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2019/6/17 19:30

「4合炊き」ってどういうこと? 評価高まる象印の「炎舞炊き」が不思議なモデルを出したワケ

「炊飯器といえば象印、象印といえば炊飯器」と美味しいごはんが炊ける炊飯器メーカーの代表格として象印を認識している人も多いのではないでしょうか。なかでも南部鉄器を内釜に採用した圧力IH炊飯ジャー「南部鉄器 極め羽釜」は極上のごはんが炊けるとして絶大な人気を博し、炊飯ジャーブランドとしての地位を不動のものとしました。

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従来の人気モデルを一新した「炎舞炊き」に4合炊きモデルを追加

しかし昨年、象印は「南部鉄器 極め羽釜」を一新し、南部鉄器を使わない「炎舞炊き」を発表。これにはもちろん、内外から「なぜ、こんなに売れている人気シリーズをやめてしまうのか」との声が上がりました。正直、筆者も、発表当時は「まさか」と驚きましたが、実際に使って、食してみて納得! 発売から約1年経ったいま、「炎舞炊き」は、「南部鉄器 極め羽釜」に負けず劣らず、高い評価を得ています。

 

そんな「炎舞炊き」シリーズに7月21日、新たなラインナップが追加されます。それが、4合炊きモデル「NW-ES07」(実売予想価格10万円・税抜)です。小容量炊飯器ジャーといえば、3合炊きや3.5合炊きが主流ななか、なぜ4合なのか? 疑問に思う人もいるかもしれませんが、そこには「なるほど、これはありがたい!」とユーザー心理の核心をつく理由がありました。詳細について、新製品発表会で聞いてきましたので、以下でレポートしていきます!

↑炎のゆらぎを再現した炊飯方式が話題の「炎舞炊き」に4合炊きが登場!

 

底IHヒーターをローテーション加熱して大火力を実現

従来の「炎舞炊き」は、5合炊きと一升炊きの2種類のみでしたが、そこに新たに、小容量タイプとなる4合炊きが加わることになります。まずは、そもそも「炎舞炊き」がどのような炊飯ジャーなのか、ご紹介していきましょう。

↑コンパクトなので3合炊きに見えますが、これで4合炊き。カラーは濃墨(こずみ)のみ

 

もっとも大きな特徴は「業界初」となる斬新な加熱方式です。IH炊飯ジャーは従来、底に搭載した1つのIHヒーターが釜底全体をムラなく加熱していましたが、「炎舞炊き」は底IHヒーターを3つ搭載することで、単位面積あたり約4倍という大火力を実現。さらに、3つのヒーターをローテーションで加熱することで、釜内に温度差が生まれて激しく複雑な対流を起こし、甘み豊かなごはんに炊き上げるといいます。

↑1つのヒーターで全体を加熱する方式(写真右)、3つのヒーターで部分的にローテーションで加熱する方式(写真左)に変更し、単位面積当たり約4倍の大火力を実現!

 

局所加熱を活かす多層構造の釜を採用

このように加熱方式を大幅に変えたため、内釜も従来の「南部鉄器 極め羽釜」から、独自の新素材を採用した「鉄 ~くろがね仕込み~ 豪炎かまど釜」に変更。というのも従来の南部鉄器はIHと相性がよく、発熱効率、蓄熱性も高いというメリットがある一方で、「熱伝導が遅い」という弱点がありました。つまり「炎舞炊き」がローテーションで局所加熱しても、瞬間的に熱が伝わらずに全体加熱となり、対流も弱まってしまうわけです。

 

その点、新搭載の「豪炎かまど釜」は、熱伝導に優れたアルミ、高い発熱効率と蓄熱性を持つ鉄、優れた蓄熱性、耐久性を持つステンレスの3層構造。南部鉄器にはなかった熱伝導の良さが加わり、炎舞炊きにとって理想的な「蓄熱性」「発熱効率」「熱伝導」を実現したというわけです。

↑従来の内釜と新モデルの内釜を同じIHヒーターで加熱したところ。熱伝導の速さの違いは一目瞭然!

 

世帯人数が減少し、小容量タイプの需要が高まっている

こうして「南部鉄器 極め羽釜」から「炎舞炊き」にシフトしたところ、ユーザー満足度は約88%から約95%にアップするなど、さらなる高評価を得ることに。そこで今回、新モデルとして投入したのが、「炎舞炊き」の小容量タイプです。

 

実は現在、炊飯器全体の市場動向は微減傾向にありますが、小容量タイプに限ってみれば、増加傾向に。その理由として挙げられるのが、平均世帯人員の減少です。具体的には、1955年と2016年で比較すると、世帯数自体は大きく変わらないものの、世帯人数は約5人から約2.5人に減少。また一日に必要な炊飯容量も5~6合以上が減少する一方、4合、3合以下が増加していることから、小容量タイプの需要が高まっていることが分かります。

↑販売台数は微減の中、小容量タイプが占める割合が増えている

 

さらにアンケートによると、同社の3.5合炊きタイプを購入した79%が50代以上かつ、約59%が夫婦のみの世帯。つまり子供が独立して世帯人数が減ったり、食べる量が変化したことをきっかけに、小容量タイプを検討することが多いと考えられます。

「コンパクトさ」と「不安の解消」を両立するのが「4合」だった

ではなぜ小容量モデルを3~3.5合炊きではなく4合炊きにしたのか? 同社が着目したのは、3.5合炊きを購入した人のうち約60%が他の容量も検討している点です。実際は2合か3合しか炊かないにも関わらず、やはり5.5合炊きにしようか迷ったのは、まとめ炊きしたいときや来客時など、万一のときに「足りなくなるのが心配だから」。

 

それでも結局3.5合炊きを購入したのは、「コンパクトだから」。つまり容量に対する不安は残したまま、コンパクトさを優先して購入していることになります。同社はそこに潜在的ニーズを見出し、他社の3合炊きと同等サイズながら、4合を炊けるモデルを発売したというわけです。

↑3.5合炊きの同社の従来モデル(左)と比較してもほとんど変わらず、他メーカーの3合炊きよりコンパクトな場合も

 

4合炊きは2つの底IHヒーターをローテーション加熱

4合炊きの「炎舞炊き」は、基本的な思想は5.5合炊きを踏襲していますが、サイズが異なることで、構造や仕様が異なる部分もあります。

 

例えばローテーション加熱する底IHヒーターは、3つではなく2つに。とはいえ、それでも同社従来品に比べて単位面積当たり約4倍以上の大火力を実現しています。内釜も炎舞炊きのために開発された「豪炎かまど釜」を採用。また、前回食べたごはんの感想をアンケートに回答するだけで炊き方を微調整し、好みの触感に炊き上げる「わが家炊き」メニューは、5.5合炊きが111通りであるのに対し、こちらは81通り。また、「蒸気口セットなし」「フラットトップパネル」「フラットフレーム」「フラット庫内」を採用するなど、本体自体もお手入れしやすいよう、素材や形状にこだわっています。

↑写真左が、4合炊きの炎舞炊き特有の底IHヒーター。2つが交互にローテーション加熱する

 

↑お手入れしやすいフラットフレーム

 

5.5合炊き、一升炊きの新モデルも登場

↑昨年発売された炎舞炊きから、さらに2%も甘味がアップしたという新モデル「NW-KB10/18」

 

なお、昨年発売した「炎舞炊き」をよりおいしく進化させた、5.5合炊きの「NW-KB10」(実売予想価格12万円前後・税抜)、一升炊きの「NW-KB18」(実売予想価格12万5000円前後・同)も6月21日に発売されます。カラーは、黒漆(くろうるし)と雪白(ゆきじろ)の2色。進化ポイントは、ローテーション加熱時間の変更。従来モデルは、“中ぱっぱ”工程と呼ばれる加熱時間に、3つのIHヒーターを10秒ごとにローテーション加熱していましたが、研究の結果、沸騰直前ではより速くローテーション加熱したほうが対流が促進されることがわかりました。そこで新モデルでは、最初は10秒ごとに、沸騰直前の高温状態では5秒ごとと、段階的に速くローテーション。その結果、甘味成分である還元糖が約2%アップしています。

↑高温となる沸騰直前で、10秒から5秒のローテーションに代わり、より激しい対流を起こす

 

なお、会場では、NW-ES07(4合炊き)とNW-KB10/18(5.5合・1升炊き)の試食も行われました。いずれもふっくら粒が大きく、甘みをしっかり感じられるおいしさ! NW-ES07は、小容量でも通常モデルと遜色なく、炎舞炊きならではの炊きあがりを味わうことができました。そのうえ、コンパクトかつ容量の不安も少ないとあって、少人数世帯には見逃せないモデルとなりそうです。

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