ゲーム&ホビー
2021/7/3 19:15

“トキワの森”は実在した! 7.17オープン「ポケモンワンダー」の魅力をポケモン世代ど真ん中のライターがガッツリ語る

ポケモン史上初のネイチャーアドベンチャー、「ポケモンワンダー」がオープンするという。

 

筆者は1989年生まれの32歳。初代のポケモン赤・緑が登場したときは小学2年生で、まさにポケモンとともに成長してきた世代だ。人生で初めて並んで買ったゲームソフトはポケモン金・銀で、どこの店舗に並んだかもしっかり記憶している。大学生になってからはオンライン対戦のシングルバトルにのめり込み、上位帯に食い込むため、計算ツールを走らせてはポケモンの育成法を連日考えていたのは青春の忘れ難い1ページだ。社会人になってからも、プレイ時間こそ限られるものの、最新作の「ソード・シールド」もプレイしている。

 

そんな筆者が、この「ポケモンワンダー」のメディア先行体験会に参加してきた。「自分が子どものころにこれが欲しかった!」と思わされた、その内容についてたっぷりとレポートしていきたい。

 

ポケモン誕生の背景にあった「昆虫採集」

「ポケモンワンダー」は、リアルな自然を探索しながら、フィールドの随所に隠れたポケモンを探していくアトラクション。東京都稲城市の遊園地・よみうりランド内に、7月17日にオープンを予定している。体験会に先立って開催された説明会に登壇した、株式会社ポケモンの代表取締役社長・石原恒和さんは、このアトラクションについて「ポケモンの歴史において、最も原始的、初元的な体験」「初代、赤・緑バージョンに登場するポケモントレーナー『むしとりしょうねん』のような体験ができるのでは」と語っていた。

↑ポケモン社長の石原さん。柔和な語り口で、ポケモンの歴史と「ポケモンワンダー」の魅力を語る

 

「むしとりしょうねん」といえば、初代ポケモンの最初のダンジョン「トキワのもり」に登場するポケモントレーナーだ。その名の通り、キャタピーやトランセル、ビードルやコクーンといったむしタイプのポケモンの使い手である彼らと戦った記憶は、筆者の脳裏にも焼き付いている。むしタイプが対戦において強いタイプではないこともあり、特段手強い相手ではなかったのだが、それでもポケモンの世界で暮らせるのはうらやましい。石原さんのプレゼンテーションは、幼少期のそんな記憶を久々に蘇らせてくれた。

 

さて、「ポケモンワンダー」の世界では、20年近く手付かずだったという実在の森のなかで、自らの身体や頭を使ってポケモンを探していく。渡されたマップと決して多くはないヒントだけを手がかりに、自分の足を動かし、草をかき分け、時には泥んこになりながら森を調査をしていく体験は、まさに虫取りの感覚に近いというわけだ。自分の足でポケモンを探すという点では「ポケモンGO」も同じだが、今回探検する森の中では、デジタルツールはポケモン探しの手助けにならない。石原さんの「原始的」という言葉は、それを意味している。

↑冒険の手がかりとなるマップ。新しいエリアに進出すると、新たなマップを見ながらポケモンの調査を進めることになる

 

石原さんによれば、ポケモンの原点はまさにその「昆虫採集」だったという。ポケモンの生みの親であるゲームクリエイターの田尻 智さんは、「ポケモンワンダー」の舞台からほど近い、町田市の生まれ。自然が身近にある環境で育った彼は、幼少期の虫取りの体験から、ポケモンという国民的なキャラクターを生み出したのだ。

 

現実の昆虫採集では、“火の中水の中草の中森の中土の中雲の中あのコのスカートの中”にまで虫をゲットしに行くわけではない。けれど、自分で考え手探りをして虫を捕まえる感覚は、現実のポケモン採集と近いものがあるように思う。新しいポケモンのゲームソフトが出たときの、草むらに自ら飛び込んで未知のポケモンとの出会いを楽しむ感覚は、実は現実でも味わえるものだったのだ。

↑20年近く手付かずだったという森には木々がうっそうと茂っており、まさに自然そのもの

 

「ポケモンワンダー」は、「虫」を「ポケモン」に置き換えることで、自然と触れる機会が少なくなりがちな現代の子どもたちにも、森の中に足を踏み入れるきっかけを提供してくれる。

 

「アゲハ蝶のサナギに興味を持った娘に、『その蝶を部屋に入れよう』と提案してみたら『絶対にダメ!』 というんです。興味を持っていても自分からは触れたがらない。そんな子どもでも、虫ではなくポケモンなら、頑張って探そうとするんです。自然の生き物を見つけるのと同じ感覚で、ポケモンを見つけて欲しい」

 

そう語ったのは、同アトラクションの技術やクリエイティブを担当した、クリエイティブディレクター・本山敬一さん。「ポケモンワンダー」には、クリエイターのリアルな親心がこもった仕掛けが満載なのだ。

↑本山さんは、これまでにも「ポケモンGO」などの作品制作に参加。ポケモンと深く関わってきたクリエイターだ

 

夢と冒険と! ポケットモンスターの世界へ!レッツゴー!

「ポケモンワンダー」に入場すると、まずはリサーチャーロビーでクレソ博士によるチュートリアルを受ける。そこでポケモン探しのヒントが記されたマップと記録用のカメラをもらい、「さあ…夢と冒険と! ポケットモンスターの世界へ!レッツゴー!」というわけだ。

 

ゲームのポケモンで冒険が始まる際のお決まりの文章を書いてみたわけだが、ポケモンの世界を自分の足で歩く、それだけでも筆者にとっては斬新な感覚だった。この世界ではスマホなどいらないのだ。

↑冒険のスタート地点となるリサーチャーロビー

 

↑リサーチャーロビーの内観。大きな黒板に描かれたマップが、冒険心を昂らせる

 

説明を受け終わり最初のマップとカメラを受け取ると、森の中を通ってたくさんのポケモンが潜む5つのエリアに向かう。木々がうっそうと茂り霧も発生するその道は、ありのままの自然を活かしつつ、アーティストによる演出を加えたものだ。取材日は湿気が多かったせいか、霧が濃く足元に気をつけながら進むことになったが、それも冒険している感覚を増幅してくれるものだった。

↑この霧もアーティストによる演出なのだそう。霧の濃さはその日の天気や湿度にもよるが、その濃度によっては目の前が真っ白になる

 

今回プレイヤーが探索する「イナギの森」は、「ワンダーフィールド」「こもれび空き地」「先人の書斎」「古代の石垣」「ささやきの竹林」という5つのエリアで構成されている。各エリアに設けられた10分前後の制限時間を頭に入れながら、草むらに足を踏み入れ、あるいは木を揺らし、時には隠された仕掛けを解いていくのだが……その難易度は決して低いものではない。ひらめきだけでなく、直感、あるいはポケモンの生態も考慮しないとならず、大人でも全てのポケモンを時間内に見つけるのは困難だ。

↑エリア「先人の書斎」の入り口。かつてバードウォッチングに使われていた小屋がそのまま活用されていて、いかにも何かが飛び出してきそうな雰囲気だ

 

↑中央からやや右下にいったところに、葉の虫食いに隠れたキャタピーを発見! ちなみに、これは割と見つけやすい方である(筆者の個人的感想)

 

先にも書いたように、「ポケモンワンダー」は子どもたちのための工夫がたくさん織り込まれている。冒険者に与えられるヒントはさまざまだが、「○○の草むらをかき分けろ!」といった具体的な場所や調査方法を示してくれるような、親切な案内はどこにもない。自分で場所を推測し、そこでなにをすれば見つかるのか考えて実行して、初めてポケモンにたどり着けるのだ。

↑各エリアには行き先を表す立札が立っているほか、マップの受け渡しなどをしてくれるスタッフが立っている。ポケモン探しに迷うことはあっても、道に迷うことはないのでその点は親切だ

 

本作の構成に携わった謎解きクリエイター・松丸亮吾さんが、「自分の意見を持ち、自分で考える。ポケモンに会えたという高揚感を目指しながら、謎を解くことの楽しみを味わって欲しい」と語っていたように、冒険の世界ではプレイヤーの思考力が問われる。またこのアトラクションには制限時間があり、その縛りが意外に厳しいため、思いついたことを次々と試していく行動力も必要だ。本作の世界は、子どもの才能を磨くためにも、まさに最適なフィールドといえる。

↑説明会に登壇した松丸さん。獣の足跡を森の中で捜索するなどフィールドワークを実施して、「ポケモンワンダー」の世界を作り上げたそう

 

↑今回の体験会において、筆者が「これは見つからん!」と思ったのがこのモクロー。この写真はカメラマンさんが分かりやすく撮ってくれたのでその存在を十分認識できるが、モクローのサイズが小さいのもあいまって、枝葉の間から見つけ出すのは至難の技だ

 

フィールドに配置されたポケモンは、自然を活かしたデザインになっている。たとえば、とあるむしポケモンは細長い葉を編むことで表現されていて、森の中で出会った彼は蝶の蛹にも似た色をしていた。ポケモン初の実写映画「名探偵ピカチュウ」でもリアルな世界に住むポケモンが描かれたが、「ポケモンワンダー」に登場するポケモンにはそれとはまた違ったリアリティがあると、筆者には感じられた。

↑ドングリのなかに、タネボーが紛れている。とてもリアルな質感のタネボーは、北海道どんぐりを使って手作りされたものだ

 

↑木の枝に乗ったトランセル。緑のなかに紛れられると意外に見つからないものだ

 

↑この写真にもポケモンが写っている。ぜひ自分の力で探してみて欲しい

 

↑こんな石垣にも、ポケモンが隠れている……かもしれない

 

筆者の子ども時代でも自然と触れる機会はそれほど多くなかったし、ましてやいまは新型コロナウイルスが流行していて、外出するのもままならない。「ポケモンワンダー」は、人を都会から自然の世界へと連れ出してくれる、いまの時代にまさにぴったりなポケモンのあり方ではあるまいか。

 

ポケモンワンダーの冒険に参加するには?

「ポケモンワンダー」への入場には、予約サイト「アソビュー!」内での事前予約が必要だ。価格は、大人(中学生以上)が4900円、小学生以下は1800円(ともに1名の通常価格。人数による割引あり)となっており、この料金にはよみうりランドへの入園料が含まれている。よみうりランド内のほかのアトラクションや、プールを利用する場合は別途料金が発生するので注意が必要だ。

 

なお、8月31日までの予約チケットは7月1日のアトラクション発表後、すぐに完売してしまい、現在販売停止中である。「ポケモンワンダー」は来年4月3日まで行われる予定なので、9月分以降の予約受付開始を待ちたい。

 

また、冒険のフィールドは、遊園地の敷地内といえど、「森」である。地面は舗装されていないから雨が降ればしばらくはぬかるむし、そのなかでポケモンを探すとなれば服が汚れるのは間違いない。筆者はぬかるんだ地面に足が滑り、危うく尻もちをつきそうになった。汚れてもいい、動きやすい服装は大人子ども問わず必須である。

↑「ポケモンワンダー」に行くなら、登山やキャンプをすると思って出かけたほうがいい。動きやすく、汚れても良い服装で、両手が使えるように持ち物はリュックやボディバッグにまとめていくのが賢明だ。サンダルやヒールのある靴は避け、雨の日なら長靴があると心強い

 

↑イナギの森には、むしポケモンだけでなく、リアルの虫も多い。虫除けスプレーを持参しないと後悔することになる

 

「ポケモンワンダー」の所要時間は約90分。ただ、今回のポケモンはゲームソフトではないので、肉体疲労はゲームの比ではない。他メディアの取材陣には「中年にはつらい!」と叫んでいる人もいたし、筆者の取材に同行してくれたカメラマンさんによれば「高尾山に登るようなもの」。

 

実際、よみうりランドへアクセスする際には、京王線の京王よみうりランド駅からゴンドラで向かうことになる(あるいは、小田急線の読売ランド前駅からバスでもアクセス可能)。その意味でも、登山に似た感覚があったように思う。

↑帰りのゴンドラから眺めたイナギの森。やはりトキワの森を意識しているのか(?)、ピカチュウが出てきていた

 

筆者にとって、コロナ禍の気分転換や運動不足解消にはもちろん、童心に帰りながら、ポケモンの新たな魅力にも気づく機会となった今回の体験会。チケットは結構な争奪戦だが、予約受付再開のあかつきには、1人のプレイヤーとしてこの森を再訪したいと思っている。

 

もし、筆者が子どものころにこの「ポケモンワンダー」の世界に足を踏み入れていたら。自然の魅力により早く気付くことができたかもしれないし、もしかしたら生物の不思議を探究する研究者になっていたりするかもしれない。稲城市に出現したこの森は、多くの人に様々な「夢」を与えてくれるものになるだろう。

 

余談ではあるが、体験会当日朝に確認した降水確率は100%だったのに、現地で雨に降られることは一切なかった。あの日のイナギの森には、「あめふらし」でおなじみのニョロトノやぺリッパーはいなかったのだろう。あるいは「ひでり」のコータスやキュウコンが取材陣を助けてくれたのだろうか。やはりポケモンの世界には夢がある。

 

「ポケモンワンダー」概要

・開催予定期間
2021年7月17日(土)~2022年4月3日(日)

・開催会場
よみうりランド内(東京都稲城市 矢野口4015-1)

・チケット内容
大人(中学生以上)通常料金 1名:4900円、小学生 通常料金 1名:1800円

・諸注意
※チケット代にはよみうりランド入園料、消費税が含まれています(プール・アトラクションを利用は別途料金が必要)
※参加料金については、「アソビュー!」購入ページを必ず事前に確認してください。
※所要時間:約90分
※1グループは最大6名まで
※安全管理上、未就学児の参加はできません
※小学生の参加には満18歳以上の大人の同伴(大人1名につき小学生2名まで:要参加料)が必要です
※キャンセル・返金・変更不可
※利用時間に受付会場に遅刻した場合、キャンセル扱いになります。読みうりランド入園口から受付会場へは約10分程度かかります。時間には余裕をもって来場してください