コードレスキャニスターは、次の掃除機のトレンドとして大注目されているカテゴリ。実はこれまでにも何度かコードレスキャニスターは国内発売されていたのですが、主にバッテリーの容量不足による連続運転時間の短さと吸引力の低さから、普及までには至りませんでした。それに対し、今秋相次いで発売された東芝「VC-NX1」とシャープ「Ractive Air EC-AS500」は、バッテリー技術とモーター技術も飛躍的に向上し、コード式にも見劣りしない吸引力と十分な運転時間を実現しています。
前回は、この2機種について、「吸引力(フローリング)」「吸引力(カーペット)」「操作性」「設置性」の4項目をチェックしました。今回はそれに引き続いて、「ゴミ捨てのしやすさ/メンテナンス性」「汎用性」「独自機能」の3項目を比較検証していきたいと思います。併せて両機にはどんな違いがあってどんなユーザーに向くか、最後に結論としてまとめてみましたので、そちらを読んでいただくだけでもおおよそのことがわかるはず。ぜひ、この新ジャンルの魅力に注目してみてください!
【検証する機種はコチラ】
エントリーその1
コード式に迫る吸引力と約1時間という長時間の連続運転を実現
東芝
VC-NX1
実売価格10万2370円
リチウムイオン電池を同社のコードレススティック掃除機の2倍搭載し、最長約60分の連続運転が可能に。最大毎分約12万回転する高速DCモーターを新採用し、同社のコードレススティックを超えるパワフルな吸引力を実現しました。凹凸の少ない本体デザインで狭いスペースでも動きやすく、本体が上下反転しても体勢を直さずそのまま掃除が続けられます。スイスイ自走する「ラクトルパワーヘッド」やゴミの有無を知らせる「ゴミ残しまセンサー」など、同社の高度な機能を多数装備。●サイズ/本体質量:W261×H185×D234mm/2.8kg
エントリーその2
徹底した軽量化によりスティック型を超える使いやすさが魅力!
シャープ
Ractive Air EC-AS500
実売価格6万4330円
本体構造などの軽量化により、パワーブラシタイプのキャニスター型では最軽量クラスの総質量2.9kgを実現。手元パイプ部に航空機などにも使われる軽量素材「ドライカーボン」を採用し、手や腕への負担を大幅に軽減しました。大風量ターボモーターと高効率リチウムイオンバッテリー、自走パワーヘッドで、同社のコード式キャニスター掃除機と同レベルの集じん力を達成。バッテリーは着脱式なので、置き場所を選ばず手軽に充電が行えます。●サイズ/本体質量:W204×H230×D390mm/1.8kg
【テストの内容はコチラ】
「ゴミ捨て/メンテナンス性」ではまず、ゴミ捨てまでの工程と捨てやすさ、ゴミ捨ての頻度に関係するダストカップの集じん容積をチェック。メンテナンス性はダストカップを分解して、そのパーツ数やフィルター掃除のしやすさを確認しました。さらに、ヘッドのブラシ部分の掃除のしやすさも見ています。「汎用性」については、付属のアタッチメントを確認、それらを使った掃除の多様性をチェック。さらに「独自機能」では、掃除のしやすさを向上させる各種機能を見ていきたいと思います。
【検証結果はコチラ】
エントリーその1
東芝
VC-NX1
<ゴミ捨て/メンテナンス性>
2つのフィルターでホコリを除去するため、こまめなフィルター掃除が必要
本機がユニークなのは、大型の車輪の奥にダストカップが収納されているところ。まず本体を横倒しにして「取りはずしボタン」を押し、ダストカップを取り出します。その後カップカバーを外してゴミを捨てます。集じん容積は0.4ℓです。
本機はサイクロン式でなく、メッシュフィルターとプリーツフィルターでゴミをこし取る方式を採用。そのためこまめなフィルターの掃除は不可欠です。フィルター掃除の際は、ホコリに触れる可能性が高いので、気になる人はビニール手袋などを着けてお手入れするのがいいでしょう。ダストカップは4つに分解して掃除します。なお、プリーツフィルターも含めて、すべて水洗いOKです。
ヘッド内のブラシは、ヘッド天面部のロックを外し、ブラシをベルトから外して絡みついたゴミを除去できます。天面を外すタイプは筆者は初めてでしたが、ブラシの取り出しも比較的ラクでした。
<汎用性>
豊富なアタッチメントで家中くまなく掃除できる!
本機は付属のアタッチメントが多いのも特徴。フィルター掃除用ブラシも含む6つのアタッチメントが同梱され、アタッチメント収納袋まで入っています。アタッチメントのなかにはふとん用ブラシやロングブラシも入っており、特にロングブラシは3つの関節を使って自在に折り曲げられ、様々な場所の掃除ができます。
<独自機能>
上下反転して走行できる構造やゴミセンサーなどの豊富な機能で効率アップ!
本機独自の機能といえばまず、本体が上下反転しても掃除が続けられる「ダブルフェイススタイル」。やや大型のボディながら、狭い場所でもスムーズに方向転換ができます。延長パイプの先端にLEDライトを搭載し、暗い場所でもゴミのある場所を確認しながら掃除できるのもメリットです。
また、掃除中にゴミの有無を確認する「ゴミ残しまセンサー」を装備。ゴミを見つけると手元のランプが赤く光り、自動モードで掃除している場合は吸引力がアップします。布団などの上の微粒子ゴミの集じんや、ベッドの下など目の届きにくい場所の掃除に役立ちます。さらに、「汎用性」のところで触れましたが、多彩なアタッチメント搭載も魅力です。
エントリーその2
シャープ
Ractive Air EC-AS500
<ゴミ捨て/メンテナンス性>
2工程で素早くゴミ捨てでき、フィルターについたホコリも手動でラクラク落とせる
ゴミ捨てまでの工程は、「ダストカップセットを外す」「ゴミ捨てボタンを押す」の2工程のみ。ゴミを捨てる前にカップ上部のハンドルを回すとプリーツフィルターのホコリが落ちてゴミも圧縮、ホコリの舞い上がりが抑えられます。集じん容積はやや小さめの0.25ℓです。
ダストカップのパーツは5種類。プリーツフィルターにはフィルターを弾いてホコリを落とす機構が付いていて、これを回転させるか新聞紙などの上でフィルターをはたいてホコリを除去します。また、5つのパーツはすべて水洗いが可能です。
ヘッドブラシの掃除は、ヘッド裏のカバーを外して、ベルトからブラシを抜き取って掃除します。カバーはロックを外せば簡単に取れますが、抜き取ったブラシにベルトを掛けて戻すのに、ややコツがいりました。
<汎用性>
伸縮式すき間ノズルとはたきノズルで家具のすき間からエアコンの上まで掃除できる
付属のアタッチメントは「2段伸縮すき間ノズル」と「はたきノズル」の2つ。そのほか延長パイプを差し込むハンドル部の先端に「ベンリブラシ」が付いています。はたきノズルは先端のブラシの角度を変えられ、高い場所の掃除にも使えました。
<独自機能>
圧倒的な軽さであらゆる掃除がラクにこなせる!
「機能」といえるかどうかわかりませんが、本機の最大の独自性といえるのは徹底した軽量設計。突出した便利機能は少ないですが、実際に使ってみるとその軽さの恩恵を実感できます。バッテリー着脱式で充電・収納がしやすいのも特徴。掃除中モノを動かす際に、本体を起こしてヘッドのフックを掛け、自立した状態で置けるのも、意外に便利です。ゴミ捨てでは、ゴミをプレスする機構も快敵な使用感にひと役買っています。
【今回のテストのまとめ】
<ゴミ捨て/メンテナンス性>
ゴミ捨てとメンテ性ではシャープ、ヘッドブラシの手入れは東芝が有利
ゴミ捨てまでの工程は東芝が3工程なのに対し、シャープは2工程。シャープはゴミの圧縮機能が付いていたり、プリーツフィルターのホコリ落としをカップハンドルを回して行い、フィルターに触らなくて良いなど、使い勝手はやや上だと感じました。ちなみに両機種とも、ダストカップの全パーツを水洗いできるのはポイントが高いです。一方、ヘッドブラシのメンテナンスに関しては、カバーをヘッド天面で外せる東芝のほうが、ブラシの手入れはしやすいと感じました。
<汎用性>
東芝は豊富なアタッチメントで、シャープは圧倒的な軽さで多彩な掃除に対応
汎用性では豊富なアタッチメントが付属した東芝が一歩リード。床掃除はもちろん、棚やテーブル、布団掃除など部屋中の掃除に対応できます。ただし本体がやや重いので、片手で本体を持っての高所の掃除は、女性や年配の方にはやや大変かもしれません。
逆に、シャープはアタッチメント数こそ少なめですが、本体やハンドル〜ヘッド部が軽いため、掃除できる範囲は広いとも言えます。ちなみに別売のふとん掃除パワーヘッドを使えば、ふとん掃除も可能です。
<独自機能>
掃除を効率よく行うための各種機能を装備した東芝に優位性あり
独自機能に関しては、東芝のほうが多彩。斬新な上下反転構造に加え、LEDライトや「ゴミ残しまセンサー」などキャニスターやスティック掃除機で培われた便利機能が投入されています。一方のシャープは、コードレススティックの「Ractive Air」の軽量化技術、着脱式バッテリー技術をキャニスター型に応用。独自機能は少なくても、使い勝手は文句なしです。
【検証のまとめ】
以上、2回連載で7項目の検証を行いましたが、最後にそれぞれのモデルがどんな用途に適しているか、考えてみたいと思います。
東芝は「強い集じん力」で家中くまなく掃除したい人に最適!
まず、東芝「VC-NX1」は、強力な集じん力を持ち、約60分もの連続運転が可能。かさのあるドライペットフードも完璧に集じんし、カーペットに吸い付くことなく快適に集じんできるうえ、アタッチメントも豊富に用意しており、床面を中心に、家中をくまなく丁寧に掃除したい人に向いています。本体がやや重いため、本体を引きずる動作が多少わずらわしく思えてしまうのは事実。その意味では、集じん力の強さも含め、シャープよりキャニスター寄りの機種といえそうです。ただし、これまでコード式キャニスターを使ってきた人なら、コンセントをいちいち挿し替えずに複数の部屋を掃除できる快適さ、狭い場所でもサッと方向転換できる快適さを体感できるでしょう。収納時も、ホースが垂れることもなく充電台にすっきり設置でき、デザイン面でも部屋置きに耐えられると感じました。
シャープはとにかく軽く腕への負担が少ない「スティック寄り」モデル
一方、軽量設計のシャープ「Ractive Air」は、女性や年配の方にオススメ。とにかく軽いため、本体を引きながらの掃除も、本体を片手で持っての掃除も快適。その意味では、東芝よりスティックに近い存在といえるでしょう。また、ある程度長時間掃除をする人には、コードレススティック掃除機より本機のほうがラクに使えます。ただしカーペット掃除ではヘッドがカーペットに吸い付いてしまうのがやや惜しい。床を中心に、毎日こまめに掃除したい人に向いているといえます。また、バッテリーが着脱式で、本体の収納場所の選択肢が広いのも魅力。バッテリーを2個用意すれば、東芝と同じ約60分の連続運転も可能で、しかもバッテリー1個あたりの充電時間が約80分とスピーディなのも魅力です。ゴミ捨てやメンテナンス面も快適で、使い勝手を何より優先する人には、オススメの1台だといえます。
今回の検証で、東芝は主に「パワーとスタミナ」、シャープは「軽さと操作性」に優位性があることが判明。さらに、「コードレスキャニスター」という新ジャンルは十分な実用性を備えていることを証明してみせました。特にこれまでコード式のキャニスター掃除機を使っていてコードレスの快適さを味わってみたい人、コードレススティック掃除機を使うと腕が疲れるという人、ぜひ買い替えの選択肢として考えてみてください。