日本はもちろん世界中で愛され続ける「レゴ(R)ブランド」。子どものオモチャとして知られているのはもちろんのこと、ここ最近ではスーパーカーやスニーカー、タイプライターなどを忠実に再現した、オトナ向け商品もヒットし、大きな話題となっています。そんなレゴ(R)ブランドが2022年8月10日で90周年を迎えました。そこで今回は、レゴ(R)ブランドの歴史や魅力を改めて紐解くべく、レゴジャパンの本社へ伺いました。
【話を伺ったのはこの人】
レゴジャパン
シニアマーケティングマネージャー
橋本優一さん
レゴジャパンで、マーケティング部門を担当する橋本さん。日本市場の取扱店舗で展開する商品のマーケティングプランをチームで考案し、レゴグループのさらなる販売促進と発展に寄与する。
レゴ ブロックはどのようにして生まれたのか?
――レゴ ブロックはどのようにして生まれたのでしょうか? レゴブロックの歴史を教えて下さい。
橋本 レゴグループは創業者であるオーレ・キアク・クリスチャンセンによって、1934年にデンマークで創業しました。元々は今のレゴのようなプラスチックのおもちゃ製造ではなく、木製の玩具メーカーとしてはじまりました。
それが時が経つにつれて、創業者が“子どもたちにオモチャとしてより良い価値を提供したい”という思いを追求していくようになり、その中で我々が呼んでいる「システム イン ブロック」という価値観が生み出されました。要は、くっ付けたり、切り離したりといった行動が、何度も繰り返し行って遊べるブロックのシステムのことです。それを模索し始めて、今のレゴブロックの原型ができあがったんですね。
――レゴが創業した当時、レゴブロックというオモチャは存在していたのでしょうか?
橋本 木製の積み木のような物は存在していました。しかし、今のようにレゴブロック同士を繋げてオブジェを作り上げられるような、システム化された物はありませんでした。
微妙な加減でしっかりと付き、微妙な加減で外すこともできる。このバランスに辿り着くのが非常に難しかったそうです。あまり強力に付き過ぎると、外すのが困難になってしまいます。あくまで子どもが手軽に遊べる物でなければいけませんからね。
――当時のレゴブロックと、現在のレゴブロックに違いはあるのでしょうか?
橋本 当時のオリジナルは今でも保管されているのですが、今のレゴブロックと形はほぼ同じですね。しかし、昔のは結合時の強度が弱くて外れやすく、完成しても崩れやすかったんですね。そこで考え出されたのが、裏面の円形の意匠です。これがあることで凹凸同士の摩擦力が増し、組み立てた際の強度が一気に高まりました。そして縦横問わずにブロック同士を結合できるようになったのです。
ブロックの素材はABS樹脂です。ABS樹脂は変色・変形が少なく、熱、酸、塩に強いという特性がありました。昔のABS樹脂で作られたレゴブロックと、40年以上の年月を経ても正常に結合させることができますよ。本国デンマークなどの工場でつくられ、世界へと販売されています。ちなみにレゴブロックのカラーは、現在約75のカラーとエフェクト(メタリック、グリッターなど)があります。
――レゴ ブロックがメジャーになるきっかけは何だったのでしょうか?
橋本 まず、レゴ ブロックは北米で1970〜1980年代に広く普及しました。レゴ ブロックには大きく分けて2つのラインが存在しています。一つは私たちが「テーマ」と呼んでいる物で、こちらはレゴが独自に開発したシリーズを展開していくカテゴリーです。代表的なモノに「レゴ(R)フレンズ」や「レゴ(R)シティ」などがあります。
そしてもう一つが、「スター・ウォーズ」などの映画シリーズやアディダスのスニーカー「スーパースター」といった、他社とのコラボレーションによるカテゴリーですね。中でもレゴ ブロックはディズニーとのコラボレーションを多数展開していて、「レゴ スター・ウォーズ」は世界中で多くのファンを獲得しています。過去を振り返っても映画スター・ウォーズの大ヒットと同時に、レゴ ブロックの存在はさらに広く認知されていったように思いますね。
――日本でもレゴ ブロックはとても親しまれていますよね。私自身も子どもの頃にレゴ ブロックで遊んだ経験があります。私の幼少の頃にはすでにメジャーなオモチャだったと記憶していますが、日本ではいつ頃から展開していたのでしょうか?
橋本 1960年代には日本でも正規輸入が開始されていて、全国のおもちゃ屋さんで展開していました。その後、1978年にレゴジャパンが設立されて、今に至ります。
“どのように楽しい場を届けるか”が一番大事。
――通常の積み木や模型だと、接着剤でないと固定できないし、一度接着して完成させたら、バラバラにする事はできません。だけどブロックなら何度でも作り直すことができてしまう。そこが非常に魅力的ですね。
橋本 この事はレゴグループ自体のカルチャーにも紐付いていて、失敗したことに対してどうこうっていうことはありません。仮説をたてて試してみて、ダメだったらまたやり直せば良い、というブロックならではの発想が、企業理念にも繋がっていますね。
――レゴとして信じてきた“遊びの力”とは具体的には何でしょうか?
橋本 遊びというのは楽しいだけではなく、そこに学びもあると信じています。5歳くらいまでに、90%ほど脳が形成されるというリサーチがありますので、お子さんが遊びながら他者とコミュニケーションを取ったり、自分を表現したり、共感だったりをどのように遊びの中で提供できるか? ということをレゴグループは一番大事にしています。
――知育玩具として取り入れて欲しいということでしょうか?
橋本 もちろん知育玩具としてレゴ ブロックを取り入れてくれる事は大歓迎です。ですが、レゴ ブロックはあくまでもオモチャですので、難しくなっては本末転倒かと思います。どのように楽しい場を届けるか、という点を重要視しています。
――私も親の立場でレゴ ブロックを子どもに与えていましたが、その際には知育玩具としての意識は全くありませんでしたね。あくまでも組み立てるのが楽しいオモチャとして一緒に組み立てて、そして自分もまたハマっちゃうって言う(笑)。
橋本 デンマークでは、レゴ ブロックが親から子へ、子から孫へと引き継がれるケースが良くありますね。
実際、取材中に体験したのがブロックの組み立て遊び。レゴグループ内には、レゴ(R)エデュケーションという部門があり、遊びを通じた学びとストーリー性のある問題解決型のアクティビティを通して、小学校低・中学年の子どもたちのSTEAM学習への意欲を高め、困難に立ち向かう力や自分で考える力を育てる、まったく新しいSTEAM教育を行っている組織も。
私たちがチャレンジしたのはレゴ ブロック6個だけを使用して、一人一つずつアヒルを作ること。しかも組み立て説明書がなく時間は1分で! 1分と聞くと深く考える時間はなく、直感的に組み立てました。完成したモノを見ると、筆者と担当編集が作ったアヒルはアヒルと呼べる見た目ではありませんでした……(笑)。しかし、子どもと遊び感覚で触っていたレゴに、このような教育的な使い方があることに驚きました。