ヘルスケア
ダイエット
2017/2/4 15:00

まずは1日! 胃腸を休めてデトックスできるつらくないファスティング入門

理想のカラダや健康を手に入れるため、誰でもダイエットには多少なりとも興味があるでしょう。でも、そのやり方は千差万別。どんなメソッドが正しいか、自分に合っているのか悩みどころですよね。そんななか、話題を呼んでいるのが「ファスティング」という手法。一定期間、食事をとらずに過ごすという、いわゆる”断食”のことで、体重減少だけでなくさまざまな効能があると言われています。でも、いきなり誰でも断食なんてできるわけありませんよね……。そこで自然療法や漢方に関する数々の著書と、テレビ出演などで活躍するイシハラクリニック副院長・石原新菜先生に、初心者でも始められるファスティングのコツを聞きました。

 

現代人はそもそも食べ過ぎの傾向に

———まず最初にファスティングとは、どうすればいいのでしょうか? 断食といえば過酷なイメージしか湧きません……。

石原:おっしゃる通り、断食と聞くと、水もすべて断つと考えている方が多いのですが、そんなことはありません。むしろ水分を抜くのはとても危険なので、オススメできませんね。例えば、当クリニックの伊豆の“道場”では、リンゴとニンジンを搾ったジュースを飲んでいただいています。ビタミンとミネラルを効率良く摂り、消化を良くするためには、繊維が入っていない方がいいので、ミキサーでなくジューサーを使うんです。ビタミンは約30種類、ミネラルは約100種類も摂ることができるんですよ。

 

———そんなに!? そもそもビタミンやミネラルにそんなに種類があることを知りませんでした。

石原:(笑)。世界中の自然療法をやっているところで、このリンゴとニンジンのジュースはよく取り入れられているんです。漢方の観点からいうと、リンゴは北で採れるものだからカラダを温めるし、ニンジンも根菜なので同じくカラダを温める効果を持っています。少し前に流行った“グリーンスムージー”も、栄養素としてはいいのですが、これも漢方から見ると葉物野菜はカラダを冷やしますし、南国のフルーツを入れることも多く、同様に体温低下を促してしまいます。欧米ではとても流行りましたが、肉中心の食生活だからこそ、それを中和するために必要だったわけです。そもそも日本人は欧米に比べて筋肉量も少なく、冷え性の人が多いですから。

↑リンゴは、体内の塩分を排出するカリウムや、皮には活性酸素の発生を抑えるポリフェノール成分を含んでいます
↑リンゴは、体内の塩分を排出するカリウムや、皮には活性酸素の発生を抑えるポリフェノール成分を含んでいます

 

↑ニンジンは、ビタミンCや食物繊維を含む根菜で、特に免疫力を高めるβカロテン(ビタミンA)が豊富
↑ニンジンは、ビタミンCや食物繊維を含む根菜で、特に免疫力を高めるβカロテン(ビタミンA)が豊富

 

———なるほど、そうだったんですか。では栄養素を補いながら断食をするわけですが、ズバリその効能とは?

石原:まず、胃腸を休ませてあげることができます。食べ物の消化・吸収というのは、実はとても大きなエネルギーを必要とするんです。現代人は朝・昼・晩と食事をとりますから、常に胃腸を酷使している状態。休ませてあげることで自然治癒力が高まって、デトックス作用をもたらしてくれます。さらに、腸を休ませることで便通が良くなり、食べていないのにいつもより量が多くなることも。漢方には「吸収は排泄を阻害する」という言葉があるくらいです。

 

ほかにも尿が濃くなったり、耳ダレが出たり、目ヤニが多く出たりと、カラダの老廃物が排出されます。人によっては口臭・体臭がキツくなるといった症状が出ることも珍しくありません。老廃物を溜め込んでいる人ほど、出方は激しくなります。

 

———すごいですね……。その効果はどのくらいの期間、断食をすると現れるんですか?

石原:本格的な断食は1週間続きますが、4〜5日間程度が多いですね。1〜2日ではそういった症状は現れません。あと効能としては、気持ちが前向きになりますね。脳からエンドルフィンやドーパミンが分泌され、頭がよく冴える。よく眠れるようになるし、免疫力のアップ、味覚の改善なども。そう、いいことばかりなんです(笑)。ケガをした動物はよく食べずにじっとしているでしょう? あれは、消化のエネルギーを全て回復にまわしているからなんですよ。

 

昔の人は「朝飯前」という言葉があるくらい、朝から畑仕事などをしていました。一方、現代人はデスクワークで運動量も少ないのに、しっかり3食を食べている。これは明らかに食べ過ぎ。だから病名は高血圧・高血糖・高尿酸と「高」がつくものばかりです。カラダが対処しきれていないんですね。

 

ファスティングが叶えること

・ダイエットに効果がある
・胃腸が休まる
・デトックスできる
・味覚が改善される
・免疫力がアップする
・気持ちが前向きになる
・頭が冴える
・快眠を得られる

 

↑おすすめはリンゴとニンジンの果汁を絞ったジュース。胃腸に負担をかけないよう、繊維は取り除いて
↑おすすめはリンゴとニンジンの果汁を絞ったジュース。胃腸に負担をかけないよう、繊維は取り除いて

 

無理は禁物! 自分に合ったペースで、定期的に行うこと

———ではファスティングですが、具体的にはどのように始めるのがいいんでしょうか?

石原:先ほども話した通り本当は1週間行いますが、いきなりは無理です。まずは半日から1日でも充分効果がありますよ。食事も、朝だけリンゴとニンジンのジュースに置き換える方法でもOK。「週末だけ断食」とか、あまり変に頑張らないでください。無理だと思ったらやめても大丈夫です。
そして重要なのが「回復食」。断食が終わった後は、いきなりヘビーな食べ物を取らないようにしてください。期間にもよりますが、重湯やおかゆで胃を慣らしながら、平常に戻していきます。

 

———断食をすれば体重が変動すると思いますが、気にした方がいいのですか?

石原:1日1kg痩せる人もいるし、全然変わらない人もいるし、逆に胃腸が休まったせいで吸収率が上がって太る人もいます。でも、いずれも内臓を休ませることで適正になった結果ですから、そこまで気にしなくて大丈夫ですよ。

 

———断食を始める期間の目安を教えてください。

石原:最初は「1カ月に1日」から始めましょう。朝をリンゴとニンジンのジュースに置き換えて、夜だけ食べる。1.5食くらいのイメージで。

 

断食道場での1日の食事

8時 人参3本+りんご1個のジュース3杯
10時 具なしの味噌汁
12時 人参3本+りんご1個のジュース3杯
15時 生姜湯(黒砂糖を入れてもOK)
17時 人参3本+りんご1個のジュース3杯

 

黒砂糖で空腹に対処を。女性は生理前の断食に注意!

最後に、石原先生から断食をする上で注意すべきポイントを教えてもらいました。

 

石原:先ほども少し触れましたが、「回復食」は大事です。断食直後は胃腸の消化力が弱まっているため、いきなり肉などの脂っこい食事をとるとお腹を下してしまいます。お酒なども危険なので、おかゆと味噌汁などで少しずつ元に戻しましょう。

 

また、空腹に耐えかねてフラフラして継続できないと思ったら、黒砂糖を食べると血糖値を緩やかに上げてくれるので効果的です。しかもビタミン類も多いですしね。白砂糖は急激に血糖値が上がりすぎるのでNG。あとは具なしの味噌汁を飲むと適度に塩分が摂れていいですよ。

 

女性の場合、生理前はお腹がすくし、カラダもむくむし、体重も増えるしであまり効果が出にくい。だから断食をするなら、生理がはじまって終わってから生理の始まる1週間前までがオススメです!

↑小腹が空いたり口さみしくなったりしたら、黒砂糖を口に含んで。精白され栄養素を失った白砂糖に比べて、多くの栄養素が残存している
↑小腹が空いたり口さみしくなったりしたら、黒砂糖を口に含んで。精白され栄養素を失った白砂糖に比べて、多くの栄養素が残存している

 

以上、石原先生にお聞きしたファスティングのコツ、いかがだったでしょうか。ひどい貧血、重篤患者、授乳中や妊婦の方はなるべく避けた方が良いとのこと。しっかりとやり方を学び実行すれば、カラダにとって良い状態を作ってくれるファスティング、ぜひチャレンジしてみてください!

 

取材・文=三宅 隆 撮影=@Living編集部

 

Profile

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石原 新菜
医師 / 石原 新菜

1980年、長崎県生まれ。小学校は2年生時までスイスで過ごし、その後、高校卒業まで静岡県伊東市で育つ。2000年4月、帝京大学医学部に入学。2006年3月卒業、同大学病院で2年間の研修医を経て、現在父、石原結實のクリニックで主に漢方医学、自然療法、食事療法により、種々の病気の治療にあたっている。

 

【URL】

何気ない日常を、大切な毎日に変えるウェブメディア「@Living(アットリビング)」

http://at-living.press