提供:宝酒造株式会社
日本を代表するお酒といえば、やはり日本酒。2024年には、焼酎や本みりんなどを含む「伝統的酒造り」が、ユネスコ無形文化遺産へ登録されました。「酒噺」でもこれまで、さまざまな角度から日本酒を深掘りしてきました。今回は、過去の記事を紹介しながら、2回に分けて日本酒の魅力をお届けします。〈前編〉では、日本酒の造り方から味わい、飲み方について解説していきます。


日本酒の原料
まずは日本酒の特徴、原料や造り方について。「日本酒」は、米と米麹(こうじ)と水を原料に、日本国内で醸造された「清酒」のことです。この「清酒」とは海外産も含め、米と米麹と水を主な原料として発酵させて濾(こ)したもので、なおかつアルコール度数は22度未満でなければなりません。

米・米麹・水を原料に発酵させたものを「もろみ」といい、もろみを濾せば「清酒」。濾さなければ「どぶろく」と定義され、濾して分離した固形物がいわゆる「酒かす」です。
日本酒を選ぶ上で知っておくと便利なのが、原料や製法などによって分類される「特定名称酒」です。「特定名称酒」の分類における大きなポイントは次の二つです。
・純米酒かどうか(醸造アルコールを添加しているか)
・精米歩合(原料の米を削った割合)
醸造アルコールを使わず、米・米麹・水だけで造った特定名称酒であれば「純米酒」に分類されます。それ以外は、香りや口当たりなど、狙うべき酒質に応じて醸造アルコールを加えた「吟醸酒」「本醸造酒」になります。
精米歩合は、精米後に残った米の割合をパーセンテージで表し、50%以下なら「大吟醸」、60%以下なら「吟醸」。さらに60%以下で特別な製造方法で醸したものには「特別」と冠するものもあります。
これらを踏まえ「大吟醸酒」「純米大吟醸酒」など8種類に分類され、特定名称酒の条件を満たさないものは「普通酒」に分類されます。酒税法上の分類ですが、全体として日本酒は9種類に大別されます。

加えて、日本酒には自然の乳酸菌を取り込んで醸す伝統的な「生酛(きもと)造り」、その工程から「山おろし(米をすりつぶす作業)」を省いた山廃仕込み(山廃酛)、さらに近代になって確立された、乳酸菌由来ではない乳酸で醸す「速醸酛(そくじょうもと)」など、様々な製法があります。
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日本酒の造り方
日本酒の造り方を詳しく見ていきましょう。まず原料の米を玄米から「精米」し、「洗米」と「浸漬」を行います。わずか1%の水分が酒の出来を左右します。次は「蒸米」して「放冷」。この工程も酒の品質に大きく影響します。

酒造りにおける大事な仕事は“一麹、二酛、三造り”と言い表され、特に重要なのが「麹造り」です。麹は、麹菌の胞子を蒸米に散布し育てたもので、麹の作る酵素が、蒸米のでんぷんを糖化し、アルコール発酵を促します。

次に、麹・蒸米・仕込水に乳酸菌を加えて増やしたものに、酵母を加えるのが「酒母(しゅぼ)造り」。「酛造り」とも呼ばれ、上記の“二酛”にあたる重要な工程です。半月〜1か月ほどかけて酒母を育て、その後、麹・蒸米・仕込水とともにタンクに入れて「醪(もろみ)」に仕込みます」。こちらも約1か月かけて発酵させます。

発酵が終わった醪を搾る工程を「上槽(搾り)」といいます。酒袋に醪を入れ圧力をかけると日本酒が現れます。搾られた新酒は、さらに酒の中に残る微細な固形物をろ過し、残った酵素の働きを止めるために加熱後、「熟成」。そして壜(びん)に詰め、ようやく日本酒が完成します。
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酒造りに適した米と水

原料の米についても触れていきましょう。“酒米の王様”とも称される「山田錦」は兵庫県で生み出された酒造好適米です。酒米(さかまい)とも呼ばれ、ほかに「五百万石」「雄町(おまち)」「美山錦」などがあります。
酒造好適米とは読んで字のごとく、食用米よりも酒造りに向いている米のこと。主に心白(しんぱく)という米の中心部の白濁した部分が発現しやすく、大きいという特徴があります。心白があると水を吸いやすく、酵母菌が入りやすいため、酒造りがしやすいのです。
さらに原料米の品種や酵母の種類、仕込水の硬度などによって多様に味わいが変わることも、日本酒の醍醐味といえるでしょう。日本酒のなかでも二大銘醸地、酒都と呼ばれる京都の「伏見」と兵庫の「灘」は、名水の郷としても有名です。

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知っておくと便利な日本酒の味と香りについて
味の感じ方は人によって異なりますが、そもそも「日本酒にどんな味や香りがあり、どう違うかわからない」という方もいるでしょう。そこで、日本酒をより楽しむために知っておくと便利なのが、味と香りの特徴です。
日本酒の味と香り(香味)は、「香り高い」「軽快でなめらか」「コク深い」「熟成」の大きく4タイプに分けられます。例えば「香り高い」タイプは、華やかで透明感のある果実や花の香り、「熟成」タイプはスパイスや干した果物などの力強く複雑な香りが感じられます。

また、よく耳にする「辛口」や「甘口」は、日本酒度を指します。日本酒度とは日本酒に含まれる糖分量を示す指標で、清酒の比重を簡単に表したものです。日本酒度は15℃で測定し、4℃の水と同じ重さを日本酒度0とします。それより軽い(糖分が少ない)ものがプラス=「辛口」、反対に重い(糖分が多い)ものはマイナス=「甘口」とされ、日本酒の甘辛の目安となっています。
ただし、比重はアルコールの度数によっても変化し、酸味の強弱によっても甘さの感じ方は左右されます。そのため、日本酒の「辛口」「甘口」は、あくまでひとつの目安としてとらえるといいでしょう。
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バリエーション豊富な日本酒の飲み方
日本酒は、様々な温度で楽しまれ、温度帯によって呼び名や表現が変わるという、世界的にも珍しいお酒です。温める「燗酒」は奈良時代ごろから親しまれていたといわれる一方、「冷酒」は冷蔵技術が発達した近代に広まったスタイルです。現在では多様化が進み、飲みごろとされる温度は5度(雪冷え)から55度(飛びきり燗)までの5度刻みで、10種類の呼び名が付けられています。

かつての日本酒業界では、酸味や炭酸が強い日本酒は好ましくないとされ、アルコール度数の低い日本酒も、ほとんど流通していませんでした。しかし、時代の流れとともに嗜好や価値観が変わり、現在では酸味の効いたタイプやスパークリング日本酒、低アルコール酒も定着しています。

代表的な銘柄が、宝酒造が2011年に発売した松竹梅白壁蔵「澪」です。ほのかな甘みとほどよい酸味が特徴のスパークリング日本酒で、アルコール度数5%のやさしい飲み口も魅力。20~30代の女性を中心に人気を博しています。
最近ではチューハイやレモンサワーなど、炭酸で割るお酒も定番化しており、この文化に合わせて、松竹梅「瑞音(みずおと)」という“炭酸割りで楽しむ”をコンセプトにした日本酒も登場しています。炭酸水で割ることで、よりすっきりとした味わいになり、低アルコールで飲みやすい「日本酒ハイボール」は、日本酒の入門編としても適しており、現代的な楽しみ方ともいえるでしょう。

また、近年はより自由度が増し、洋酒のようなアレンジで楽しむケースも珍しくありません。たとえば、氷を浮かべた「日本酒ロック」や、そこにライムを搾った「サムライロック」、さらに炭酸水とミントを加えた「SAKEモヒート」など多彩なスタイルが登場しています。
知っているようで知らない「日本酒」の造り方や味わい、飲み方などについて紹介してきました。日本酒について理解を深めることで、いつもの一杯がさらに豊かなものになるはずです。古くから伝わる製法や、新しい飲み方にも挑戦して、あなただけの日本酒の魅力を見つけてください。
引き続き〈後編〉では、信仰・歴史・伝統行事が紡ぐ「日本酒」と「日本文化」について解説します、お楽しみに。

■日本酒のことがまるわかり!【日本酒を知る】シリーズ
【日本酒を知る】白壁蔵①:今更聞けない、日本酒の基本の噺
【日本酒を知る】白壁蔵②:知っていたら自慢できる?日本酒造りの噺
【日本酒を知る】自然と人の努力が生んだ、酒造好適米・山田錦の噺
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