2026年はスマートグラスがブレイクする年になるかもしれません。たとえば、グーグルは独自OSのAndroid XRとAIアシスタント「Gemini」を搭載する本格的なスマートグラスの年内発売を予告したことでちょっとした話題を呼びました。
そんな期待が高まる中、中国のテック系スタートアップであるXREAL(エックスリアル)から、エンターテインメント体験の向上を目指した新しいスマートグラス「XREAL 1S」が発売されます。1月下旬予定の販売開始に先駆けて、本機のファーストインプレッションをお届けします。

煩わしさが解消されたX1チップ搭載機。応答性向上でゲームもプレイしやすく
XREALは2017年に中国で誕生したベンチャー企業です。前身であるNreal(エンリアル)の時代から、メガネ型のスマートグラスを中心に、その時々の最先端技術を採り入れたデバイスを手がけています。
ちなみに昨年2025年は、XREALが大きな飛躍を遂げた年になりました。初めて自社で開発したスマートグラス向けのシステムICチップである「X1」を載せたハイエンドモデル「XREAL One」と、フラグシップモデルの「XREAL One Pro」を発売したからです。今回レポートするXREAL 1Sも、同じX1チップを搭載する最新モデルです。

XREAL 1Sの発売後も、従来機であるXREAL One ProとXREAL Oneは併売されます。メーカー直販サイトの「XREAL SHOP」では、XREAL One Proが84,980円(税込)、XREAL Oneが62,980円(税込)で販売されています。
XREAL 1Sは67,980円(税込)。今後ラインナップの再編が検討されるかもしれませんが、2026年1月現在は3つのモデルが併売されているわけです。XREAL 1Sは自社製チップのX1を載せた、エンターテインメント仕様の最新スマートグラスに位置付けられます。
これらのスマートグラスは、USB-C DisplayPort ALTモード(以下、DPモード)に対応するスマホやタブレット、PCなどに接続し、外部ディスプレイとして映像を表示します。では、X1チップを採用したXREAL 1Sにはどんな特徴があるのでしょうか? 基本的には、出力機器との互換性アップ、表示や操作のレスポンス向上が従来機種に対する大きなメリットと言えます。
X1チップを搭載する以前のモデルでは、AR空間内に複数のウィンドウを配置してマルチタスクをこなしたり、視線に対してウィンドウをAR空間内に固定したりする機能を、公式ソフトウェアや「XREAL Beam」のような拡張デバイスなしでは利用できませんでした。XREAL 1Sは、DPモードに対応するiPhone 17 ProシリーズやPCにダイレクト接続すればそうした機能を単独で使えるほか、2Dコンテンツを3D立体視に変換する新機能なども簡単に利用できます。
ゲームコンテンツを再生したときにも、映像入力から表示までの処理をスマートグラス内部で完結できるので、例えば空間補正などによる余分な処理遅延が抑えられ、ゲーム操作に対する映像の応答性が向上します。

XREAL初のリアルタイム2D/3D変換に対応
XREAL 1Sが「エンターテインメントに振った」スマートグラスであることを示す根拠はいくつかあります。他のデバイスとの最大の違いは、表示する写真や動画を「リアルタイムに2D→3D変換できる機能」が、同社製品の中で初めて搭載されたことです。
映像表示の明るさも最大700nitsと高く、これは最上位モデルのProと同等です。加えて、ソニー製マイクロOLEDディスプレイは片目あたり最大1920×1200ドットの表示解像度を実現しており、まずまず精細な映像を楽しめます。映像の視野角は52度とProよりも5度ほど狭くなっていますが、筆者はそこに大きな違いを感じませんでした。AR空間の中では、52度の視野角を保ったまま、「10メートル先に最大385インチ相当のスクリーン」が再現されます。

XREALが発売する専用アクセサリーの「XREAL Eye」にも対応。こちらを装着すれば、XREAL 1S単体の3DoF(頭の回転動作に対する表示追従)に加え、空間に固定された仮想スクリーンに近づいたり離れたりできる6DoF体験を実現できます。
さらに、スマートグラスに接続したスマホなどのデバイスを充電しつつ、コンテンツの映像や音声をパススルー出力もできるモバイルドック「XREAL Neo」も14,580円(税込)で発売中です。XREAL Neoを介してゲーム機とスマートグラスをつなげば、Nintendo Switch 2のTVモードなども楽しめます。総じて、アクセサリーによる拡張を含めればできることは多めです。
とは言え、XREAL 1Sは基本的には「2D/3D変換機能を駆使しながら高精細な立体コンテンツを楽しむ用途に長けたスマートグラス」なので、最初は単体で買って使い倒してみるのがよいでしょう。

スマホやPCとの接続はシンプル
さっそく、XREAL 1SをiPhone 17 Proに接続してコンテンツを体験しました。
本機はOST(光学シースルー)タイプのスマートグラスです。メガネで言うところのレンズにあたる箇所に配置されたハーフミラーに、マイクロOLEDディスプレイの映像が投射され、ユーザーはこの映像を視聴します。レンズ部分は透過表示になるので、コンテンツを映し出すと、映像が現実空間に浮かんでいるような視聴感になります。
最大700nitsと高い輝度性能を持っているので、本体の設定から全3段階が選べる透過表示を下げると、iPhoneのカメラで撮影した写真やビデオが、日中の明るい場所でも色鮮やかに見られます。iPad ProやMacBook Proにつないでみると、Webページなどのテキストもしっかりと読めました。
Apple Vision ProのようなヘッドギアタイプのXR/ARデバイスより一般的なサングラスに近いデザインであることもXREAL 1Sの大きなメリットでしょう。デバイスとの接続がUSBケーブルによる有線接続に限られていることが残念ですが、それでも本機をカフェやオフィス、飛行機の中などでかけながら映画を観たり、パソコンのサブモニターとして使っていたりしても、筆者の場合はあまり周囲に注目されることはありませんでした。

AR空間内での画面の表示スタイルは「追跡」を選択しておけば、ユーザーの頭の動きに合わせて画面が目線の正面に移動するので、スマートグラスを装着したまま自然に身動きが取れます。「固定」を選ぶと、スマートグラスをかけたまま視線を1点に集中しなければならないため、長時間の映像コンテンツを視聴すると疲れます。デスクワークのセカンドディスプレイ的に使うのであれば、スマートグラスが表示する画面を「視線から外せる」ので、「固定」モードの方が実用的と言えます。
3Dモードの自然な立体効果を体験
2Dから3Dへのリアルタイム変換の映像も視聴しました。本体右側のフレームに、下向きに搭載されているオレンジ色の「Xボタン」をダブルクリックすると、各設定メニューが表示されます。「空間スクリーン」の項目から「3D表示モード」に入り、「3Dスペース」を有効にするだけで、以降はすべての表示が3Dモードに変換されます。
3D変換はとてもスムーズで、かなりの部分まで自然に画像・映像を3D化してくれます。あらゆるものが3D化されるので、見慣れたコンテンツも新鮮に楽しめるのはこのデバイスならではのおもしろさでしょう。
3D表示の強調感は、同じ空間スクリーンのメニュー内にある「3Dエフェクト」から4段階で好みのバランスに調整できます。写真は立体感を強調した方が楽しめますが、YouTubeなどビデオコンテンツをゆったりと楽しみたいときには、最も強調感が弱い「ソフト」に設定した方が疲れを感じにくい印象です。強調感を強くし過ぎると、動画内のテロップの文字なども立体表示になってしまい、バラエティやニュース系のコンテンツでは特にその違和感が気になりました。

スピーカーはオーディオブランドのボーズがサウンド監修をしており、左側フレームの左内側に「Sound by Bose」のロゴがプリントされています。オーディオに関しては本体に特別な設定項目はなく、音量のアップダウンのみ調整可能です。かなりパワフルなサウンドが楽しめる一方で、最近人気のオープン型イヤホンに比べると“音もれ”があります。音付きのコンテンツを視聴する際には周囲の迷惑にならないように気をつける必要があるでしょう。

上位の「One Pro」とどちらを選ぶ? 3DならXREAL 1S一択
XREAL 1Sはふつうのサングラスと同程度のサイズで、付属するUSB-Cケーブルと一緒に持ち歩けば、いつでもARエンターテインメントが楽しめるポータビリティに富んだスマートグラスです。スマホに直結しながら使う際、スマホのバッテリーが減り続けることが気になる方は、同時に発売されるXREAL Neoを買い揃えれば、飛行機の中などでも心おきなく長尺の映像コンテンツやゲームも楽しめるでしょう。

ふつうのサングラスとほとんど変わらない大きさだからこそ、メガネの上からかけて使うことが難しいサイズ感とも言えます。メガネの方は別途コンタクトレンズを装着するか、あるいは本機専用の度付きインサートレンズを東京都内の眼鏡店「JUN GINZA」でオーダーメイドする方法もあります(追加費用はかかりますが……)。
ちなみに装着感については、光の反射を抑えつつ軽量化した独自開発の光学エンジン「X Prism」を載せているXREAL One Proの方が、画面のチラつきも少なく快適です。どちらを選ぶかは悩ましいところですが、現状3D変換はXREAL 1Sのみの機能なので、ここに価値を見出すならXREAL 1S一択。一方で、PC作業用のAR空間ディスプレイとしてスマートグラスを使いたい方にはProがおすすめです。

なお、XREALはAndroid XRとGeminiを搭載する次世代の空間コンピューティングデバイス「Project Aura(仮称)」の年内発売を予告しています。特にエンターテインメント以外の用途にもスマートグラスを活用してみたい方は、Project Auraと他のXREALのスマートグラスを比較検討してから、自分の期待にもっとも合うモデルを選ぶのが賢明かもしれません。