パナソニックは11月7日、ナノイーXの照射による介護環境のニオイと尿素の脱臭実験を実施し、その効果を確認したことを発表した。また、一般社団法人日本介護協会(以下、日本介護協会)の協力のもと、介護施設にナノイーX搭載のエアコンと大型空調機を導入しモニター評価をした結果、介護士がニオイの効果を体感したことも明らかにした。
約8割の介護施設で人材不足。介護士離れの要因は「ニオイ問題」
総務省統計局によると、高齢者の人口の割合は年々増加しており、2022年時点で65歳以上は日本人口の29.1%。2024年には3人に1人が65歳以上と予想されている。一方、約8割の介護事業所で人材不足の悩みを抱えているという。日本介護協会 理事長 平栗潤一氏は「排泄臭や加齢臭、生活臭など、ニオイのために対応しきれないと感じる若手の職員が多くいます」と、この人材不足の一因に「ニオイ問題」があることを明かした。
「介護業界には、子育てが落ち着いたタイミングで入って来る人が多くいます。子育てではおむつ交換などをすることが当たり前ですので、ニオイの対応もしやすい。一方、入浴の介助などで身体を使うことも多いため、介護職が高齢化してくれば身体の負担から離職が発生する、というケースも多々あります」(平栗氏)
人材不足解消には若手職員育成が必須となる。そのためには、このニオイ問題の早急な解決が必要だ。だが、現状行っている換気や消臭スプレーだけでは、布などの繊維に付着したニオイを脱臭することは困難だという。
1時間でほとんどニオイを感じなくなる「ナノイーX」の効果
パナソニックは、この介護業界における「ニオイ問題」に着目。生活五大臭と呼ばれるタバコ臭やペット臭をはじめ12種類のニオイに対する脱臭効果を実証してきた独自技術のナノイーXによる介護環境のニオイ脱臭検証を実施した。ナノイーXとは、菌やウイルス、カビ、アレル物質、そしてニオイなどの有害物質を抑制できるOHラジカルを含むナノサイズの清掃イオンのこと。水に包まれているため、一般的なマイナスイオンと比較して6倍の寿命を持ち広範囲に拡散できる。さらに、髪の毛の10万分の1のサイズであることから、繊維の奥まで浸透することが可能だ。
当該検証では、大同大学 光田恵教授の指導の下、6畳相当の空間に介護環境と尿臭をしみこませた布を設置、ナノイーXを組み込んだ送風機を稼働させ、6段階臭気強度法を用いて脱臭効果を検証した。その結果、1時間で臭気強度は1以下の「やっと感知できるニオイ」までに減少するという、著しい効果があることが明らかとなった。
また、実際の介護施設にナノイーX搭載機器を設置しての脱臭検証も実施された。設置場所は、6~8畳の個室9部屋と廊下に各1台、20畳のリビングに2台。検証期間勤務した介護士18名にヒアリングした結果、全員からニオイへの効果を感じたと回答を得た。
これらの結果を受けて平栗氏は「ナノイーXの導入は脱臭効果だけではなく、入居者の安全対策にもつながると実感した」と語った。
「換気は2方向の風の流れが必要なため、廊下の端と端を開放して行います。このとき、『帰宅願望』がある認知症入居者が、開放した場所から外へ出てしまう危険性があります。ナノイーXのニオイへの効果は、窓などを開放して換気する前から既に感じられるほどですので、入居者の安全対策にも役立つのでは、と考えています。また、窓やドアの開放により、廊下に排泄臭が流れてしまう。このために恥ずかしい思いをしてしまう入居者への配慮も同時に行っていける、非常に貢献度の高い技術だと実感しました」
介護施設に限らず、在宅介護の備えとしても薦めたい、とナノイーXによる脱臭効果を評価した平栗さん。ニオイ問題解消は清潔感のある気持ち良い環境づくりへもつながるとし、ぜひ多くの介護事業所にナノイーXを知っていただきたい、と締めくくった。
パナソニックでは、「くらしを支えるベストパートナー」というビジョンの実現に向け、今後もナノイーXが役立つ場面を増やすために、国内外で継続的に検証を行っていくという。
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