【西田宗千佳連載】実はファンが多い! メタが「メタバース」に注力し続ける理由

ink_pen 2025/11/25
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【西田宗千佳連載】実はファンが多い! メタが「メタバース」に注力し続ける理由
西田宗千佳
にしだむねちか
西田宗千佳

モバイル機器、PC、家電などに精通するフリージャーナリスト。取材記事を雑誌や新聞などに寄稿するほか、テレビ番組などの監修も手がける。ツイッターアカウントは@mnishi41。

Vol.155-4

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回はメタのスマートグラスについて触れる。過去何度か登場しては普及せずに消えたスマートグラスが多いなか、メタの取る普及への戦略は何か。

 

今月の注目アイテム

メタ

Meta Ray-Ban Display

799ドル(約12万3000円※。日本での発売は未定)

※1ドル=約154円で換算(2025年10月31日現在)

↑右レンズには透過型の高解像度ディスプレイを内蔵し、メッセージを読んだりすることも可能。1200万画素のカメラを搭載し、写真や動画の撮影もできる。リストバンドでの操作が行え、ジェスチャーや手の動きを感知する。

メタは2025年の開発者会議「Meta Connect 2025」の基調講演で、AIグラスの「Meta Ray-Ban Display」や「Ray-Ban Meta」を中心に発表した。HMD型の「Meta Quest」の最新モデルが発表されなかったこと、その上で使われるサービスであるメタバースについての発表がなかったことから、“AIグラスにシフト”という報道も多かったようだ。

だが実際はそうではない。翌日の開発者向け発表を含め、メタバースに関する発表も結構あったのだ。

例えば、メタのメタバースサービスである「Meta Horizon Worlds」は、基盤となるエンジンをUnityから自社製に変えている。要はサービスの中身をまるっと入れ替えたわけで、けっして小さな発表ではない。数年前から準備を進めていたもので、同社としても相当に大きな計画だ。

入れ替えの結果、人々が過ごす「ワールド」の読み込みが4倍位以上早くなり、同じワールド内に100人以上が同時に入れるようになっている。要は、多くの人が過ごす基盤としての完成度が大きく上がったのだ。

さらに、ワールドの構築に「AI」も導入した。

Horizon Worldsでは人々が過ごすワールドの自作が可能なのだが、3Dモデルや効果音、動作スクリプトの作成など、ゲームを1本作るような技術と労力が必要になる。

そこにAIを導入した結果、プロンプトでワールドを作れるようになった。例えば“ファンタジー風の世界にして”と言えば、それっぽい風景・建物・効果音が自動生成される。修正も簡単になり、誰でもワールド構築ができるようになっている。

あまり目立たないが、「Fortnite」「Roblox」「VRChat」などのメタバース系サービスには濃い顧客が定着しており、特にRobloxは若い層の人気が高い。それらではワールド構築のニーズが高く、メタとしては基盤刷新とワールド構築技術でそれらのサービスと差別化を進めたい……という狙いがあるのだ。

いまはAIグラスとメタバースは別々の存在だ。しかしメタバースの本質は「コミュニケーション」であり、最近はスマホでの利用も増えている。そこにつながるAIグラスでも使えるようになってくると、別れていた技術が1つの形で使えるようになる。それまでは、前回説明したようにヘッドマウントディスプレイ(HMD)型のデバイスも必要であり、現在の技術開発の先に、さらに進化したAIグラスが存在することになる。

メタはこの種のことを短期勝負では見ておらず、数年単位で開発を進めている。そうした視点に立てば、メタにとってメタバースは“終わったこと”でも“方向転換”でもなく、“先を見て、いまも続ける事業”そのものなのだ。


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