【西田宗千佳連載】どうやってスマートウォッチは市場に定着したのか?

ink_pen 2026/1/13
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【西田宗千佳連載】どうやってスマートウォッチは市場に定着したのか?
西田宗千佳
にしだむねちか
西田宗千佳

モバイル機器、PC、家電などに精通するフリージャーナリスト。取材記事を雑誌や新聞などに寄稿するほか、テレビ番組などの監修も手がける。ツイッターアカウントは@mnishi41。

Vol.157-2

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回はApple Watchに新たに備わった「高血圧のパターン通知」機能。あらゆる病気の要因ともなる高血圧にアップルが注目した要因とは何か。

 

今月の注目アイテム

アップル

Apple Watch Series 11

6万4800円~(税込)

↑高血圧パターンの通知のほかに、心電図アプリやバイタルアプリも搭載し、健康状態を理解して最新の情報を受け取れる。睡眠の質を理解して回復力を高めるために毎晩の睡眠データを分析する「睡眠スコア」も利用可能だ。

現在のスマートウォッチにおいて「健康」「安全」が重要なテーマであるのは疑いない。ただ、スマートウォッチが登場したばかりのころは、市場の状況はかなり違った。

Apple Watchを含め、当初の製品で重視されていたのは「スマートフォンの通知を表示する機能」であり、「スマートウォッチの上で動作するアプリ」だった。スマホの持つ一部の機能を腕時計に持たせることで、ある種ポストスマホとしての役割を担わせたかったのだろう。実際、報道などでもそのような流れのものが多かった。

しかしその後、スマートウォッチをポストスマホに位置付ける人はいなくなる。通知がわかっても、小さな画面でできることには限りがあるからだ。スマートウォッチ向けアプリ市場はスマホアプリのようには盛り上がることはなく、一時、スマートウォッチ市場は伸び悩む状況になった。

それが変わってきたのが、フィットネス向けのニーズにシフトしてからだ。フィットネス向けに歩数や走行距離、カロリーなどを検出する「スマートバンド」は、スマートウォッチ登場以前から存在した。振動センサーなどを内蔵すれば作れることはわかっており、スマートウォッチにもその種のセンサーは内蔵される傾向にあった。

ポストスマホ的なニーズが小さくなる一方で、スマートウォッチの「常に付け続ける」という要素から、その情報で運動状況を把握しようという流れが生まれる。アップルで言えば、2014年に「HealthKit」が作られ、iPhoneのなかで持続的にヘルスケアデータが蓄積される仕組みができあがってから、ということになる。もう10年以上が経過しようとしているが、実際にヘルスケアで売り上げが上向いたのは、2017年頃からと言っていい。

その間にセンサーも進化し、活用は容易になってきた。当初は振動検知による歩数計測が中心だったが、その後光学式の心拍センサーが搭載されるようになり、皮膚温や心電図などの計測も可能になっている。

どれも医療用機器に使われるものとは異なるセンサーを使っており、単純な精度という意味では、医療機器に劣る。しかし、長期的に使うこと、それらデータから統計的価値を計測することで、各種計測値を「生活のなかでの傾向」として捉えるようになっているのが特徴だ。

例えば、皮膚温センサーは体温計ではなく、皮膚温が睡眠中などにどう変化するかで、特に女性の体調を把握するために使われている。Apple Watchで2025年年末から可能になった「高血圧パターンの通知」も、あくまで、30日にわたる各種情報から「高血圧になっている可能性がある」ことを通知するもの。血圧そのものを測るわけではない。

このような形になっているのは、「手につけるだけ」「低コスト」という条件で測れるデータには制限があるからだ。だが、そのような制限があっても、体調悪化の事前把握や健康状態の把握には有用と判断されている。 では、そうした情報は医療の現場でどう捉えられているのか? その点は次回解説していく。


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