました。会場で上映されたAI機能のデモ映像は、8月1日に発売予定のGalaxy Z Fold 7/Z Flip 7に実装される予定のもので、実際に利用可能になる機能です。最新のGalaxyスマホでAIはどんな進化を遂げ、サムスンはこの先どのようなAI戦略を描いているのでしょうか。スマホとチップセット、両分野で世界トップシェアを誇るサムスンとクアルコム。戦略的パートナーでもある両社のキーパーソンが語ったAI戦略の中身を詳しくレポートします。

GalaxyのAI戦略を支える2つの軸──「マルチモーダルAI」と「オンデバイスAI」

↑左から司会のイ・ヒグン、サムスン電子のソン常務、クアルコムのキム副社長。

大阪・関西万博の「テーマウィークスタジオ」にて、サムスン電子のケン(インガン)・ソン常務と、クアルコム・コリアのスペンサー(サンピョ)・キム副社長が、AIをテーマとしたパネルディスカッション「真のAIパートナーになるための人間中心AI:壁を乗り越え、次に目指すもの」が開催されました。

ソン氏は、Galaxyシリーズを統括するモバイルエクスペリエンス事業部のテクノロジー戦略チーム長を兼務しており、GalaxyのAI戦略をリードするキーパーソンです。一方、クアルコムはSnapdragonをはじめとする高性能モバイル向けSoC(システム・オン・チップ)で知られ、スマートフォンの頭脳ともいえるチップセットを提供するグローバルリーダー企業です。

両氏が講演で強調したキーワードは「マルチモーダルAI」と「オンデバイスAI」の2つです。

  • マルチモーダルAI:人間が「見る」「聞く」「触る」など、複数の感覚を組み合わせて理解するように、AIも画像・音声・テキスト・センサー情報などを統合的に処理する技術です。
  • オンデバイスAI:インターネットを介さず、スマートフォン内のチップセットやAIエンジンでAI処理を完結させる技術です。ChatGPTやGeminiのようにクラウドで処理されるAIとは異なり、ローカル処理でより高速かつプライバシー保護に優れています。

GalaxyのAIは、ユーザーが入力する文字情報だけでなく、カメラ映像、マイク音声、画面タッチといった多様な情報を組み合わせて処理し、よりパーソナライズされた体験を提供しています。特に、最新の折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Fold 7」「Galaxy Z Flip 7」に搭載されると言われている「One UI 8」では、このマルチモーダルAIがさらに進化しています。

スマホにおけるAI利用の現状と課題

AIの社会浸透が急速に進む一方で、利用に抵抗を感じるユーザーも存在する。

Galaxy S25シリーズのユーザーのうち、実に70%以上がAI機能を日常的に活用しているという調査結果が出ています。AIの利便性は広がっていますが、まだ一部のユーザーには抵抗感があるのも事実です。

サムスンの調査によると、AI利用に対して不安を感じる理由は次の3点です。

  • AIが暮らしに本当に役立つのか実感できない
  • 操作や設定が難しそうで使いこなせない
  • 個人情報が漏洩するのではという不安

このような課題を乗り越えるためには、単なる機能向上ではなく、「実生活に役立ち、誰もが安心して使えるAI」であることが重要です。その解決のカギとなるのが、前述の「マルチモーダルAI」と「オンデバイスAI」なのです。

進化した「One UI 8」──GalaxyスマホのAI体験はここまで進化

2025年8月に発売予定のGalaxy Z Fold 7を皮切りに、Galaxyシリーズには新たに「One UI 8」が搭載される予定です。より直感的で自然なAI体験を実現する機能が多数搭載されており、会場で上映されたデモ映像からは以下のようなシーンが紹介されました。

会場で上映されたAI活用のデモ映像(一部)。
  • 海外旅行先で看板の文字を読めないとき、カメラでかざして指で囲むだけで翻訳可能(写真左上)
  • ペット連れで行けるレストランを、会話形式でスマホが提案してくれる(写真右上)
  • 初めての料理でも、カメラをかざしながら質問すると食べ方を教えてくれる(写真左下)
  • クローゼットの服をスマホで撮影すれば、気温や天気に応じたコーディネートを提案(写真右下)
  • 会議中はAIが自動で議事録を作成し、終了後には要約や翻訳までも提供

これらの機能は、AIがまるで通訳や秘書、コンシェルジュのように「人に寄り添う体験」を生み出しており、マルチモーダルAIがスマホに非常に適していることを示しています。

個人情報保護と快適さを両立する「オンデバイスAI」

個人情報保護を重視するサムスンにとって、オンデバイスAIは不可欠。

AIにとって、ユーザーの個人情報は高度なパーソナライズを実現するための重要な要素です。しかし、多くの人が個人情報漏洩に不安を抱えているのも事実です。

オンデバイスAIは、そうした懸念に応えるひとつの解決策です。個人情報をクラウドに送信せず、スマホ内部で安全に処理することで、プライバシーを守りながらも快適なAI体験を実現します。

スマホが中心となる“人間中心AI”の未来

AIビジョンを共有するサムスンとクアルコム。

この「オンデバイスAI」を支えているのが、クアルコムが開発する高性能なモバイル向けSoCです。代表的な製品であるSnapdragonシリーズは、現在多くのスマートフォンやタブレットに搭載されており、2025年第1四半期時点で世界シェア第2位(Counterpoint Research調べ)を誇っています。

サムスンにとって、セキュリティと快適性を両立するAI体験を実現するうえで、クアルコムとの技術連携は不可欠となっています。

現在、世界人口の約71%がスマートフォンを所有し、1日あたり平均4.5時間をスマホに費やしています。今後は、スマートグラス、リング型デバイス、スマートウォッチなど、より多くのウェアラブルデバイスにもAIが組み込まれていくと予想されています。

しかし、両氏は「AIの中心的なプラットフォームは、今後もスマートフォンであり続ける」と語りました。スマホは音声・映像・位置情報・操作ログなど、最も多様な情報を集約できるデバイスであり、マルチモーダルAIとの相性も抜群です。

サムスンとクアルコムは、「人に寄り添い、状況を理解し、適切に反応するAI」を実現するために、「人間中心AI」という共通ビジョンを掲げています。スマートフォンを中核に据え、マルチモーダルAIとオンデバイスAIの両軸で、その実現に向けた技術革新を進めています。

よくある質問(FAQ)

Q. マルチモーダルAIとは何ですか?

「見る」「聞く」「触る」といった複数の感覚(モダリティ)をAIが組み合わせて理解・応答する技術です。Galaxyではカメラ、音声、タッチ操作などを統合し、より人間らしい体験を実現しています。

Q. オンデバイスAIとは何ですか?

 クラウドに頼らず、スマートフォンの内部(デバイス)だけでAI処理を行う技術です。個人情報を外部に送らず処理できるため、プライバシー保護にも優れています。

Q. Galaxy Z Fold 7/Z Flip 7の発売日はいつですか?

 2025年8月1日に発売が予定されています(一部地域では異なる場合があります)。

 Q. Snapdragonとは何ですか?

クアルコムが開発するモバイル向けの高性能SoC(システム・オン・チップ)です。Galaxy Sシリーズなど多くのハイエンドスマートフォンに搭載されています。

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