ゲーム&ホビー
2019/6/10 17:50

VTuber文化が「マインクラフト」実況で開く新しい表現~なぜVTuberはマイクラをやるのか~

VTuberのゲーム実況配信で増えているのが、「マインクラフト」(以下マイクラ)。

四角いローポリゴンの世界を歩き回り、敵と戦ったり、資材を採掘して建造物を立てたりと、割と何でもできるゲームです。

2009年から世界中で遊ばれている作品で、以前から数多くのゲーム実況者がプレイしており、専門配信者も多い一大ジャンルになっています。

VTuberたちのマイクラはその流れを汲んでいるかというと、ちょっと違うかもしれません。というのも、VTuberが爆発的に増えた2018年初頭でマイクラをやっている人は、今ほどいなかったからです。

最近の動画を見ていると、VTuberとマイクラは相性が非常に良いのがわかります。ゲーム実況というよりも、配信ツールとして使用されることが増えてきたマイクラ。VTuber配信との親和性を見てみます。

 

簡単にコラボが成立する

マイクラはオンラインにサーバーを作っておけば、同じフィールド上に許可された人が何人でも入れる状態になります。

にじさんじ、ホロライブ、有閑喫茶あにまーれ、ぱりぷろ、ドットライブなどは、メンバーが誰でも参加できる共有サーバーを設置、管理しています。

にじさんじはメンバーの1人ドーラが有志でサーバー管理中。現在かなりのVTuberが、このサーバーに参加しています。

これによってにじさんじライバーは、マイクラに入れば、誰とでもすぐ一緒に並んで動けるという、気軽なコラボ環境が生まれました。VRChatの簡易版、ルールが自由なMMORPGといったところ。

接点が今までなかった人と出会えるのも大きい利点です。特に約束していなくても、自分の好みのタイミングでログインできます。

その場合、全体チャットで存在がわかるので、会話することも、会いに行くことも可能です。

 

鷹宮リオンを中心としたメンバーは、みんなで遊園地を作るという、ものすごく大掛かりなプロジェクトを進めています。

参加者も多く、取りまとめるのが大変すぎる内容ですが、マイクラだと入るのも抜けるのも自分のタイミングでできるので、かなり楽。気まぐれに入って活動していても、偶発的なコラボが成立します。このスタイルで、共同の建築を行うライバーは多いです。

その一方で、落書き立て札を残していったりなど、人の建築にちょっかいを出してジャマをすることも可能。お互いに干渉しあえる様子が、視聴者から見ていて非常に楽しい。

 

グループBANsでも同じサーバーでマイクラをやっています。天開 司はものすごい長時間配信を、垂れ流し配信的に行っていることが多いVTuber。

彼がマイクラをやっている時に、色々な人が出たり入ったりする。時折マイクラ内でじゃれあう。さながら巨大なシェアハウスか学校の教室の一日を見ているかのようです。

 

2Dアバターキャラクターが擬似的に3D化できる

にじさんじ、ホロライブ、ぱりぷろなど、元々2Dアバターで活動開始しているグループにとって、簡単に3D化してXYZ軸に動けるというのはものすごい大きなメリット。

 

これはにじさんじの花畑チャイカらが行ったコラボ配信。ちょうど同時期に、月ノ美兎ら3人がプラットホーム「REALITY」でオリジナル3Dモデルで活動したのを受けて、2Dアバターの3人がパロディ配信をした、という内容。

四角いシンプルなポリゴンですが、テクスチャでかなりそれっぽく再現されています。見るとわかるように、意外とできることが多い。

頭を使ってシステムを組み合わせれば、花が降ってくるような、いかにも3Dプラットホームっぽいギミックも工夫次第で使えます。

 

ホロライブサーバーでは、みんなで制作したワールドを、ときのそらが見学。普段はときのそらは3Dモデル、他の面々はほとんどが2Dモデル。同じ空間に並ぶのが難しい。

しかしホロライブサーバーの中にいれば、みんな一緒にいられます。ホロライブメンバー3人がときのそらを案内して世界を歩く様子が、先輩と後輩がじゃれているかのようでとてもかわいらしい。

ホロライブワールドはめちゃくちゃに凝った建造物も多く、見ごたえがあります。

 

同じホロライブの3Dのロボ子と、2Dの夏色まつりも、自然に同じ空間で動いて作業しています。マイクラは次元の違うコラボの壁を、すんなり壊しました。

 

クリエイティブな作品を作ってみんなで見られる

 

椎名唯華らが作ったサグラダ・ファミリア。にじさんじサーバーでもひときわ目立つ存在なので、集合場所としてもよく使われるようです。

配信で作って見てもらうのも楽しいのですが、他のメンバーがその建造物やオブジェを発見して、上下左右から直に触れられちゃう。バーチャル美術館的な遊び方も可能です。

 

もユニークな建造物を作って、視聴者を楽しませるのが好きな配信者の1人。ここで作っているのは、水とマグマが流れるオブジェ「世界」。

マグマは触れるとあらゆるものを溶かしてしまうため、扱いが非常に難しいのですが、見事に使いこなしています。夜になると、赤と青が光って幻想的に。発見した他のライバーが、様々の配信で感想を述べているのを見るだけでも楽しい。

共同サーバーの難点は、間違って壊してしまう可能性もあるということ。もっとも叶本人も配信で言っていますが、作るだけであればソロのサーバーでやればいい。

作ったり、壊れたり、いたずらされたり。その交流も含めて、マイクラ内の作品であり物語です。

 

ルールを作ってイベントができる

 

緑仙鷹宮リオンらが中心になって行ったのは、約30人の大人数が集まって殺し合いをし、生き残るバトルロワイヤルゲーム。マイクラはプレイヤー同士で攻撃しあえるのを利用したものです。

とはいえ無秩序にやると不公平になる。決められたシステムとルールの中で行えるように、かなり整えられています。どんなルールなのかは実際に動画を見てみてください。マイクラはここまでできるのかとびっくり。

対戦形式なので、一つのマップにかなりの人数が参加しています。参加したライバーそれぞれが自分の視点で配信をしていました。

一つの試合を多視点で見ることができるのは、3D空間を動くマイクラコラボならではです。

 

笹木咲がにじさんじを卒業した際(今は復帰しています)、同じグループの仲間たちが、マイクラ内に体育館を制作して卒業式を行いました。

実際に卒業証書まで作って渡すこだわりっぷり。また誕生日祝いとして、オリジナルのお祝いルームも制作しています。

形を残して記念にすることができるので、イベントごとにはもってこいです。それを作る過程を配信するのも、またエンタメ。

 

世界中のファンが参加できる

 

 

キズナアイの公式サーバーは、普段は彼女本人は入っていません。

視聴者から定期的に活動できる人を募って「キズナアイランド」をみんなで制作する、というプロジェクトが行われているサーバーです。

動画を見るとわかるのですが、マイクラ職人が集まっているので、できた作品の数々のクオリティが尋常ではない。建造物の見た目のクオリティもさることながら、音楽が鳴るギミックなどユニークなものだらけ。今もなお、規模を拡大し続けています。

参加しているメンバーが意思の統一をはかるために、掲示板にルールを書き込んで、みんなで遵守しているのが興味深い。連絡事項が特定の場所に書かれ、みんなに周知されています。

キズナアイが言ったわけではなく、参加者が自主的に決めて実行しているもののようです。マイクラは世界中で遊ばれているゲーム。なのでキズナアイランドには海外の人も参加しています。連絡用掲示板も多言語化しています。

制作風景は見ることができませんが、作った巨大空間を、キズナアイ本人が訪れて見学して楽しんでくれるというのは、ファンとしてはこれ以上ない喜び。ファン交流の場としても機能しています。

 

田中ヒメ・鈴木ヒナのチャンネルでも「女児女児帝国」が制作されています。これも視聴者が集まって作った巨大ワールド。上空に浮かぶ気球や、巨大壁画など、職人たちの腕が光ります。

動画を見るとヒメヒナファンが2人を追いかけてワイワイしている様子は、さながらアイドルとファンのよう。なかなか接触する機会がないだけにこれは貴重。

 

ドラマが生まれやすい

戦う、物を作る、開拓をする、という幅の広いゲーム性な上に、思いもしない人と一緒になりやすいシステムなだけに、全く考えていなかったドラマが非常に生まれやすいのもマイクラの特徴です。

 

にじさんじサーバーでかなりのやりこみを見せているベルモンド・バンデラスは、世界中のマイクラファンからも注目を浴びる人物です。

他の人の配信中も、裏でコツコツと作業をしている様子が(全体チャットで)頻繁に見られます。

そんな彼が一緒に冒険していた宇志海いちご。たまたまの事故で、非常に貴重なアイテムを紛失してしまいます。

悲しみにくれていた彼女にとった、ベルモンドのかっこよすぎる行動に、数多くのファンが拍手喝采。劇的な展開が感動を呼びました。

 

ベルモンド・バンデラスと、群道美玲夢月ロアとのコラボ。幼いロアを、女教師美玲が家に時々かくまっている、という関係の2人。

保護者と子供のような距離感の2人を、ベルモンドがエスコートして世界を旅させています。

2人のはしゃぎっぷりと、ベルモンドの下準備と思いやりが作る優しい空間は、まるで一本の映画を見ているかのよう。

 

本間ひまわりは、この回でログインした時、自分が巨大墓地にいることに気が付きます。

これは宇志海いちごが作った空間が、あまりにも不気味な雰囲気に慄いてしまいます。

自らの名前が書かれた墓地を見つけ、ふと好奇心がわいて手を出した瞬間、彼女は二度と出られなくなってしまう……。ホラーゲームよりはるかに怖い体験を見ることが出来ます。

アーカイブは残っていませんが、ドットライブのもこ田めめめが仕込んだ罠に電脳少女シロがまんまと引っかかってしまい、地面がごっそりえぐれるほどの大爆発を起こしてしまったことがありました。

あまりの撮れ高に、視聴者も大盛り上がり。VTuberの中には熟練のマイクラ職人もいるので、こういう「同じサーバーの仲間を驚かせる遊び」もできます。

 

雑談がしやすい

ゲーム実況は、当然ゲームへの集中が必要です。マイクラも何かを新たに作る際は脳を使います。

しかし採掘作業や整地(建物を立てるために、デコボコの土地をならすこと)や移動の際は、あまりゲーム的な思考をしません。

そのため非常に雑談がしやすい。顔だけしか映していない状態で雑談するよりも見映えがよい、という利点もあるので「とりあえずマイクラ」というVTuberもかなりいます。

マイクラは今は、特にブーム。もっとも「作る」ゲームなので、人気が廃れることはまずないでしょう。むしろベルモンド・バンデラスのように、マイクラファンがVTuberの配信を見に来る、という流れも起こりはじめています。

マイクラ配信はまだまだ可能性が広がりそうに感じられます。VTuberの配信ツールとして、さらなる遊びの幅に期待したいところです。

【筆者プロフィール】
tamagomago
たまごまご
オタク系・サブカル系ライター。ねとらぼ、エキレビ!、MoguraVR、コンプティーク、Vティークなどで、マンガ・アニメとVTuberの記事をメインに執筆中。女の子が殴り合うマンガが好きです。
たまごまごごはん
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