デスク・チェアをはじめとした家具メーカーのイトーキは、esportsのプロフェッショナル向けハイエンドレーベル「Daidara(ダイダラ)」の立ち上げを発表しました。そのレーベルの第一弾製品となるのは、ゲーミングチェア・Act Gaming(税込価格14万9900円)。本品は同社が誇る人気オフィスチェア・Actチェアをベースに改良を加えたもので、人間工学に配慮した工夫が随所に施されています。
伝承に残る巨人「ダイダラボッチ」の強さにあやかる新レーベル
Daidaraの名前の由来は、日本各地の伝承に残る巨人「ダイダラボッチ」。この巨人は、人々を助けるために各地の土地を整えたという言い伝えがあり、その力強さや献身性から人々に崇められてきました。esportsの最前線で戦う選手たちの強さを献身的にサポートしたいという想いが、レーベルの名称やロゴに込められています。
同社とダイダラボッチの縁を示すエピソードもあります。イトーキが工場を持つ滋賀県近江八幡にも、その伝承が残っているのです。近江八幡に現れたダイダラボッチは、富士山を作るために当地の土を掘り、その跡地が琵琶湖になったといいます。Daidaraは、富士山と琵琶湖という、2つの日本一にあやかったものでもあるのです。
このレーベルは、esportsの現役プロや、プロを目指している、“エクストリームプレイヤー”に向けたもの。イトーキの担当者によれば「オフィスチェアで培ったノウハウを、より高い水準を必要としているプレイヤーに届けたかった」という想いから、プロ仕様にこだわったレーベル創設に至ったといいます。
最前線で戦うプロゲーマーが認めるAct Gamingの革新性
レーベル第一弾となる製品が、ゲーミングチェアのAct Gamingです。特徴のひとつが、肩の動きにあわせて動く背もたれ。柔軟性のある素材で作られたこの背もたれは、椅子に座ったまま体を左右にひねることで、肩の動きに追従するようにその形状を変化させます。加えて、座面のシートの奥行きを調整できる機構や、高さ、向きなどを自在に調整できる肘当てなど、ユニークな機能を装備しています。
2018年11月に発売されたオフィス向けのActチェアから受け継がれたこれらの機能は、従来のゲーミングチェアにはなかった画期的なものだといいます。発表会のトークセッションに登壇した「スプラトゥーン」プロゲーマーのらきょるんさんも、それを実感しているひとりです。
「自分はスプラトゥーンをプレイするとき前傾姿勢になるのですが、Act Gamingなら肘全体を肘当ての上に置けるように位置を調整できます。ゲーミングチェアはどれも同じだと思っていましたが、Act Gamingは自分にとって革命でした」(らきょるんさん)
また同じくトークセッションに登壇したのが「大乱闘スマッシュブラザーズ」のプロゲーマーである、よっシイさん。1日に8時間ほどゲームをプレイしているという彼は、背もたれの柔軟性やカスタマイズ性の高さを評価しています。
「ゲームをプレイするときは、いつも背中をもたれています。プレイ中は長時間座ったままになりますが、柔軟性のある背もたれのおかげで体を左右にひねって姿勢を変えられるので、疲れにくいです。あとカスタマイズ性も高くて、調整を少し変えるだけで、座り心地が大きく変わるのも面白いです」(よっスイさん)
オフィス向けのActチェアをベースにしているAct Gamingですが、変更点もあります。それは座面の高さや素材です。なぜそこに改良を加えたのか。商品開発に携わったイトーキのスタッフは、次のように語ります。
「オフィスチェアは靴を履いたまま座りますが、家で使うゲーミングチェアには靴を履かずに座ります。なのでAct Gamingでは、靴底の厚み、具体的には15mmだけ座面を下げています。また昨年の東京ゲームショウでこれを展示したときは、座面に革素材を使っていました。ですが長時間座っていると蒸れるという声に配慮して、抗ウイルス・抗菌・防臭加工を施した生地素材に変更しています」(スマートオフィス商品開発本部 寺本宣広さん)
なお座面以外の点については、東京ゲームショウ展示時点から変更はしていないといいます。オフィスチェアで培った技術が色濃く受け継がれていることが伝わるエピソードです。
Act Gamingを筆者が体験してみた
発表会では、報道陣がAct Gamingの座り心地を体験できる時間も設けられました。筆者も体験してきたので、インプレッションをお届けします。
感想を一言にまとめると「全身を包み込んでくれるゲーミングチェア」です。ねじれ動作に対応して動く機構を備えつつも安定した支えを提供する背もたれや、クッション性が高いだけでなく体圧を広く分散させる座面、好みの位置にセッティングできる肘当てなど、剛柔織り交ぜた機能で身体の各所を支えてくれます。筆者は長い時間座ったわけではありませんが、仮に長時間座ったとしてもこれなら疲れないだろうというイメージを、容易に持つことができました。
イトーキの社長・湊 宏司さんは「椅子は人間工学のテクノロジーの塊」と語っています。私たちがいつも何気なく座っている椅子は、身体との接地面が広い家具です。在宅勤務が普及したいま、高級チェアはひとつのトレンドになっていますが、ゲーミング用途にとどまらず、それを導入する意義を実感できる発表会でした。