ブラウンのシェーバーに対して過去に苦い経験(後述)を持つ筆者は、「深剃りがすごい。が、深く剃りすぎて皮膚まで削って肌を傷めるのでは?」という固定観念を持っていました。しかし、2019年秋に久しぶりにブラウンのシェーバー「シリーズ9」の発表会に出席したところ、「肌にやさしい」という言葉を何度も耳にすることに。なんでも「一度で剃り切る。だから、肌にやさしい」らしい……。
深剃りしすぎて肌を傷めた、かつてのイメージを覆せるか?
いやいや確かに深剃りだけど! そういう問題じゃないからね! …と発表会の会場で一人でつっこんでみたももの、会場には試せるデモ機がなく、筆者は本当に肌に優しいかどうか実感できないまま、モヤモヤして帰ってきたものです。実際はどうなんだ……? 疑問が募った筆者は、たまりかねて最新モデルを借りて試してみることに。今回試したのは「Series 9 9394cc」(実売価格4万5800円)。自動洗浄機付きのハイエンドモデルです。
ちなみに、筆者はふだん、シェーバーは某社の回転式モデルを使っています。かなりヒゲが濃いのに肌が弱いというなんとも面倒な体質ゆえの選択。その回転式シェーバーは、外刃が固くて厚いので皮膚が内刃に巻き込まれることなく、肌を痛めることがないからです。とはいえ、ヒゲが濃いので深剃りできるシェーバーは魅力的で、20年以上前に一度だけブラウンに浮気したことがありました。当時のブラウンはやはり深剃りを強くアピールしていたのですが、深く剃りすぎるきらいがありました。すなわち顔の皮膚まで巻き込んでしまう。ヒゲを剃った後のヒゲくずの中に細かい白い皮膚片が見えた時は、「これはだめだ」と思ったものです。
結果、あっという間に肌が荒れてしまい、常時、頬にあざのような傷ができている状態に。ヒゲが濃いと一度のストロークでは剃りきれず何度もシェーバーを往復させます。しかも強く肌に押し付ける。肌が荒れるだけでなく、外刃に過剰な力がかかるため、1年もしないうちに外刃が割れてしまうのも難点でした。そのこともあり、1年程度で使用をやめ、回転式モデルに戻った次第。というわけで、ブラウンには肌にやさしいというイメージがなかったわけです。そして、今回。シリーズ9は5年ぶりのアップグレードとなります。どこがどう進化したのか、最新モデルの性能をおさらいしておきましょう。
基本性能「5カットシステム」のしくみをチェック
まずは基本性能。シリーズ9は「5カットシステム」を採用しています。両外側に配置された対になった「ディープキャッチ網刃」は一見すると網目が揃っているように見えますが、実は角度と大きさの異なる900パターンの穴が配置され、太さの異なるヒゲ、さまざまな向きに生えたヒゲを捉える役目を担っています。また、内側が小さめ、外側に行くにしたがって大きくなる網目はヒゲが入り込みやすいだけでなく、圧力を分散することで網刃の内側、すなわちもっとも肌に当たる網刃頂部への圧力が減少し、網刃の強度を高めることとなります。つまり、割れにくいわけですね。実際に触ってみると、薄いにも関わらずかなり硬く感じます。押しても凹まないので、顔に押し付けたときに皮膚を巻き込む心配はなさそうです。
ディープキャッチ網刃の内側に配置された金色の「チタン加工極薄リフトアップ刃」は、極薄0.24mmの刃が肌に密着して寝たヒゲを巻き込んで短くカットします。中央の「くせヒゲキャッチ刃」はさまざまな方向に向かって生えているくせヒゲを、厚さ0.15mmの刃が櫛のようにヒゲの向きを揃えて短くカット。この2つの刃がトリマーの役割を果たし、最後に網刃が深剃りする仕組み。また、くせヒゲキャッチ刃には「ストレッチスキンガード」と呼ぶステンレス板が付き、これが肌を伸ばして過度な押し付けを防ぐ役割となっています。以上、甚だ説明的ではありましたが、4つの刃と1つのガードで5カットシステムを構成し、深剃りと肌へのガードを両立していることがおわかりいただけたでしょうか。
スムーズで心地よいシェービング。以前とはまったく違う!
では、実際に使ってみましょう。使ってみてわかったのが、以前とはまったく違うということ。まずは、そのなめらかな肌触りに驚かされます。丸2日間剃らなかった長いヒゲでも引っかかり感はまるでなく、シェーバーを肌に強く押し付けなくてもスムーズに肌を滑り、確実にヒゲを捉えていきます。網刃の滑るような感触もいいですし、くせヒゲや伸びたヒゲをリフトアップ刃とくせヒゲキャッチ刃で確実に捉え、素早くカットしていくのが感覚でわかりますす。また、網刃の剛性が高く、内刃との密着度も高いことから、肌に強く押し付けてもベコベコ感はまるでなし。スムーズで心地の良いシェービングが味わえました。
このほか、刃の当たり具合から、人工知能テクノロジーが毎秒13回のスピードでヒゲの濃さを読み取り、パワーを最適化。最先端リチウムイオン電池を搭載することで、1度の充電で使用できる時間を前モデルの50分から60分に延ばすことができたとしています。
1ストロークで剃れる量が増えて、シェービング時間が半減!
ちなみに、筆者はヒゲが濃いため、これまでは1回のシェービングに約10分ほどかかっていました。そのため、これまで使っていたシェーバーでは、1度の充電でバッテリーは1週間しかもちません。シリーズ9の使用時間もカタログ値では60分なので、通常、筆者の使い方では6日が使用限度となります。しかし、実際に使ってみたところ2週間も使用できました。いままでの倍以上です。
ここまで長く使用できた理由の1つは、「一度で剃り切る」とまではいかないものの、1回のストロークで剃ることのできるヒゲの量が多いためでしょう。これまで顔の同じ場所を何度も何度も往復してやっとのことで剃っていたものが、2-3回の往復でほどんど剃りきれるわけですから。この結果、シェービング時間が半分の5分に短縮したのです。朝の忙しい時間にこの5分の短縮はかなり貴重。この違いは大きいです。
ブラウンでは言及していませんが、内刃の性能の高さもあるのでしょう。いくら網刃の性能が高くても内刃がナマクラではヒゲが引っかかって皮膚まで巻き込んでしまいます。ワンストロークでより多くのヒゲを根こそぎカットできるほど研ぎ澄まされた内刃により、ストローク回数が大幅に減少しているのではないでしょうか。だからこそ、肌がヒリヒリしない。肌にやさしい。かつてのようにヒゲカスの中に皮膚片が交じることはなく、もちろん肌の出血もまったくありません。「一度で剃り切る。だから、肌にやさしい」。なるほど、発表会での言葉は、ここにつながっていました。
刃にかかる負荷や使用頻度を計算して替刃のタイミングを表示
このほか、32Bitチップを新たに搭載したことにより、使い勝手が向上しています。シリーズ9は網刃・内刃一体型カセットタイプを採用していますが、刃物なので当然寿命があり、ブラウンでは約18か月が交換の目安としています。しかし、ヒゲの薄い人と濃い人では使用状況が異なるため、使う人によって交換時期も異なります。その点、シリーズ9では、刃にかかる負荷や使用頻度の情報から刃の摩耗度を計算し、替刃のタイミングをディスプレイに表示してくれるのです。また、シリーズ9には自動洗浄機が付属していますが、洗浄のタイミングも知らせてくれます。
なお、付属の自動洗浄機では、専用カートリッジ1個で約30回分の洗浄が可能です(充電機能と乾燥機能も搭載)。洗浄時間は最大約3分。その後に40分ほどファンが回って乾燥します。専用洗浄液は除菌洗浄と潤滑剤の塗布を同時に行い、洗浄後はレモンの香りが感じられてとても爽やか。本体内部のヒゲクズは、完璧とはいかないまでも、概ね取ることができていました。
シリーズ9のおかげで毎日苦痛だったシェービングが快感に!
筆者はこのヒゲの濃さゆえ、毎日のシェービングが苦痛で仕方がありませんでした。しかし、密かにモテ紳士を目指す中年男にとって、清潔感は最も重要。無精髭を生やすなんて論外なので、毎日嫌々ながらシェービングを続けてきました。しかし今回、シリーズ9に出会って、その気持が劇的に変化したのです。シェービングの時間が半減したことも大きいのですが、何より、強く押し付けて何度も剃る必要はなく、軽く撫でるだけで深剃りできるのが本当に心地良い! これまでの苦痛が快感に…この振り幅が大きいゆえに、感動もひとしおです。
ちなみに、ヒゲの濃い父親や夫を持つ奥さんや娘さんは、バレンタインデーのプレゼントとしてシリーズ9を検討してみてはいかがでしょう。フラッグシップなのでお値段は張りますが、シルバーに輝く上質感のあるボディが所有欲を満たし、なめらかな剃り心地が男性に深い満足感を与えてくれるはず。もしかしたら、ヒゲに埋もれていた顔が発掘されてカッコよくなるかもしれませんよ。まあ、素材にもよりますが……。
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