美容や健康に効果的と話題になり、最近ではすっかり耳馴染みのあるワードとなった「スーパーフード」。以前は自然食品店や高級マーケットでしか手に入りませんでしたが、最近ではお菓子やサプリメントなどの関連商品も増え、コンビニエンスストアや薬局でも販売されていたりと、知らない人がいないほど身近なものとなりつつあります。
しかし、スーパーフードとはいったいどのようなものなのでしょうか。 その名前から「栄養価が高く、きっと健康に良いのだろう」と、よく知らずになんとなく摂取している人もいるのではないでしょうか?
そこでスーパーフードの定義や、摂取できる栄養成分を詳しく知るため、ハーブやアロマテラピーの専門店「生活の木」のスタッフ、中村佳央さんに取材しました。
スーパーフードとは有効成分値が高い食品のこと
もとは1980年代から、食事療法を研究する医師や専門家が、有効成分が高い食品を「スーパーフード」と呼ぶようになったのが由来だとか。日本では、2015年にハリウッド女優や海外のスーパーモデルが、アンチエイジングに良い美容法として取り入れていたのが話題となり、アサイーやチアシード、ココナッツオイルが流行したことで、本格的に広がるきっかけになったのでは、と言われています。その後、美容や健康への意識が高い人を中心に広がり、現在ではマクロビオティックやヴィーガン、ローフード、グルテンフリーなどとともに支持されています。
「生活の木では、“栄養価の高い成分を多種含んでいるもの”、または“栄養成分の含有量が高いもの”をスーパーフードとしてご紹介しています。食材によりますが、ビタミン、ミネラル、食物繊維、ポリフェノールなどを含むものが多いですね。2015年にチアシードやアサイー、マキベリー、ゴールデンベリーなどのシード系、パウダー系、ドライフルーツといった素材の取り扱いをはじめ、現在ではオメガ3系の脂肪酸で話題のエゴマやアマニオイル、キヌアやアマランサスなどの擬似穀類のほか、ナッツやドライフルーツをミックスしたトレイルミックス、ドレッシングやジャムなど、より日常に取り入れやすいよう商品化しています」(生活の木・中村さん、以下同)
実は日本の発酵食品もスーパーフードだった!
スーパーフードの種類にはさまざまな見解がありますが、生活の木監修のムック『スーパーフードの教科書〜からだのなかから美しく、輝く〜』では、51種のスーパーフードと57種のレシピを紹介しています。
「みなさんに馴染みのあるくるみやアーモンド、最近流行しているタイガーナッツやライスミルクのほかに、日本原産のスーパーフードとして、甘酒や味噌、納豆も紹介しています。発酵食品には麹菌や乳酸菌が豊富ですし、日本人にとっては使い勝手のよい食材ですから、食生活に取り入れやすくておすすめです」
「スーパーフードの教科書 〜からだのなかから、きれいに、輝く〜」
小林 理恵(東京家政大学)・生活の木監修/マイナビ出版社
スーパーフードの特徴を紹介しているほか、おすすめの食べ方やレシピが掲載されていて、すぐに取り入れられるアイデアが豊富。
2018年のトレンドはこの3つ!
スーパーフードの流行には移り変わりがあります。たとえば、抗酸化作用にすぐれ、美容やダイエットに効果的とされるココナッツオイルがじわじわと流行りはじめたのは2013年頃。その後はオメガ3を豊富に含み、血液中の中性脂肪を減らして生活習慣病の予防につながるとされるアマニオイルやエゴマオイル、さらにグラスフェドバターが流行するなど、素材や形態によってオイルの選択肢が増えました。
「スーパーフードの人気が安定しているのは、健康や美容に気を遣う方が増えていることの現れなのかもしれません。それと同時に、調理したり手を加えたりして召し上がっていただくものもありますが、飲み物に入れるだけのものもあり、手軽に取り入れることができる点も魅力です。それでは、最新のトレンドを見ていきましょう」
1.ポリフェノールを含む植物「モリンガ」
「GABA」というネーミングで馴染みのあるγ-アミノ酪酸(ガンマ-アミノらくさん)と、ポリフェノールや鉄など、抗酸化作用にすぐれた成分を含むワサビノキ科の植物。インド原産で、亜熱帯では美容や健康のために古来から薬のような役割をしてきたのだとか。
「赤ワイン100mlに含まれるポリフェノール425mgに対し、モリンガパウダー100gはその約8倍の量を含みます。抹茶のような味わいでスイーツとも相性がよく、パンケーキミックスと混ぜるなどしてお菓子づくりにも使っていただけます。また、ミルクなどに入れてスムージーにして飲んでいただくのもおすすめです」
2.栄養成分のバランスがよい藻類「スピルリナ」
タンパク質の宝庫で、鉄、ビタミンE、アミノ酸、β-カロテン(ベータ-カロテン)などを含む単細胞微細藻類。9つの必須アミノ酸が含まれ、体力アップが期待できるスーパーフードとして、各メディアで紹介されています。
「よく見かけるのはタブレットタイプのサプリメントかもしれませんが、生活の木で扱っているスピルリナはパウダー状で、スムージーやスープなどに入れてお使いいただけるのが特徴です。海苔に似た風味で、納豆やお好み焼きなどにふりかけていただくなど、和食にもよく合います」
3.抗菌作用にすぐれているはちみつ「マヌカハニー」
ニュージーランドに自生しているフトモモ科マヌカの花蜜から採れるはちみつ。古くから先住民たちが怪我や病気の治療に使っていたとか。抗菌作用にすぐれていると言われ、喉の痛みや風邪の予防などに使われたり、口内炎などの炎症にもよいとされています。
「ニュージーランドでのみ採れるはちみつで、メチルグリオキサールという成分を含んでいます。その希少価値の高さから“はちみつの王様”という呼び名もあります。ハーブティーや紅茶に入れたり、お料理の甘みづけにしたりするなど、お砂糖の代わりにお使いいただけます。はちみつですので、1歳未満の乳児には与えないようにしてください」
美容&ダイエットにおすすめのスーパーフード
鉄分やポリフェノール、ビタミンB群、食物繊維などは、女性が特に摂取しておきたい栄養素です。生活習慣病予防のためにも、野菜は一日に350g以上摂るのが理想的だと言われていますが、これはキャベツ1/2個に匹敵する量! 食事から栄養をバランスよく摂るよう心がけていても、毎日続けるのは大変です。
「女性に不足しがちな鉄分などは、日々の食事に加えてスーパーフードで補うのが効率的です。また、ダイエットのためのスーパーフードは、水分と合わせると膨張して食べごたえがあるものなど、少量で満腹感を得られるものや、食物繊維を多く含み、腸内環境を整えるのに適しているものをご紹介しています」(生活の木・中村さん、以下同)
美容におすすめ
1.紫外線から肌を守る栄養成分を含む「ゴジベリー」
「クコの実」とも呼ばれている東アジア原産の植物の実で、人参よりも多くのβカロテンを含んでいるため、肌に良いとされています。ビタミンB1やアミノ酸なども含み、中国では薬用植物としての長い歴史があります。
「中国高地の日差しが強い場所で育つため、紫外線から身を守るための栄養成分をため込んでいます。ドライフルーツなのでそのまま食べてももちろんおいしいのですが、ヨーグルトやスープ、ドリンクに混ぜると柔らかくなり、より一層おいしく食べられます」
2.鉄分豊富で女性にうれしい「マキベリー」
常緑灌木の雌雄異体植物で、パタゴニアにしか自生していない果実。アサイーの5倍と言われる量のポリフェノールを含み、眼精疲労によいと言われているアントシアニンも含有しています。抗酸化作用にすぐれ、漢方薬としても重宝されています。
「鉄、カリウム、マグネシウムなども含んでいて、マキベリーパウダー大さじ1杯(9g)で、プルーン100gと同じ0.9mgの鉄分を摂取できます。スムージーやヨーグルトに混ぜていただくほか、種ごとフリーズドライにしているので、ジャムにしてもおいしいですよ」
3.抗酸化作用で疲労回復に役立つ「ザクロシード」
ミソハギ科ザクロ属であるざくろは、カリウムやビタミンB6、ポリフェノールなどを多く含んでいます。特にエラグ酸というポリフェノールには、強い抗酸化作用があると言われ、クエン酸などの疲労回復に役立つ栄養素も含まれています。
「種子ごと果実をフリーズドライにしました。クランチな食感と自然な甘みがあるので、そのままポリポリとスナックのように食べられます。ナッツとの相性もとてもよく、グラノーラやヨーグルトのトッピングとしてお使いいただくのもおすすめです」
ダイエットにおすすめ
1.10倍に膨らみ満腹感いっぱいの「チアシード」
中南米原産のミントの一種である植物、チアの種です。チアはマヤ語で“力”という意味があり、栄養価の高さが評価されています。食物繊維、オメガ3(α-リノレン酸)、オメガ6(リノール酸)に豊富で、水分を含むと15分程で10倍ほどに膨らみます。
「水で膨らませると、プチプチとした食感で満腹感が得られます。ヨーグルトと合わせたり、ドレッシングなどにしてもよいでしょう。強い風味がないので食材との相性を選ばず、毎日取り入れやすいスーパーフードのひとつです」
2.食物繊維を摂りたいなら「バジルシード」
イタリア料理でお馴染みのバジルの種子のことで、不溶性食物繊維やα-リノレン酸、鉄、カルシウム、亜鉛などがバランスよく含まれています。水を注ぐと10分で30倍に膨れるのが特徴です。
「チアシードよりも食物繊維を摂りたい方におすすめです。シャキシャキとした食感で、満腹感が得られます。膨らませたバジルシードをサラダにかけたり、ジュースやスープに入れてお召し上がりください。飲み物で直接ふやかすよりも、水やお湯で膨張させたものをお料理に入れたほうが、よりプルプルの食感をお楽しみいただけます」
3.低GIで栄養豊富の「キヌア」
南米が原産のスーパー穀物と言われているキヌアは、ヒユ科アカザ亜科アカザ属の植物で、ほうれん草やビートの仲間です。必須アミノ酸をバランスよく含み、食物繊維、鉄、マグネシウム、ビタミンB1などが豊富で、低GI食品の一種。
「クセのない風味で、プチプチとした風味が特徴です。白米に比べて血糖値の上昇が緩やかで、ゆっくり吸収されるため腹持ちがよいと言われています。10〜15分ほど茹でて、お好みの硬さになったらお召し上がりください。白米2〜3合に大さじ1ほど入れて一緒に炊いてもおいしくいただけます」
暑くなってくると体の疲労感が増したり、紫外線による肌ストレスを受けたりします。夏バテ対策のためにも、栄養価の高いスーパーフードを上手に摂取して、日頃の栄養不足や体の調子を整えていきましょう。
【店舗情報】
生活の木
1955年に創業。いち早くハーブを取り入れ、ポプリ、ハーブティー、絵センシャルオイルを取り扱って、この分野での日本でのパイオニアとなった。
公式サイト https://www.treeoflife.co.jp/
オンラインストア https://onlineshop.treeoflife.co.jp/
取材・文/吉川愛歩 構成/Neem Tree