研究者やエンジニアが自ら起業するスタートアップが注目されています。
大手メーカーではなく、少人精鋭のプロジェクトだからこそ生まれる斬新な発想や先進的な技術を用いた革新的な製品が、ずっと先に思えた「未来」を近づけてくれます。
オープンソース化により最前線の技術を導入
【次世代筋電義手】
イクシー
HACKberry
2014年に設立されたベンチャー企業、イクシーが開発する筋電義手。初代モデル「handiii」は、安価で製造でき、デザイン性が高いことで世界的な評価を受けました。今年4月に、handiiiの実用性を高めた「HACKberry」を発表。
現在の筋電義手の問題を克服するべく開発された初代モデル「handiii」のデザインスケッチ。利用者が着けたくなるデザインをめざしたとのこと。
handiiiのプロトタイプ。実際に義手を必要とする人たちをパートナーに、研究・改良を進めています。
右からメカエンジニアの山浦博志CTO、ソフトウェアエンジニアの近藤玄大CEO、インダストリアルデザイナーの小西哲哉CCO。近藤氏はソニー、山浦氏と小西氏はパナソニックの出身。
イクシーは、大手家電メーカー出身の3人のエンジニアとデザイナーが立ち上げたベンチャー企業。彼らが開発しているのは「筋電義手」。事故や病気などで手を失った人が、腕に筋肉に発生する微弱な電位信号を利用し、本人の意思で動かせる義手です。
筋電義手は、すでに商用化さてれいるものはありますが、非常に高額(150万円以上)で、利用者自身が修理したり、カスタマイズしたりすることが難しいという課題がありました。3人は、筋電を読み取るコンピュータとしてスマートフォンを利用したり、3Dプリンターを使ったりするなど、最新技術を活用することで、大幅なコストダウンを実現。搭載するモーター数を減らしつつ、薄い紙をつまんだり、靴紐を結んだりできる性能も備えています。そして、写真を見れば一目瞭然ですが、かっこいいデサインも大きな魅力。
今年の春にプロトタイプが公開された新モデル「HACKberry」では、全デザインデータとソースコードをオープンソース化しました。より開発速度を早め、完成度を高める試みに取り組んでいます。今後も注目していきたいですね。
[nextpage title=”新発想の家庭用ロボットとは!?”]
機能を拡張できる新発想の家庭用ロボット
【多目的ロボット】
フラワー・ロボティクス
Patin
ロボットデザイナーの松井龍哉氏が率いるフラワー・ロボティクスの最新作。自律走行する本体に、さまざまなユニットを取り付けることで多彩な用途に使えるロボット。2016年の製品化が予定されています。
照明のサービス・ユニットを接続すると、周囲の状況を判断して点灯・調光する〝考える照明〟として活躍してくれます。
植栽のサービス・ユニットを接続した利用イメージ。植栽の要求に応えながら、自律行動をおこないます。
2001年の創業以来、デザイン性の高いロボットを多数開発し、海外での評価も高いフラワー・ロボティクス。同社の最新作「Patin(パタン)」は、フランス語で「スケート」を意味します。〝スケート靴〞となる本体には人工知能を搭載し、360度に回転するオムニホイールを備えています。そこに、さまざまなサービス・ユニットを接続することで、ユーザーの目的に合った家庭用ロボットとして利用できる趣向。
例えば、照明のユニットを接続すると、人がいる場所に移動して最適な明るさで点灯したり、植栽のユニットを接続すると、Patinが考えて植物を育ててくれたりします。
本体は、充電を行うピットとWi–Fiで接続。ピットはクラウドとも連携する仕組みとのこと。
サイボーク型ロボットが身体機能を改善・拡張
【サイボーグ型ロボット】
サイバーダイン
HAL®
筑波大学サイバニクス研究センター長・教授の山海嘉之氏が開発した世界初の「サイボーグ型ロボット」。サイバーダインは、山海教授の研究成果で社会貢献するために2004年6月に設立された大学発のベンチャー企業です。
下肢に装着する医療用は、世界初のロボット治療機器として欧州で医療機器の認証済み。ドイツの医療現場で導入されています。
右:腰に装着する介護支援用。介護業務などでの腰部負荷を低減し、腰痛を引き起こすリスクを減らせる/左:重作業による腰部負荷を低減する作業支援用
HALは、身体機能を改善・補助・拡張・再生することができるサイボーグ型ロボット。脳・神経・筋肉などの病気で身体の不自由な人の機能改善を促進します。
HALには、身体を動かそうとするとき、脳から筋肉に伝わる微弱な生体電位信号を皮膚に貼り付けたセンサーで読み取り、意思通りに動作する「随意制御システム」と、自然な動作を姿勢や環境に合わせて再合成する「自律制御システム」が搭載されています。
さらに、これらの制御システムが混在した「ハイブリッド制御システム」が組み込まれている。また、アシストを受けて実際に身体を動かすことで、動きに連動した感覚系の情報が脳へとフィードバックされることもHALの大きな特徴。
医療・福祉はもちろん、幅広い分野での利用が期待されています。