ワイヤレスイヤホンのトレンドといえば、少し前まではとにかく「ノイズキャンセリング」という潮流でしたが、現在はその進化もいったん落ち着いています。かわりに耳をふさがず自然な聴き心地を楽しめる「オープンイヤー型」が存在感を高めており、イヤホン選びにはこれまで以上に幅広い選択肢が生まれていると言えるでしょう。
日常生活で身に着けながら身体を動かす、あるいは料理をするなど、音楽を「ながら聴き」できるオープンイヤー型イヤホンは、これまでの一般的な密閉型イヤホンとはまた違う魅力を備えています。一方、ひとくちにオープンイヤーイヤホンと言っても様々なスタイルがあることも見逃せません。いまオープンイヤー型の完全ワイヤレスイヤホンを買うなら、このような「装着スタイル」の好みを考慮に入れるのがおすすめです。
今回は代表的な「3つの装着スタイル」に注目して、それぞれのスタイルを見比べながらおすすめのユーザー像を紹介します。各スタイル別に、筆者が注目する3つのワイヤレスイヤホンもピックアップしました。

目次
BOSE「Bose Ultra Open EarBuds」
〜音漏れなく開放的なリスニング感を実現する「イヤーカフ」スタイル〜
BOSEの「Bose Ultra Open EarBuds」は、耳に挟むように装着するC型の「イヤーカフ」スタイルを採用したオープン型ワイヤレスイヤホンです。
イヤーチップやイヤホン本体で耳を塞ぐことなく装着できるので、耳栓タイプのイヤホンが苦手な方もなじみやすいと思います。ほかのオープン型イヤホンと比べて、完全に開放的なリスニング感が得られることも特徴です。
耳に挟み込むように装着するため、メガネのフレームによる干渉を受けないこともメリットと言えます。ただし、耳の形によっては装着時の安定感に差が出る場合もあるので、購入前には試着を済ませておくべきです。

しかし、イヤーカフスタイルを含む一般的なオープン型イヤホンには「音漏れ」という弱点があります。耳栓タイプのイヤホンに比べるとサウンドが聴きづらく、またユーザーが聴いているサウンドが“外に漏れる”ことが頻発すると安心して使えません。そこで最新のオープン型イヤホンを手がける各社は音漏れを減らす工夫を凝らしています。
BOSEといえばノイズキャンセリングヘッドホンの「QuietComfort」シリーズが有名ですが、同シリーズの開発により培った音漏れを防ぐ「OpenAudioテクノロジー」と名付けられた音響構造技術を、オープン型の本機にも応用しています。
この技術が、低音域の音漏れを効果的に抑制。結果として、本機を装着して、ふつうの音量でサウンドを再生している限り、よほど顔を側まで近づけなければわからないほどに音漏れが抑えられます。


音質はBOSEらしく、オープン型ながら中低音域の厚みがしっかりとしています。屋外で使用しているときにも、周囲の環境音に邪魔されることなく、快適なリスニングが楽しめます。
Bose Ultra Open EarBudsは、オープン型イヤホン全般のメリットである「開放的なリスニング感」と「ながら聴きにも最適」 な点で十分満足できます。そのうえで、特に以下のような方々におすすめです。
【Bose Ultra Open EarBudsはこんな人におすすめ】
・耳をふさぐイヤホンが苦手
・ふだんからメガネを掛けている
・イヤーカフのようにファッションアイテムとしてイヤホンを楽しみたい
JBL「JBL Sense Pro」
〜スポーツシーンにも最適な「イヤーハンガー」スタイル〜
「JBL Sense Pro」は、柔軟に曲げられるイヤーハンガーを耳に掛けて装着する「イヤーハンガー」スタイルのオープン型ワイヤレスイヤホンです。
JBLは様々なデザイン、装着スタイルが選べるワイヤレスイヤホンを発売していますが、本機はイヤーハンガースタイルのフラグシップモデル。16.2mmという大口径ドライバーが、パワフルで解像感にも富んだサウンドを再生します。まるでスピーカーで聴いているような迫力を、音楽から映画・ゲームのサウンドまで幅広く再現します。

イヤーハンガー型は耳への接触面が広く、装着が安定しやすいため、ランニングのような身体を動かすシーンでの音楽リスニングにも最適。JBL Sense Proのイヤホン本体はIP54相当の防塵・防水仕様。雨や汗にも強いので、野外アクティビティとの相性も良好です。


弱点としては本体サイズが大きめなぶん、メガネや帽子と併用したときに干渉する可能性があります。耳が小さい方は、本機を装着するとイヤホンが大きく見えるかもしれません。やはり購入前の試着がマストです。
ハイレゾワイヤレス再生を実現する、高音質オーディオコーデックのLDACにも対応しています。Androidスマホにハイレゾ対応のポータブルオーディオプレーヤー、Amazon Music UnlimitedやApple Musicから配信されているようなハイレゾ音源を組み合わせると、音楽リスニングの楽しみも広がります。音楽ファンや、ワンランク上のワイヤレスイヤホンを求めている方に最適な選択肢です。
同じイヤーハンガースタイルの人気モデルとしてはShokzのOpenFitシリーズなどが挙げられますが、サウンドの力強さという点ではJBL Sense Proの存在感は格別です。デメリットとして指摘するべき点は、イヤーハンガーがあるぶん、本体を収納する充電ケースのサイズが大きくなりがちなことでしょう。
【JBL Sense Proはこんな人におすすめ】
・迫力あるサウンドを求めたい(大口径ドライバー搭載機が比較的多いので)
・装着時の安定感を重視したい
・ケースから取り出したり、耳から着脱したりするときにイヤホンを落としたくない
ソニー「LinkBuds Open(WF-L910)」
〜独自のリング型ドライバーの個性的なデザインと聞こえ方〜
最後に挙げる3つめのスタイルは、「耳に入れるのに耳を塞がない」タイプのオープンイヤーイヤホンです。「インナーイヤー」か、または少し専門的な言い方をするとイントラコンカとも呼ばれる、耳の穴に深く差し込まず、イヤホンを耳のくぼみに沿って引っかけるように装着するスタイルを指します。最新モデルとして、ソニーの「LinkBuds Open(WF-L910)」を紹介しましょう。
本機はソニーが独自に開発したリング形状ドライバーを搭載。本体の耳に挿入する部分もリング形状になっているので、サウンドを再生しながら周囲の環境音も聞けるという、とてもユニークなワイヤレスイヤホンです。耳穴に軽く添えるように装着するため圧迫感が少なく、なおかつ身体を少し激しめに動かしてもイヤホンがズレたり落ちたりすることがなく、耳もとで安定します。

力強く、解像感にも富んだサウンドが再現できるところもLinkBuds Openの魅力です。“穴が空いているイヤホン”であることを感じさせません。従来のインナーイヤー型イヤホンに比べると、ボーカルや楽器の音像が明瞭に定位するので、シンプルに「音が聴きやすい」と感じられるはずです。


懸念としては、ユーザーの耳穴の形状によってフィット感に個人差が出やすいことでしょうか。これはインナーイヤースタイルの共通の課題であり、筆者のまわりにはアップルのAirPodsや、有線タイプのEarPodsが「耳もとで安定しないから苦手」という人も少なくありませんでした。何度も繰り返しますが、長く愛用できるイヤホンと出会うためには「購入前の試着」を欠かさず行うことが肝要です。
【LinkBuds Openはこんな人におすすめ】
・従来のイヤホンと同じような装着スタイルが好み(=耳かけやイヤーカフが自分には合わない)
・イヤホンは「軽さ」を重視したい(比較的軽量な製品が多いので)
・デザインも個性的なイヤホンがほしい
オープン型は開放的なリスニング感と装着感が魅力!
イヤホンはポータブルオーディオ機器なので、「音の好み」を最重視するべきであることも付け加えておきます。購入を検討する際にはショップなどで実機を試着し、可能なら自分のスマホにペアリングして、いつもよく聴いている音楽を試聴できればベストです。
オープン型イヤホンは開放的なリスニング感と装着感、そして「ながら聴き」が楽しみやすいところが大きな特徴です。反面、耳栓タイプのイヤホンに比べれば音漏れは起きやすいので、地下鉄や飛行機の中など、大きな騒音に囲まれる場所では使いにくい場面も。密閉型イヤホンと併用して、それぞれをシーンごとに使い分けるというのもいいでしょう。