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スマホゲーム
2018/9/21 21:30

スマホRPG「FGO」が覇権ゲームとなった4つの理由

「パズル&ドラゴンズ」に「モンスターストライク」――スマホゲームで覇権を取ったタイトルというとこれらの名前がよく挙がりますが、最近「覇権ゲーム」になったと言われているのが「Fate/Grand Order(以下、FGO)」。2018年上半期のモバイルゲーム売上で首位に躍り出たというニュースはゲーム界に衝撃をもたらしました。

↑「FGO」は基本無料で、一部アプリ内課金あり。iOS/Andorid対応

 

「FGO」は3年前の2015年夏に配信がスタートした英霊を召喚して戦うRPG。国内では1400万DLを突破し、全世界でも今年6月の時点で3000万DLを超えています。一体何がユーザーを惹きつけ、群雄割拠のスマホ市場で頭ひとつ抜け出す結果となったのでしょうか。

↑戦闘はターン制の3人パーティ式コマンドバトル。毎ターンごとに配られる攻撃カードを選んで指示を出す

 

【理由その1】積み上げてきたコンテンツ力の高さ

1つ目は、作品の持っているポテンシャルの高さ。「FGO」は伝説的なPC向けビジュアルノベル「Fate/stay night」から広がる「Fate」世界観に連なっています。

 

同人ゲームながら異例のブレイクを果たした「月姫」を制作した「TYPE-MOON」の商業作品第1弾として2004年にリリースされたのが「Fate/stay night」。シナリオライター・奈須きのこ氏が生み出した濃厚な物語世界は、その後複数回アニメ展開され、また「魔法少女まどか☆マギカ」の虚淵 玄氏によるスピンオフ小説「Fate/Zero」など、多くのクリエイターが世界観を広げる外伝小説を手がけました。

 

今回の「FGO」のヒットは、こうして積み重ねられてきたコンテンツの力がスマホアプリという形で開花した結果と見ることもできます。

↑新シナリオだが、「Fate/stay night」のセイバーオルタなどシリーズのキャラも登場する

 

【理由その2】圧倒的なテキスト量でスマホゲームを革命した

ノベルゲームの系譜を継いでいる「FGO」は、そのストーリーの分厚さで他のスマホゲームを圧倒しています。

 

キャラのカードを集めるスマホゲームの多くは、キャラ絵がメインでストーリーはオマケ……というのが常識でしたが、それを覆したのが「FGO」。配信当初は100万字、いまではトータル500万字を超えるともいわれる大ボリュームを誇ります。

 

また、完結させる物語を明言しており、2016年末には第1部が完結(現在は第2部が進行中)。スマホゲームでありながら完結のカタルシスが得られ、ファンには非常に好評でした。

 

このボリューム感とカタルシスがウケたのは、スマホゲームがスキマ時間に遊ぶサブ的な存在から、メインの娯楽へと移行しつつあるのも関係しているでしょう。「FGO」のヒットで、今後はスマホゲームにも高い水準でシナリオの質と量が求められるようになるはずです。

↑人類史を正すため7つある歴史の特異点へ跳ぶシナリオ。アドベンチャー形式で選択肢も挟まる

 

【理由その3】歴史人物を丁寧にキャラ化、萌えを超えたカッコ良さ

「FGO」は歴史人物や神話の英雄をモチーフとした「サーヴァント(英霊)」たちを召喚して戦っていきます。このサーヴァントが男女キャラともに萌えを超えてカッコいいのが特徴です。男性向け・女性向けとターゲットを絞っていないのも、「FGO」が覇権を取れた理由でしょう。

 

また、個々のキャラには詳細な設定があり、いわゆるサブキャラにも愛着が湧くのがポイント。どの人物も丁寧にフィクション化されていて、作り手の愛情を感じます。パーティの編成にはコスト制限があり、また“スキル”といった要素があることでレア度が低いキャラも工夫次第で活躍が可能。ゲームバランスに配慮しつつ、システム面でもキャラ全体に目が行く構造をとっています。

 

ジャンヌ・ダルクや土方歳三といった誰もが知る有名人はもちろん、アッティラやダレイオス三世といった世界史の授業で聞いたことがあるような……という人物が登場するというのも、「Fate」シリーズに初めて触れるユーザーにとってはとっつきやすいフックになっています。

↑音楽家のモーツァルト。神話から実在の人物まで、さまざまなジャンルから登場

 

【理由その4】どっぷりマイペースに浸れる“ぼっちゲー”

「FGO」はチームを組んで一緒に戦ったり、フレンドとゲーム内でチャットをしたりといった流行りのソーシャル要素はほとんどありません。基本的に自分ひとりで戦闘を繰り返し、シナリオを進めていくマイペースなゲームです。このじっくり物語世界に浸れる感覚も、「FGO」人気を支えるひとつの要因ではないでしょうか。

 

確かにソーシャル要素はプレイヤーをゲームにつなぎとめる強い動機となりますが、そのぶん、さまざまな縛り・しがらみも出てきます。ひとりで思う存分楽しめる「FGO」は、スマホゲーム界のなかでは意外にも貴重といえます。

↑人類を守るため「人理継続保障機関・カルデア」に属する主人公が戦う熱いストーリー

 

「ガチャが渋い」のもヒットの理由!?

そのほか、「ガチャ(※)が渋い」というのも売上につながっているといえそうです。「FGO」は「ガチャが渋い」とよく言われますが、これはガチャが管理されていてインフレに陥っていないことの裏返しともとれます。

※ゲーム内で使用するアイテムなどを抽選式(ランダム)で入手できる仕組み。通常はアイテム課金要素の1つとして用意されることが多い

 

人気取りのため、やたらにガチャを引かせるゲームも目立ちますが、ガチャのインフレはキャラや装備のインフレにつながり、結局はコンテンツの寿命を縮めることになります。この点も考慮されていそうです。

 

ここまで4つの理由+αを挙げてきましたが、やはり1番大きいのは物語の強さ。最初は膨大なテキスト量に面食らうかもしれませんが、読めば読むほど深みにハマっていく魅力が「FGO」にはあるのです。