ふとんクリーナーの草分けとして知られるレイコップから、まったく新しい家電が発表されました。その名は「ふとんコンディショナー」、略して「ふとコン」。ベッドにセットすることで、睡眠ケアと寝具ケアができるアイテムということですが、発表会に行くまで、筆者はピンとこないな~と思っていました。しかし、発表会が終わったあとに、評価は一変。それは、実際にその魅力を味わってしまったから。以下で、簡単にレポートしていきましょう。
ふとんクリーナー以外の市場に進出する第一歩が「ふとんコンディショナー」
まずは発表会の冒頭、本機の発売の意図について、レイコップ・ジャパンの呉主熙(オ・ジュヒ)氏が次のように語ってくれました。
「当社は、国内だけで約500万台の販売実績を誇っています。レイコップが作り上げたふとんクリーナー市場はある程度成熟したため、新たにビジネスの拡大という課題も生まれ、新しい市場に目をつけることになりました。ふとんコンディショナー以外にも、より多くの方々の健康な暮らしを実現できるような、新しいカテゴリーの製品のリリースを次々と計画しています」
なるほど、ふとんクリーナー市場は他メーカーが続々と参入して飽和状態。ならば、新たなカテゴリーに打って出る。そして、今回のふとんコンディショナーは、その記念すべき第1歩ということですね。
深い眠りでは脳が仮死状態になって老廃物を押し出す
次に、医療法人みなとみらいの理事長で睡眠の専門家・田中俊一氏が登壇。本機の紹介とは少し外れますが、睡眠とは何か、興味深いお話を披露してくれたので、以下で紹介します。
「脳のニューロン、神経細胞は、ほかの細胞と違い、生まれてから死ぬまでほぼ同じ細胞が活動を続けていて、記憶の一貫性を保っています。そのぶん、脳の細胞は毎日特殊な活動がないとダメ。その活動が、徐波睡眠(じょはすいみん)という深い眠りです。徐波睡眠では神経細胞が電気活動をしないので、ほとんど仮死状態になり、細胞自体がシュリンク(縮む)します。そのとき、アミロイドβ(ベータ)たんぱく質など、細胞にたまっている老廃物質を細胞外に押し出すことで、脳が毎日リフレッシュするわけです。これは、細胞自体が(パソコンでいう)CPUを回復するようなイメージ。
これに対して、浅い眠りのレム睡眠の場合は、脳のなかからシグナルが出て活動します。このとき、脳は神経ネットワークのつながりを試しているともいえる状態。このときにいらないメモリー(一時記憶)を削除し、必要なものを定着させます。この2つの種類の睡眠を繰り返すサイクルが5回(1サイクル1時間半×5回=7時間半)ないと、脳は翌日に元気になれない、ということになります」
夜間は体温調節の機能が落ちるので、中途覚醒に注意
深い眠りでは脳が仮死状態になって老廃物を排出し、浅い眠りでは、ネットワークをテストしつつ記憶の選別を行う。これを繰り返すのが睡眠というわけです。続いて、就寝中の自律神経のはたらきに触れ、田中氏は「ふとコン」の意義について語ってくれました。
「睡眠中、脳の細胞は眠りますが、自律神経は起きていて、心拍・呼吸を調節します。体温の調節も同様に行われますが、夜間にはその機能が非常に悪くなる。寝始めは快適でも、寝汗をかかれて朝方に目が覚めた方も多いでしょう。寝床内の温度が適性でないと、寒くなったり熱くなったりして、中途覚醒を起こすことがあるんです。その点、レイコップさんの『ふとコン』を使わせてもらったところ、明け方も同じ寝床内の温度を保てるのが非常にいい。中途覚醒を起こしにくいという印象を抱いています」
なお、中途覚醒などで睡眠不足が重なると、いわゆる「睡眠負債」に陥り、脈拍が速くなって血圧が高くなるとのこと。必然的に重大な病気のリスクが高まるわけですね。
センサーの情報をもとに、自動で風量と温度を調節
では、睡眠のためになる話と「ふとんコンディショナー」のメリットを聞いたところで、改めて製品を見ていきましょう。本機は送風を行う本体と、本体から送風された空気を通すマットレス「エアマット」がセットになったもの。
通常はマットをベッドのマットレスの上に敷き、本体をベッドの足元、または脇に置いて使用します。用意するモードは「睡眠ケアモード」と「寝具ケアモード」の2つ。「睡眠ケアモード」は、センサーの情報をもとに、本体が自動で風量と温度を調節することで、快眠に最適な33℃±1をキープ。また、入眠時には寝床内の温度を徐々に下げることでスムーズな入眠を促し、起床時には、寝床内の温度を徐々に上げることで、すっきりした目覚めを導くといいます。
一方、「寝具ケアモード」は、同社のふとんクリーナーの最上位機種「レイコップRN」の技術を応用してマットを清潔に保つ機能。120分間、50℃以上の温風とホメスタイオン、および脱臭オゾンを送り込むことで、ダニ対策・除湿・除菌・脱臭まで行います。
通気性抜群のエアマットとの相乗効果で睡眠中の汗を発散
そして、上記機能の実現に必要不可欠だったのが、東洋紡と共同開発した「エアマット」。こちらは新開発の三層構造体「エアスペーサー」を使用することで、なんと、その96%が空気の層でできているといいます。その抜群の通気性、本体からの送風の効果が相まって、睡眠中の汗を効果的に発散。さらに、体をあらゆる方向から支えて体圧を分散させ、高反発設計がスムーズな寝返りをサポートするそう。
つまり、「ふとコン」とは、室内の温度や体温にかかわらず、常にふとんの中の温度を睡眠に最適な温度にキープしくれる、めちゃくちゃ寝心地のいいマットということですね。
空気の流れが感じられ、サラッとしていて気持ちがいい
実際に寝てみると、寝た瞬間に違いがわかりました。イメージとしては、やや固めの泡のかたまりの上に寝ているような感覚。マットと身体が接する部分で、わずかに空気がもれ出ている感触を感じます。かといって、寒いとかスースーして落ち着かないという印象もなく、サラッとしていて実に気持ちがいい。温風が出るとのことで、夏はどうかな…? と思っていたのですが、少し涼しく感じるくらいで、この感触ならまったく問題はなさそう。マットは柔らかすぎず、固すぎず、ちょうどいいコシがあって、肩を下にしても痛くありません。ウチで使っているせんべいぶとんと比べ、その違いは衝撃的でした。このままだと、一瞬で眠ってしまいそう。…これは…欲しい……。
ただ、少し惜しいなと思ったのが、開始時刻と起床時刻を設定しなければ作動しないこと。寝る時間は日によって違いますし、いつもより早起きするときもあるでしょう。そんなときは、「いまから○時間」という形で選べるモードがあればラクなのに、と思いました。あとは1晩で約50円かかるという電気代か……(「寝具ケアモード」も電気代は約50円かかります)。
あの特別な寝心地で眠ってみたい! と思わせてくれるアイテム
とはいえ、本体価格13万8240円の本機を求める方なら、良質な睡眠が手に入って電気代1か月1500円なら許容範囲でしょう。何より、あの特別な寝心地は、ほかでは決して手に入らないはず。三層構造体「エアスペーサー」も本機のための完全オリジナルだといいますし、開発に2年半かけたというのもダテではありません。
というわけで、ちょっと本機が欲しくなった筆者は、発表会の帰り道、ウチに入れたらどうなるだろう? と考えました。…ベッドがなくても、敷きふとんとして使えるそうだから、ウチにも入るな……。部屋が狭小だからふとコンで占領されるけど、快適に眠れるのなら……汚してもカバーやマットは洗えるし。…あっ、『ふとコン』って言っちゃった(考えちゃった)! …もちろん、本当の効果は実際に眠ってみなければわかりませんが、とにかく、いろいろと想像がふくらむ楽しいアイテムでした。
レイコップ
ふとんコンディショナー FCST-100
●発売日:2月23日●実売予想価格:13万8240円●エアマットサイズ/質量:W1010×L1980×D45㎜/5.4kg●本体サイズ/質量:W463.5×H526.5×D223.5㎜/7.2㎏●モード:寝具ケア、睡眠ケア●定格消費電力:970W(寝具ケア)、22~570W(睡眠ケア)●コード長:3m