家電
冷蔵庫
2025/1/15 19:00

「野菜は切らずに砕くもの」手間を減らして気持ちイイ三菱冷蔵庫の「新たな冷凍スタイル」

食品の冷凍と一口に言っても、実は様々な方法があります。たとえば、「チルド」は食品が凍り始める直前の約0℃の温度帯を保ち、冷蔵で保存する場合よりも熟成や発酵を遅らせることで鮮度を長持ちさせます。凍りきらないので乳製品やカット野菜、お惣菜などの加工食品の保存に適しています。

 

このチルド搭載冷蔵庫を今から40年も前の1984年に業界で始めて発売したのが三菱電機。その三菱電機が冷蔵庫の新製品で「新たな冷凍のスタイルを提案する」というので、取材してきました。

↑新しい冷凍スタイルに対応するJWシリーズ

 

野菜がスナック菓子のようにパリパリ砕ける!

約-7℃で冷凍することで食品がサクッと切りやすくなる「切れちゃう冷凍」や「切れちゃう瞬冷凍A.I.」、-3℃~0℃で保存する「氷点下ストッカー」など、様々な冷凍スタイルを世に送り出してきた三菱冷蔵庫。

 

新たに加わった冷凍技術はその名も「できちゃうV冷凍」です。うん、名前だけでは内容がさっぱり想像できませんね。実は「V」とはVegetable(野菜)の頭文字で、できちゃうV冷凍は「野菜を美味しく無駄なく使う冷凍」とのこと。それは一体どのような冷凍方法なのでしょうか。

↑Vegetable(野菜)の頭文字を名前にした新機能とは?

 

「できちゃうV冷凍は野菜をチャック付きのポリ袋に入れて冷凍室に保管し、そこに-25℃の冷気を吹きかけて冷やす機能です。この温度で凍った野菜は手でパキパキと砕くことができます。ザク切りも、粗くも、細かくも、砕きたいサイズに砕けます」と語るのは、三菱電機 冷蔵庫営業課の川島宏朗氏。

 

冷凍室に入れるときは通常の-18℃の冷凍になります。その状態で8時間以上経過してから、手動でできちゃうV冷凍の設定をオンにします。操作は扉の操作パネルかスマホアプリから行います。

↑操作は扉の「できちゃうV冷凍」のマークをタッチして行います。-25℃の冷凍が完了すると、このマークが点滅します

 

-25℃の冷気で冷やし始め、約20~30分で野菜を砕ける状態になります。この状態は約1.5時間持続し、その後は元の-18℃に戻ります。なお、冷凍室が常時-25℃の部屋になるのではない点には注意が必要。1回のV冷凍でだいたい1円の電気代になるとのことでした。

↑製氷室の下にある冷凍室の上段のケースに入れた野菜がパッキパキに凍ります

 

↑野菜室を取り出して庫内奥を見ると幾つもの送風口が見えます。このうちの最上段にあるのが、-25℃の冷気を出す送風口です

 

デモンストレーションでは、担当の女性が冷凍室の上段ケースからキャベツの入ったポリ袋を取り出し、包丁もまな板も使わずに素手で袋ごとパキパキッと音を立てて揉んでいきます。

 

力を込めている様子はなく、キャベツはポリ袋の中で簡単に砕けました。これは後で筆者も試しましたが、まるでスナック菓子を割っているような感覚です。

 

どのくらいのサイズで砕くかは、その日に調理したい料理に合わせて自由に調整できます。そのため、冷凍前に使い道を想定して使うサイズにカットするといった下準備が不要になるのです。

↑冷凍室の上段ケースからチャック付きポリ袋に入ったキャベツを取り出します

 

↑キャベツは数枚の葉がそのまま袋に入っています。これを両手で揉むようにして砕きます

 

↑砕いたキャベツは、このように細かいサイズまで砕くことができます

 

日本の家庭の食品ロスを減らしたい

川島氏は、できちゃうV冷凍は食品ロスの低減に貢献できると説明します。

 

「日本の食品ロスは2022年度のデータだと472万トンあり、そのうち約半分の236万トンは家庭内から出ています。1世帯あたり年間7万円分もの食品を捨てているのです。水道代は4人家族だと1年で5万円くらいと言われているのでそれより多いことになります。

 

その食品ロスの食材ごとの割合を見ると、28%で最も多いのが野菜です。さらに野菜の中で最も多いものを調べると38%が葉物野菜でした。V冷凍で今まで捨てられてきた家庭内の野菜を減らせれば、食品ロスの低減につながるものと考えています」(川島氏)

↑食品ロスの多い食材は野菜で、そのうちの約4割が葉物類

 

できちゃうV冷凍の搭載機種は、2024年12月から2025年1月にかけて発売される、「中だけひろびろ大容量」シリーズの一部。MZシリーズ3モデル、MDシリーズ1モデル、WZシリーズ6モデル、JWシリーズ2モデル。いずれも450L以上の大型冷蔵庫。MZシリーズとMDシリーズは野菜室が中央にあり、他は冷凍室が中央にあります。

↑できちゃうV冷凍の搭載機種

 

実演調理を見て実感、これは間違いなく手間が減る!

できちゃうV冷凍(以下V冷凍)の実演は、料理家でNadia アーティストの西岡麻央さんが担当しました。西岡さんが三菱電機と共同開発したオリジナルレシピは「くらトクサイト」で紹介しています。

 

実際にどのように調理でV冷凍を活かしていくか、今回はオムレツとスープ作りで実演しました。まずはオムレツです。V冷凍で凍らせたキャベツを手でパリパリと砕き、塩こしょうで味付けした溶き卵に入れてざっくり混ぜます。お肉を入れてフライパンに流し込み、形を整えてIHクッキングヒーターの庫内に入れれば、あとは完成を待つだけ。

↑こちらでもチャック付きポリ袋に入れてV冷凍したキャベツを取り出して素手でクシャクシャに砕きます。力を入れなくても簡単に砕けていく様子が見て取れます

 

↑袋からボウルへザザーッと直接流し込むので手が汚れず、洗い物も増えません

 

一方、スープはV冷凍したカリフラワーを砕き、薄切りにしたマッシュルームを加えてバターでサッと軽く炒め、お水を入れて味付け。温めている間にV冷凍のキャベツをオムレツの時よりも細かく砕きます。西岡さんはみじん切りくらいのサイズまで手で砕いていました。これを加えて牛乳を入れて煮詰めればスープの完成です。

 

「砕いたときに薄いガラスのようで気持ちいいです。手が汚れず、洗い物が出ないのもメリットだと感じています」と西岡さん。

 

西岡さんは自宅でレシピ開発のためにV冷凍した野菜を砕いていると、それを見て楽しそうに感じた4歳の息子がやりたがり、手伝ってくれるようになったといいます。

↑盛り付けた完成品。試食は美味でした!

 

12種類の野菜のV冷凍で食材のロスが減る

V冷凍の対象となる野菜はいまのところ12種類。キャベツ、玉ねぎ、ほうれん草、豆苗、しいたけ、えのき、パプリカ、ニンジン、カリフラワー、白菜、小松菜、大根です。

↑スライドでは小松菜と大根の写真がありませんが、この2つを加えて12種類となっています

 

上記にない野菜でも、葉物などの薄い野菜ならば対応できるのではないかと感じました。また、そのままだと砕きづらいニンジンや大根、パプリカなどの野菜も、切ってチャック付きポリ袋に入れれば、V冷凍で砕きやすくなります。なお、じゃがいもはV冷凍に不向きとのこと。

 

葉物を中心とした野菜の長期冷凍保存ができちゃう、野菜を切らずに調理できちゃう、洗い物も最小限にできちゃう、そんな「できちゃうV冷凍」。野菜を使い切れずに捨ててしまいがちな家庭には注目の機能ではないでしょうか。