かつて任天堂アメリカ(NOA)社長兼CEOを務めていた「レジーさん」ことレジナルド・フィサメイさんが、新著『Disrupting the Game』を刊行し、その中で北米版Wii本体に『Wiiスポーツ』を同梱させたのは自分であることや、糸井重里さんのRPG『MOTHER3』がなぜ米国で発売されなかったかなど、いまだからこそ話せる裏事情を明かしています。
レジーさんは『Wiiスポーツ』のパックイン(本体へのソフト同梱)を推し進めたものの、当時の任天堂社長・岩田聡さんと、マリオの生みの親である宮本茂さんに反対されたそう。以下、著書で明かされた裏話です。
岩田さんは「レジー、任天堂は貴重なコンテンツをタダで提供することはない。特別な体験を生み出すために努力している。ハードを買う動機になるのはユニークなソフトであり、長期的な売り上げが期待できるんだ。『Wiiスポーツ』を同梱すべきではない」と言ったのです。
レジーさんは任天堂のソフトの価値は理解しているとしつつ、「Wiiの目標は、ゲームを現在のニッチからマス市場に広げることです。『Wiiスポーツ』はそのための力を持っている」と反論したとのこと。そしてスーパーファミコンが北米で発売されたとき、『スーパーマリオワールド』とセットだったことを引き合いに出したそうです。
しかし、岩田さんを説得した後も、ゲーム開発者の宮本さんを納得させなければなりません。宮本さんは「レジー、Wiiの発売時に強力なソフトを付属させるという君の主張はわかったよ」と言いつつ、代わりに『はじめてのWii』(ミニゲーム集)を同梱しようと提案したとのこと。
が、レジーさんは『はじめてのWii』は『Wiiスポーツ』ほど面白くないと指摘し、Wiiリモコンに同梱したほうがいいと言い返したそうです。
すると宮本さんは「レジーは正しい。このミニゲーム集は、フルプライスを要求できるような完全な形のゲームではない」と認めたとのこと。が、いつもの笑顔は消え失せ「あなた方は、人々に愛されるソフトを作ることの難しさを理解していない(中略)。私たちはソフトを手放さない(タダで提供しない)」と答えたと描かれています。
しかし、当時はマイクロソフトのXbox 360が好調だったこともあり、最終的には「欧米ではWiiスポーツを本体に同梱、日本ではソフトを単体で販売」にこぎ着けたとのこと。そのかいあって、『Wiiスポーツ』は全世界で8300万近くも売れた(本体同梱分を含む)とされているわけです。
また新著では、北米では『MOTHER2』(現地タイトルは『EarthBound』)があまり売れなかったために、『MOTHER3』もローカライズの費用はかけづらく、「日本語版そのままをダウンロード販売のみ」も検討したが、実現しなかったこと。さらに北米版の『脳を鍛える大人のDSトレーニング』に数独を入れさせたのはレジーさんであることなど、興味深い舞台裏が語られています。興味のある方は、英語のみですがKindle版を買ってもいいかもしれません。
Source:Nintendo Everything